367イスラム的銀行ローン

「イスラムの教義では利子を取ってはいけない」。
そう言われている。ではイスラム社会では銀行業は成り立たないのか。疑問への回答をみつけた。

「実際には、イスラム銀行は別の方法を講じて金利をとる場合と変わらない利益を挙げている。一般的なのは、利益と損失を顧客とシェアするというやり方だ。たとえば家や車を買うために融資を受けたい顧客がいた場合、銀行はまずその品物を購入してから、より高い価格で顧客に売り渡し、分割払いの契約を交わす。売買の価格差は、一般の銀行が利子として課すのと同程度に設定されている。」(ピーター・ストーカー(北村京子訳)『なぜ、1%が金持ちで、99%が貧乏になるのか?』作品社、2012年)

 なるほどと納得すると同時に、消費者保護にもなっているのではないかと感心した。
 わが国の住宅売買の現状では、住宅販売会社は引き渡し時点で銀行を通して代価を全額回収済みであり、その後に顧客からの不都合箇所指摘に対して、のらりくらりの対応になることが多い。顧客とまともに向き合えば補修などの費用がかかるだけ。買い手はクレーマー扱いされることになりがちだ。(こうした体験をした者は少なくないはずだ)。
ところがイスラム方式では、直接の売り手は銀行であり、瑕疵などがあった場合の交渉先になる。買い手は値引きや改修要求とローン返済を絡ませることが可能になる。
他国の良い制度は換骨奪胎してでも受け入れるのが、わが国が古来、やってきた方法。イスラム的銀行方式も、わが国の国情に合う形で受け入れてはどうか。
すべての銀行がシステムを変える必要はない。住宅購入者を優良顧客として囲い込み、老後の年金受け取り口座獲得までを考える長期的視点を持つ金融機関が二つでも、三つでも現れればよい。その銀行に対して、住宅売買事業資金として、公的年金積立金から超低金利(例えば物価連動利率という実質の無利子)で融通するのだ。銀行は儲かり、住宅を購入する国民も安心できる。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に回す資金が減り、市場運用利益を儲けそこなう面はあるが、国民皆年金を支える現役世代の国民の“住生活”の改善による保険料負担能力向上のメリットが上回ることは間違いないと思われる。

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