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納税義務者の範囲の意味②

こんにちは。SSKC会計グループの岩田です。

今回は前回の続き、納税義務者の範囲の意味について考えていこうと思います。前回は居住無制限納税義務者について書いたので、今回は非居住無制限納税義務者について書いてみます。

どちらも無制限ですが、今回は非居住な納税義務者のお話です~。

非居住無制限納税義務者

まずは定義を抜粋。

(2) 非居住無制限納税義務者
 相続又は遺贈により財産を取得した次に掲げる者であって、その財産を取得した時において日本国内に住所を有しないもの。
イ 日本国籍を有する個人であって、①その相続又は遺贈に係る相続の開始前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがあるもの、又は②その相続又は遺贈に係る相続の開始前10年以内のいずれの時においても日本国内に住所を有していたことがないもの(その相続又は遺贈に係る被相続人(遺贈をした人を含みます。)が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除きます。)。
ロ 日本国籍を有しない個人(その相続又は遺贈に係る被相続人(遺贈をした人を含みます。)が外国人被相続人、非居住被相続人又は非居住外国人である場合を除きます。)。
(注) 平成27年7月1日以降に「国外転出時課税の納税猶予の特例(※)」の適用を受けていたときは、上記と取扱いが異なる場合があります。

No.4138 相続人が外国に居住しているとき 国税庁

今回は相続人が相続時に国内に住所を有していない場合のお話。なので「非居住」という名前が付いているんですね。

国内住所を有している前提のうえ、非居住無制限納税義務者に該当するためには2パターンあります。日本国籍かそうでないか、です。

①日本国籍を持つ個人

相続時は日本に住んでいないけど国籍は日本だよ、という場合ですが、さらに条件があります。

(1)相続開始前10年以内のどこかで日本に住所があった場合
(2)相続開始前10年以内ずっと日本に住所が無かった場合(被相続人が外国人被相続人、非居住被相続人の場合を除く)

上記2パターンの時は非居住無制限納税義務者に該当します。

つまり、基本的には日本にいなくても日本国籍であれば皆んな非居住無制限納税義務者ということです。ただし、過去10年間日本に住所が無い人は被相続人が外国人被相続人、非居住被相続人の場合は除かれます。

②日本国籍を持たない個人

相続時に日本に住所が無く国籍も日本ではない場合です。この場合も非居住無制限納税義務者に該当しますが、被相続人が外国人被相続人、非居住被相続人、非居住外国人の場合は該当しません。

非居住外国人とは、平成29年4月1日から相続時まで日本に住所が無く、日本国籍ではない人のことを指します。平成29年4月1日に納税義務者に関する改正があったようで、その改正に対する経過措置として非居住外国人という区分が設けられているようです。

改正内容についてもっと詳しく調べたいのですが、それはまた別の機会に。

③非居住無制限納税義務者の範囲の意味

①②を踏まえると、相続時に日本に住んでいなくても基本的には相続税がかかるということですね。ただし、外国国籍であったり、過去10年ずっと日本にいないような人に関しては、被相続人が外国人被相続人、非居住被相続人であれば除かれます。

前回は居住無制限納税義務者の定義の意味について、”相続した財産が全て国内にあるとは限らないからではないか”と書きました。

しかしその考えだと、非居住無制限納税義務者の範囲は納税義務者に該当しないですよね。基本的には国外に住んでいる訳で、相続する財産は基本的に国内にないものとみなすのが普通だと思います。

では、なぜ非居住の個人も納税義務者となるのか。
それは、租税回避防止のため、だからです。

その理由が分かり易く書いてある記事の一部を抜粋します↓

改正の趣旨

平成12年度税制改正以前は、国内財産にのみ相続税が課税される制限納税義務者と、世界中の財産に相続税が課税される無制限納税義務者の判定は、国内に住所があるか否かだけでした。国外に財産を移し、国外に住所を移せば日本の相続税はかからなくなる仕組みでした。そして、シンガポールやマレーシアなど相続税がかからない国が多くあるので、簡単に相続税の回避ができてしまうという状況でした。

そこで、相続人が5年間海外に居続けることを要件とする改正、被相続人の住所が国内にある場合の規制なども加えられました。しかし、今度は相続人もその被相続人も5年以上海外に居続けるなど、小説さながらの相続税対策が実行され、さらに要件が厳しくなりました。一方で、短期滞在の外国人にまで国外の財産を相続税の対象に含めることは問題があるため、例外的な取扱を置くなど非常に複雑な仕組みとなっています。

平成29年度税制改正 相続税の納税義務の範囲 東京法人会連合会
※太字は記事作成者によるものです。

もともとは、「居住無制限納税義務者」「非居住無制限納税義務者」という区分はなく「無制限納税義務者」で一括りされていました。そして、国内に住所があれば「無制限納税義務者」、無ければ「制限納税義務者」となる訳です。

制限納税義務者であれば、国外の財産は相続税の課税対象となりません。国内の財産のみ課税対象です。

そのため、相続人は相続前に住所を国外へ移し、財産も相続前に国外へ移せば相続税はかからなくなります😨

それを防ぐため、「相続前5年以内に日本にいた個人は無制限納税義務者となるよ」という改正を平成12年に行いました。が、意図的に親子で海外に5年以上滞在して多額の外国資産を租税回避する、という方法が実行され、平成29年の改正時にさらに要件が厳しくなり、「過去10年以内に国内に住所を有する個人」は無制限納税義務者となりました😨😨

非居住でも納税義務者となるのは、このような経緯があったからなんですね。

おわりに

今回は非居住無制限納税義務者についてでした。

租税回避防止のために作られたとのことですが、勉強する側としては「皆さん租税回避しないで~法律がややこしくなる~」という気持ちでいっぱいです。

海外へ住所を移したり国籍を変更するのは大変だと思いますが、そこまでして回避しようとするのは何故でしょう...。やはり、税率が高すぎるんですかね?

先日、大谷選手の会見を見ていましたが、ロサンゼルスでは稼いだ額の半分超が税金で持っていかれるそうですよ!びっくりたまげました🙄
日本の話ではなかったですけど、もし半分持っていかれるとしたら、租税回避したくなる気持ちも分からなくもないですね...。




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