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622「ロシアの日」を制定しよう 侵略は継続している

ロシアの国会で「対日戦勝記念日9月3日」が議決されるとの報道がされています。法案が公開されたのは6月24日。
報道によると法案を提案した議員たちは、「ウクライナ侵攻で対ロ制裁を科す日本への対抗措置」と主張しています。プーチン大統領の政権与党「統一ロシア」所属議員の名を連ねており、可決される可能性は大いにあります。
議員らは「ウクライナにおける特別軍事作戦の開始から日本は欧米と連携し、ロシアに対する前例のない非友好的なキャンペーンを行った」と反発し、日本はロシアの指導部に制裁を科しているなどと非難。9月3日は「軍国主義日本に対する戦勝記念日としてロシアの歴史と社会に刻まれている」と説明しているとのことです。

これはゆるがせにできないことです。ロシアの対日戦争とは何でしょう。学校で習うように「第二次大戦末期の1945年8月9日、当時まだ有効だった日ソ中立条約に違反してソ連軍が侵攻した」ものです。アメリカ軍に本土を意のままに空襲される状況に追い込まれたわが国はすでに降伏の意思を固めており、8月15日に天皇陛下のポツダム宣言受託ラジオ放送があり、交戦国との戦闘を終了します。大本営の指示により、日本軍は武装解除を始めていましたが、それに襲いかかったのです。そして非武装の人たちに何をしたか。残忍・残虐・冷酷・酷薄・非情・冷淡・無慈悲・暴戻…。言葉が見つからない所業の数々でした。

今ウクライナで起きている市民への虐殺など、手口はまったく同じ。当時の専制者はスターリンでした。今の専制者はプーチンですが、やることは同じです。だからこそ民主主義陣営の諸国は団結して、ウクライナを支援し、最低でもロシアに経済制裁を続けなければならないのです。専制者に対する正義の戦い。プーチンを敗北させることは、世界の平和のためであり、同時にロシア国民を専制のくびきから救うことにもなります。
ロシアの専制体制が終焉し、国際関係に意を払うようになれば、77年前のスターリンの蛮行がロシア国民にも知れ渡り、謝罪と和解(平和条約締結)になる。その際には不当に奪った領土は返還され、生命や財産についての補償がされるに違ない。わが国の外交官たちはそう考えて、忍耐強くソ連、ロシアとの交渉をしてきたものと思います。
しかし歴史を改竄する今回のようなことがなされるようであれば、幻想を捨てて現実を直視するしかありません。わが国の立場を明確にし、国家としてどう立ち向かうのか。日本の国会でもロシアに対する対処方針をしっかり議論し、国民に対して方針を説明し、一致団結した行動を促さなければなりません。

ところでこの「対日戦勝記念日」には前段階があります。それについては鈴木宗男議員の質問主意書(平成22(2010)年8月3日)で見ることができます。その要旨は次のようにまとめられます。
― ロシアが「対日戦勝記念日」を制定しようとしている。ロシアでは1998年にも「軍国主義日本に対する勝利の日」とする法案が、ロシアの国会で採択されたが、日本の在ロシア日本国大使館の働きかけで、当時のエリツィン大統領が拒否権を発動して廃案にさせた。こうした経緯に鑑みても、日本政府として毅然とロシアに対応し、「対日戦勝記念日」を断念させるべきだ。
ロシアにおいて反日感情が高まるならば、日ロ関係、ひいては北方領土交渉にも深刻な影響を及ぼす。在ロシア日本国大使館及び外務本省のロシア担当者が、今回においてこの様なロシア国内の動きを止めるべく、適切かつ強力なロビー活動を行うことを怠ってきたことがロシアによくない行動をさせている主たる原因である。岡田克也外務大臣(当時)の見解如何。―

これに対する政府答弁書(平成22(2010)年8月20日)の要旨を見てみましょう。当時は民主党内閣でしたので、菅直人内閣総理大臣から横路孝弘衆院議長宛ての文書になります。
― ロシアが制定したのは「第二次世界大戦終了の日」であって、「対日戦勝」等のわが国への言及を含むものではないから、政府としては今後の日露関係に対して直ちに否定的な影響を与えるとは考えていない。しかし、日露関係にふさわしいものとは言えず、我が国の国民感情にかんがみ残念であったと考えている。
そこで兼原外務省欧州局参事官からオヴェチコ在日本国ロシア連邦臨時代理大使に対し、電話にて「今回の改正法は、現在の日露関係にふさわしいとは思えず、また、日本国民、特に、元島民の方々の感情にかんがみれば、このような法改正は残念である。今後、本件が日露関係に否定的な影響を及ぼさないよう、適切に対応してほしい。日本側として今後のロシア側の対応を注視していく。」との内容の申入れを行ったところである。 ―

整理すると、過去の経緯はこうなります。
①1998年にはロシア国会で議決されたが日本政府の働きかけでエリツィン大統領が拒否権を発動して成立しなかった。
②2010年には名称が「第二次世界大戦終了の日」とされて、「日本」の名前が出てこないので問題視しないことにした。

そして今回です。日本政府がまさか何も言わず、対抗措置を取らないことはあり得ないと思われます。今回、ウクライナがらみでロシアから国外追放になった日本の外交官が空港に到着すると「第二次世界大戦の結果は不変だ」と書かれたビラが貼られていたそうです。「空港内でのビラは、ロシア政府による悪質な嫌がらせと見るのが妥当」と消息通は話しているとのことですが、こういう場合にはきっちりお返しするのが外交ルールと聞きます。何も言わず、また何もしなければ、「日本はロシアの主張を正しいと認めている」とロシア政府が自国民や対外的に宣伝することは間違いありません。そうした無為の積み重ねの結果が何をもたらすか、その答えが現在のロシア政府の対日本への恫喝姿勢になっています。

当時の元首相である菅直人、外相である岡田克也両名は存命であり、かつ国会議員としても現役です。国会で糾問すべきです。全世界向けにテレビ放映するか、機微なところがありそうなので秘密会にするかは、国会の良識に任せましょう。ことは急ぎます。

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