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844 コロナ過大請求 事業の検証、欠かせない中国新聞社説 2023年6月21日

 社説が挙げる事実。
 近畿日本ツーリストは、コロナワクチン接種コールセンター業務を請け負ったが、実際業務を行ったのは請負企業。オペレーターを説明よりも少人数でやらせることにより、中間利益をごっそり得ていた。東大阪市(人口48万人)だけで不正利得が5億円以上。
 同社は不正分を返すと言っているようだが、それで済むと思っているのが許せない。オペレーターが足りないと市民の電話がつながらない。「電話が込み合っているのでかけ直してください」ばかりで、初回の接種ではわが江東区の電話もつながらなかった。東大阪市民もその思いをしたはずだが、それが受託会社の委託費抜き取りが原因であったとは。
 病院に例えれば、「看護師が届け出数に全く足りていない状態」。明るみになれば「保険医療機関のあるまじき所業」として保険指定取り消しで、事実上休院だ。近畿日本ツーリストも営業停止処分になるはず。と思ったのだが、この会社の業務は旅行関連。なんで旅行社が予防接種の電話受付業務をしているのだろう。政治家の口利きでもあったかと余計な詮索をしてしまう。
 コロナでは、いつもはインフルエンザの患者受け入れて稼いでいる病院までが「診療お断り」を宣言したので、コロナ専用ベッドを用意する病院には破格の報酬を支払うことにした。しかも患者が発生しない場合でも支払う(空床補償)という空前絶後の優遇措置。しかるに患者が運ばれて来そうになるとなにやかやと言い訳して受け入れない。要員や設備を他診療科に転用して、そちらで保健医療費を稼いでいれば、コロナでの空床補償はボッタクリである。院長には医師の倫理観のかけらもない。広島県で5億9千万円の過大報酬を平然と受けとった院長は医道に反するとして医師免状剥奪、病院は保険医療機関の指定取消しが妥当なはずだが、そうした処分が下された報道を聞かない。
 持続化給付金でもいい加減な支給が大量に行われていた。悪質さが目に余るのを警察が一、二件摘発したら、自主返納の相談で専用電話回線が必要になるほどだったという。
 問題だらけのコロナ事業に政府が投じた金額は、2020年度だけでも77兆円。税収総額を上回る金額である。ほんとうにこれだけ必要だったのか。その価値があったのか。会計検査院を含めた厳しい検証が求められる。
 コロナの発生源は、当初ささやかれた武漢のウイルス研究所での造成ウイルスであるとの説が再評価されている。軍事用の生物兵器それとも他に用途があったのか。いずれにしてもこのことを否定する証拠を中国政府が示すつもりがない以上(ということは政治的には認めたということ)、世界の諸国はウイルス対策に投じた経費の相当部分を中国政府に請求する覚悟を示す必要があるだろう。二度とこんなバカ騒動が起きないように。
直接関係ないけど、ウクライナのゼレンスキーは筋を通していると思う。侵略軍に破壊されたインフラ復興に西欧中心に財政支援の検討がされているのだが、同大統領は「原因者であるロシアに支払わせるのが筋である」と繰り返している。「いうべきことを言う」とはこういうことであろう。
社説本文
 新型コロナウイルスのワクチン接種業務を巡り、約5億8900万円をだまし取った詐欺の疑いで近畿日本ツーリストの社員3人が大阪府警などに逮捕された。

 2021年9月~22年4月ごろ、東大阪市から請け負ったワクチン接種のコールセンター業務で委託費の過大請求を重ねていたとされる。巨額の公費を詐取した犯行は許しがたい。事実なら厳罰に処すべきだろう。

 過大請求は東大阪市のほか、静岡県焼津市、掛川市などにも広がっている。同社は不正が最大で約16億円に上り、全国86の自治体や企業に及ぶとの社内点検の結果を公表した。

 関与した部署は一つとは思えず、個人的な犯行では終わらない疑いも残る。全容解明はこれからであり、会社の関与の有無も含めた捜査が欠かせない。

 3人は、オペレーター数を東大阪市の指示より少ない人数で再委託先に発注する手口を繰り返していたようだ。不正を指摘する匿名電話を受けた市が、同社に調査を要請して明らかになった。

 発覚を免れようと、3人は再委託先に勤務実績の改ざんを指示するなどしていたという。正規の人数を勤務させていたと偽る報告書も市に提出していたというから、悪質極まりない。

 同社は、過大請求分は全て返納する方針という。だが、ワクチン接種会場の運営業務でも5千万円を超す過大請求疑惑が指摘されている。他にもなかったか徹底的に調べてもらいたい。

 不正は近畿日本ツーリストに限った話ではない。日本旅行は愛知県の観光促進策の受託業務で人件費を水増し請求していたと発表した。人材派遣大手パソナもコールセンター業務に絡んで約10億8千万円を過大請求していたことを公表している。

 コロナ禍で人流が制限されて苦境に陥った会社を、政府が本来業務ではないワクチン接種事業などを受注させて支援しようとした意図までは否定しない。

 だが、同じような不正がここまで相次ぐ事態は異常としか言いようがない。各社は国民から厳しい視線を向けられていることを真摯(しんし)に受け止めるべきだ。

 政府はコロナ対策に20年度だけでも3回の補正予算を組んで計77兆円の財政出動をした。国の税収を上回る巨額支出が、厳しい財政をさらに悪化させたことは事実だろう。

 未知の感染症への対応で、厳格な審査より迅速な執行が優先されたことはやむを得ない。だがコロナ禍は既に落ち着いた。緊急時の対応が適正だったか、検証する局面には違いない。少なくとも過大請求は、支払い相手を個別にたどれば実態は突き止められるのではないか。

 広島県では、コロナ患者用に確保した病床が使われない場合に国から医療機関へ支給される「空床補償」で約5億9千万円の過大な受け取りがあったことも明らかになった。接種業務だけでなく、持続化給付金などコロナに関する全事業が適切に執行されたのかどうか、政府はチェックする責任がある。

 予期せぬ感染症は再びやってくる。問題はその時に迅速で適正な対応ができるかどうかだ。緊急時の対応は金をばらまいて終わりではない。次の危機に生かすコロナ対策の検証に、政府が手を抜くことは許されない。

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