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760介護ビジネスは儲かり過ぎ!

 社会福祉法人の元理事長二人が法人資金着服などの容疑で警視庁に逮捕されました。その法人とは、ボクの出生地、福山市が主な事業地であるサンフェニックス。要介護状態の高齢者の終の棲家である特別養護老人ホームが主な運営施設です。
 逮捕された一人は法人の創立者である楢崎幹雄容疑者。医師資格を有しています。もう一人は彼から福祉法人を買い取った佐藤裕紀容疑者。佐藤容疑者が「医療協力費」などの名目で支払ったけれど実態がないものだったとされます。ほかにもさまざまな名目で法人の資金を流出させており、着服総額は30億円に上ります。
 どうしてそんなにカネが必要だったのか。欲の皮が突っ張った者同士が共謀して社会福祉法人の資金をかすめ取った構図です。ですが巨額資金流出にも関わらず、ホームは経営難に陥らず、入居老人が住む場所を失って路上をさまよう映像は流れていません。そこが身ぐるみ剥がれた老人が生じる振り込め詐欺との違いです。今回の事件で着目すべきはこの点です。
 現在は経営者(社会福祉法人でこういう言葉遣いはおかしい)が変わり、法人名称も変わっていますが、倒産もしていません。30億円もの巨額資金流出があったにもかかわらず、なぜ入居者への処遇は悪化せず、事業を継続できたのでしょう。従業員の質がよかったということでしょうが、それだけでは説明できません。30億円が消えてもその法人は運営が可能であったのはなぜか。そこがポイント
 言い換えればこの法人にはなぜ巨額の余り資金があったのか。特養ホームの事業収入源は介護保険で、その介護報酬は一律の公定。介護の手を抜いていたのではないとすれば、結論は一つ。この法人においては介護保険の報酬が高すぎた。でも介護報酬はどの施設でも同じです。合理的に推論して、介護報酬が割高であるために法人に資金がたまる構造になっている。
介護事業者は口を開けば「介護報酬引き上げ」を主張しますが、ならばサンフェニックスでなぜ30億円流出が可能だったのかを説明すべきです。介護保険の報酬を議論する厚生労働省の委員会の目は節穴か、それとも事業者の回し者なのでしょうか。
 次に今回の事件で教訓になるのが社会福祉法人の売買が行われていること。佐藤容疑者が楢崎容疑者にカネを渡したのは実質の代金としてとしか考えられません。社会福祉法の建付けは法人売買を想定していません。社会福祉法人は非営利の公益法人です。行政資金に頼らずに福祉国家を実現するには余裕がある者が一肌脱いで福祉事業を推進する。それが法律の考えです。篤志家が私財を出し合って法人の基金を作る。それを財源に事業を行う。運営は福祉マインドがある人に委ねるというコンセプトです。
 そのため福祉法人には非課税などの特典がたっぷり与えられています。事業を寄付などの浄財で行うのが筋だからです。介護保険ができて特養ホームなどの運営資金が十分に提供されるようになった今日では、保険と契約して事業を行うのが企業でよいはずです。免税などの特典は当然不要です。率直に言って社会福祉法人は高齢者介護分野から撤退すべきです。
 社会福祉法人は公的資金が十分に行き渡らない分野で事業をすべきものです。そうであってこそ篤志家の資金が生きるというものです。カネの亡者が社会福祉法人を作り、その理事長に納まるのは、法の精神の破壊です。

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