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技能実習生が逆転無罪 なぜこんな事件が起きたのか?

2023年3月25日の新聞記事(読売)
≪熊本県で2020年、出産した双子の乳児を遺棄したとして死体遺棄罪に問われたベトナム人の元技能実習生レー・ティ・トゥイ・リン被告(24)について、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)24日、有罪とした1,2審判決を破棄し、無罪とする判決を言い渡した。裁判官4人全員一致の意見。リンさんの無無罪が確定する。≫

事実経過は最後に並べる。
2020年11月15日の朝に出産した双子の死亡を確認したけれど、すぐにはどこにも報告せず、翌日の夕方に病院の医師に知らせた。この間の1日半ほど双子の死体を段ボール箱に入れて自宅の棚の上に置いていた。これが死体遺棄罪に当たるか。

死体損壊罪に該当するか、法律家には面白いのだろうが、どうでもいい。
それよりもなぜこの件が騒がれるのか。
それは彼女が技能実習生だったから。
彼女は交際相手との間で妊娠したが、その事実を隠していた。妊娠が分かれば帰国させられると思ったからだ。

この点が技能実習生制度の本質。
技能実習生にも人権がある。恋愛は自由ではないか。その結果、妊娠することがあっても当然だろう。妊娠を理由に農場が実習(実は労働)を中止することなどできないはずだ。本件の弁護団はそういう考えだろう。
「妊娠して苦しんでいる技能実習生らの苦しみを理解し、刑罰を加えるのではなく、安心して出産できる社会に変わってほしい」とコメントしている。

そこで分かるのは実習生受け入れ側は、技能実習生が妊娠するなどして働けなくなるのは違約行為だと思っていることだ。負傷や病気で働けなくなることも心外だと考えている。「安価で切り捨て御免可能の作業員」と本音では認識している。実態は労働奴隷。こき使い、期間満了後はどうなろうが知ったことではない。
 
技能実習生ということで労基法の厳しい規制が免れるし、彼らはほかに行き場がないから暴動など起こらない。
これは実習背のほうも同様で、実習先でもらう低賃金でも期間いっぱい貯めれば、帰国して家が建つ。技能習得は名目だけという点で双方は一致している。
彼女の場合も、実習生になるために紹介機関などに150万円を払いこんでいる。実習先を追い出されれば投資がパーになり、借金背負っての帰国になる。これだけは避けなければならない。

問題t点は明らかだ。技能実習生制度はあるが、ほんとうの実習生はいないのだ。片方に労働法令に守られる日本人を雇いたくない国内企業や農場主。もう片方に奴隷労働でもいいから日本で稼ぎたい外国人。

これのどこが日本の国益に沿っていると言えるのか。
①ブラック企業の労働実態は改善しない。
②日本人の雇用が失われる。
③搾取された外国人は悪印象をもって帰国する。
④日本は人権を守らない国との悪評を広げる。

解決は二方法しかない。
一つは、技能実習生の制度名に恥じない運用に改める。この場合、今の受け入れ先は軒並み不適合になる。新しく名乗りを挙げる企業がはたしてあるか。
二つは実態を優先して制度名を変える。「外国人専用t雇用先確保制度」とでもして、労働法規の不適用を明確に宣言する。病気、傷病、妊娠など労働中断を余儀なくする事態になれば無条件帰国を契約条件とする。これだと恋愛したり、不注意に妊娠する者はいなくなるだろう。ただし国内外の人権活動家が納得するはずはなかろう。

そう考えると第三の解決法を持ち出すしかない。それはこの制度をスパッと廃止することだ。外国人がいないと事業継続できない農場など、食料自給率改善の観点からして間違っている。それに日本の入管制度は、国是として単純底辺労働者の入国は認めないことになっているはず。目先の事業者のために国策の大本を揺るがしているのは大問題。
制度自体を廃止すれば、裁判所も余計な裁判を抱え込まなくて済むことになる。

事実経過は次のとおり。
元被告は2018年8月に技能実習生として来日。熊本県の農場で働き始める。
2020年7月、妊娠に気づく。
同年11月15日午前9時過ぎ、自宅で出産したが双子はいずれも出産時に死亡していた。「双子の名前をつづったノート1頁とともに、タオルにくるんだ遺体を段ボール箱に入れるなどして、自室の棚の上に置いた。」
翌16日午後6時頃、病院で医師に出産を報告。
同月19日、死体遺棄容疑で逮捕、その後起訴された。
2021年7月、熊本地裁が懲役8月、執行猶予3年の有罪判決。
2022年1月、福岡高裁が懲役3月、執行猶予2年の有罪判決。
2023年3月24日、最高裁が無罪判決、確定。


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