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486 外国人住民投票

外国人は自治行政の主体なのかどうか。武蔵野市が条例案を議会に提出したことで、国民主権上の重大疑念が生じている。市の条例案では、市内3か月以上住む18歳以上の外国製住民に投票権を認め、その結果を市は尊重しなければならないというものだ。
これに対しては、わが国は都市国家ではない。市町村は国政の一部権能を分掌しているに過ぎないのであり、国民主権を踏み外す運営は許されず、憲法違反であるとの指摘がされている。また実体論としても、中国などのように多国在住者であっても、自己の政治目的のために動員することを当然としている国の国籍者に政治的発言を認めるのは、相互主義の観点、わが国の安全保障の観点に照らしても、危険ではないかと指摘する声もある。軽々に門戸を開くのはよいことだと早合点するのは危険である。
この議論に関連するかもしれないと思うのがマンションの管理組合。マンションには管理組合設立が法律で義務付けられている。その構成員はだれか。間違えている人がたまにいるが、住民ではないのだ。マンションは区分けできない一つの建物だが、権利的には区分所有されており、その所有権者が管理組合の構成員になる。そして管理組合が民主的に運営され、主体性を発揮することで、マンションという建物や敷地を適正に維持管理することができ、環境劣化を防ぎ、住みやすい環境を維持することになる。
マンションの区分所有権者がそのまま住民であることが多い。そのため管理組合が自治会あるいは町内会の機能をはたしていても問題は少ない。しかしマンション住民の中には所有権者でない者がいる場合がある。所有権者から借りて住んでいる場合である。例えば勤め先企業から外国支店に派遣され、その間、賃貸に出している場合などが考えられる。
こうした場合、当人は外国居住中であり、理事などの役員になれないだろうし、総会に参加して意見表明も難しい。法律はこの場合も、管理組合の構成員は所有権者であるとする。
それでは面倒くさいからと賃借人を管理組合の構成員としてしまえばどうか。武蔵野市長の考えはこれに近い。でもそれは明らかな法律違反。所有権を有さない賃借人が管理組合の議論をリードするようになれば、長期的、計画的な適正な維持管理への関心が薄れることは容易に想像できる。
本題に戻ろう。法律では転入後3か月は選挙権がない。これは単なる技術上の問題にとどまらず、政治主体である住民とはだれかを問う意味があるのだと思う。国政同様、政治参加が日本国民に限られるのは当然だ。そのうえで自治体の政治への参加資格を問うことになる。住民資格を問う要素としては現状では居住期間しかない。ならばこれをもっと長くとり、10年としても人生は長いのだから、その者の政治参加権を否定することにはならないと思う。帰国して居住地が安定すればその自治体の選挙権を得ることになるのだから。一見、参加資格者を限定することになるが、帰属自治体の政治をどう進めるかという点では、参加者の資格が明確になることで、議論が責任を伴った深みのあるものになるはずだ。

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