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519社福法人売買 ここでも憲法違反が行われている

「社会福祉法人の経営権売買が行われていた」。1月23日の読売新聞トップ記事。
 なぜこれに注目するか。福祉を食いものにするなという公憤だけではありません。重大な憲法問題であると考えるからです。このことは後半で述べることにして、報道された事件の概要。
 政府から補助金を受けて老人ホームなどを整備運営していた社会福祉法人で「経営権の売買」が行われ、法人の資金30億円が元理事長に流出。法人の預金は底をつき、職員給与も払えない状態で再生手続きになっている。


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重度の要介護高齢者を受け入れている施設が経営破綻して、入所高齢者が行き場を失っています。だから救いの手を差し伸べなければという前に、なぜこういうことになったのか、その制度的原因を解明しなければなりません。読売新聞が報道に踏み切った理由でしょう。経営の失敗による倒産は世の習い。ですが制度運営に間違いがあるならば、個別事例では済みません。同じようなことが今後も起きる。いや、すでに起きていて、報道されていないだけでしょう。
 問題の法人は広島県福山市に本部があるサンフェニックス。特別な認可を得て設立された「社会福祉法人」で、慈善の公益事業を行うものとして全面的に税が免除される優遇を受けるほか、施設整備などで巨額高率の補助金を受けています。そうした法人の経営権が売買された。そんなことがあり得るのかと、だれもが思うでしょう。
 厚生労働省の担当者は「社福(法人)に公費を投入しているのは、高齢者や障害者などに必要なサービスを届けるためだ」としたうえで、「本来の意図とは異なる資金の使い方は厳に慎まなければならない」と話したと記事は伝えます。同法には社福の売買や外部への資金流出を直接禁じる明文規定はないものの、同省はいずれの行為も「当然あり得ない」との立場ですが、過去にも使途不明金が発覚したり、社福の売買が疑われたりしたケースはあるとのこと。「あってはならない」ことが「何度も起きているらしい」のに、有効な対策は講じられていないということです。 
 持ち分という財産権の売買はだれもが知っています。株式会社の持ち分権である株式の売買などです。株式所有者はその保有比率に応じて会社資産の所有権を持ちます。社会福祉法人ではこうした持ち分権はありません。法人設立時に資金を出した創立者は「公益のために寄付した」のであり、社会福祉法人に対する財産権をいっさい有しません。出資者はおそらく理事長に就任するのでしょうが、資金の返済を受ける権利はいっさいないのです。この点を理解すれば、本質問題は明らかです。
「李下に冠を正さず」の故事に従えば、理事(特に出資者)が法人から資金を引き出す行為は、基本的に背任・横領であると考えればよいのです。だって、寄付金を後で返せと言い出すのはおかしいでしょう。サンフェニックスでは、創立者である初代理事長は退任後、毎年2億2千万円を受け取っていました。表向きの理由が何であれ、寄付金の還流であり、それを認識しつつ阻止しなかった全理事が同罪です。
 理事の中には「頼まれて仕方なく引き受け、めくら判をおしていただけ」という人もいるでしょう。刑事事件の被告にして刑務所に送り込むのは気の毒な人がいるでしょう。ですが社会人としての分別は持ってもらわなければなりません。サンフェニックスで消えた資金は30億円。それで法人は倒産、高齢者は入居金を失い、職員は給与を失い、国や自治体は投じた補助金が無になり、免除した税分相当の損失を受けています。どういう制裁を課すべきか。
「倍返し」が妥当と思われます。理事等の役員であった人に対し、受け取った経済利益を倍にして返すことで、社会に対する謝罪をするのです。一般理事では2倍、代表権のある常務理事では5倍、理事長では10倍あたりが相当でしょう。名前を貸しただけで報酬はゼロだったという人でも、車代を受け取っていればそれを倍にして返す。返す先はどこか。その法人を監督する立場にある行政庁です。サンフェニックスでは広島県庁でしょうか。
行政庁の監督責任はどうなるのかの意見があるでしょうが、社会福祉法人は2万以上もあるとのことで、認可し過ぎです。監督など事実上無理です。先に挙げた理事等からの返金を財源として有期契約で査察Gメンを雇うのです。不法事例の発覚が続くかぎりにおいてGメンの雇用が保障される仕組みです。性善説に立ち、全国の社会福祉法人が襟(えり)を正せば、このGメンは要らなくなります。
 ところでこの種の問題の根本的解決は憲法にあります。「公金その他の公の財産は、…公の支配に属しない慈善…博愛の事業に対し、これを支出し、またはその利用に供してはならない」と憲法89条に明記されています。介護保険の導入で要介護高齢者自身に介護入所費用が支給されることになっています。受け入れる施設側に対して公的補助金を出す必要性はなくなっているのです。にもかかわらず旧弊を維持し、今回のような問題事例を生じさせているのは何のためでしょうか。社会福祉法人への補助金支給という公金配分・利権システムが今の時代にも必要なのか。そもそも社会福祉法人という特権的な法人制度は必要なのか。そうした基本を考えるべきだと思われます。
ネットで記事を見たい人は、
https://news.yahoo.co.jp/articles/63abe6e831b3a92e9a553f8e48e4bb72aadbe5f8

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