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ひよいち

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日和田玲×市ヶ谷告
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#ひよいち

黄色い線の内側にお下がりください

「え」
「よっ」
 夜の帳は下り切って、街灯も少なくなってきた最終電車を待つ郊外の駅。ベンチに座って缶コーヒーを飲んで夜風にあたっていると、どこで買ってきたのか分からないクラゲ柄の黒いシャツにベージュのトレンチコートを着用し伸ばした髪を括っている丸い眼鏡をかけた男が驚愕の表情でこちらを見ている。
「なんでヨリくんがここに居るの?」
「何でだと思う?」
「……しごと?」
「せいか〜い」
「なんだよ〜

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迷夢

迷夢

その日は夜勤と出張が続いてヘトヘトになったところに、追い打ちで飲み会が入ってしまい、いつもこない同僚が来たのがうれしくて、焼酎を2人で5合空けて、ベロベロに酔っ払ってしまった。ほとんど自分が飲んだと思う。1次会で帰ったから日付けを超えることはなかったけれど、どうやって帰ったのかは覚えていない。多分、一ヶ谷に電話をして迎えに来てもらったんだと思う。いつも起きた時に履歴が残っているから、今回も

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白昼夢

「俺、刑事になりたいんだよね」

 柄にもなく、そう零したことがある。しかもよりにもよって1年の、その頃そんなに仲が特別よかったわけじゃない出席番号2番のクラスメイトに。ええと、なんの時間だったかな。放課後の掃除の時とか、そういうのをサボっていた時だったような。
 今でこそ見た目がものすごく若く見える男は、あの頃はもっと幼くて、今も白く血色の良い肌にじゃまくさい黒髪をなびかせて一ヶ谷告はへらり、と

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正夢

ひよいち

※【クロノスを喰らうもの】、【足だけの幽霊画】のネタバレ有

 2週間に1度、悪夢を見る。お前が死ぬ夢だ。
 悪い夢は人に話すと正夢でなくなると、迷信でジジババたちが言っていたが、おれはそれを誰に伝えることもないので、もしかしたら近い未来そうなるのかもしれないな、と思っている。二課に配属になって、お前と再会してからずっと。お前と情報交換をするようになってから、もう何百回とお前が死ぬのを

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