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641一つの中国???

中国「台湾封鎖」演習開始 弾道ミサイル11発」
 新聞は物騒な報道で埋め尽くされている。読売新聞のリード部分は次のとおり。
「中国軍は4日、台湾を取り囲む6か所の海空域で、弾道ミサイルなどの発射を含む「重要軍事演習」を開始した。ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問への対抗措置で、台湾封鎖などを念頭に置いた異例の大規模演習となる。日本政府によると、中国の弾道ミサイル5発が初めて日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。演習は7日まで続く予定で、日本や台湾は警戒を強めている。」
 アメリカの下院議長は特別な地位にある。大統領、副大統領ともに職務を遂行できなくなった場合に地位、権限を継承する。その重要な地位にある者が、北京と対抗関係にある台湾を訪問することが許せない。それが台湾封鎖軍事演習の理由という。
 それがどうして戦争を仕掛ける理由になるの? 
 下院議長が台湾を訪問したのは20数年ぶりという。先例があるのに今回はダメというのが、まず不可解。大統領権限を継承するのは、それを必要とする事態になってから。アメリカの議会は、与野党を問わずペロシ訪台を支持している。北京政府のレトリックに納得していないからだろう。
中国の言い分を認めて下院議長が台湾訪問を取りやめていたらどうなるか。この理屈は使えるとなってエスカレートする。例えば日本に対しては「日本の国会議員の台湾訪問はすべて中国への内政干渉とみなす」などと言いだすだろう。議員内閣制のわが国では、国会議員すべてが総理大臣の後継資格を持っているのだから。(「内閣総理大臣は、国会議員の中から、国会の議決でこれを指名する(憲法67条)」)
 中国政府はプロパガンダがうまい。どんな非道なことでも上手に理屈を考える。表面の言葉ではなく、彼らが仕掛けている工作の本質を見失わないことだ。
「中国は一つ」の標語について。これは毛沢東の中国共産党だけでなく、蒋介石の中国国民党も主張していた。当事者双方の主張が一致している限り、他国が違うとは言えない。
 でも台湾では民主化運動が起り、国民党の一党支配が終わった。住民が今後のことを自分の頭で考えたら、独立国として進む方がよいとの考えが多数になった。それが今世紀になってからの台湾である。
 分離主義を許さないと中国共産党は言う。なぜ?と問えば「中国は一つと国際社会は認めてきたではないか」。なるほどね。では、ウイグル、モンゴル、チベットなどは元来別民族。これをも中国と括るのはおかしくないですか。それに対しては「これら地域はかつて北京の清国政府が征服した歴史があるから、今後も服属させる権利があるのだ」と答えるのだろう。清国以前の歴史は都合悪いから無視である。
 でもその清国は遺伝的にも文化的にも異質の満州人とモンゴル人による征服国家でしたよ。「文化的異質というのは過去のこと。彼らの独自文化を根絶中であり、いずれなくなる。よって広義ではすべて中華民族なのだ」
 香港はどうです? 一国二制度を国際的に約束していませんか? 「条約はそれぞれが独自に解釈し、力の強い者がそれを相手に飲ませればよい。香港での民主化運動は幻にすぎない。歴史書ではその存在を一行も書かせない」
 傍から観測しているとざっとこんな感じ。ああ言えば、こう言う。頃よしと見るや、力でねじ伏せ、それでも言うことを聞かない者がいれば存在させない。

 中国共産党は台湾を征服すれば満足する。だから譲ってしまおう。そういう言説を振りまく者がいます。ヒトラー、スターリン、毛沢東。20世紀の侵略虐殺の三帝王を持ち出すまでもないでしょう。征服欲にかられたサディストに自制を期待することはできません。世界征服への理屈を考えるなど簡単です。「国境がなくなれば戦争は亡くなる云々」
 話を戻して「一つの中国」原則について。中国共産党がこだわるのであれば、Ⅰ4億人に台湾の2300万人を加えた国民投票をやってもらいましょう。質問は二つ。第1問は「台湾も中国の一部であるべきか」。第2問は「国民は政権選択の選挙権を持つべきか」。もちろん、より重要なのは第2問です。

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