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370臥薪嘗胆

 集団侵入の常態化(第21回2020.8.23)で触れたことだが、尖閣諸島への中国海警船侵入の根拠をなくすのは簡単なはず。「日本の領海、排他的経済水域ではあるが、中国に関しては特別な協定を結んで漁業を認める。漁船が協定違反の操業をしないよう、中国漁船の取り締まりのための中国公船の活動を認める」日中漁業協定(2000年6月1日発効)があるからだ。将来の宰相候補の声もある河野太郎衆院議員のブログ「ごまめの歯ぎしり」(2010年9月28日)に書いてあった。
 河野太郎議員には、父君(河野洋平元官房長官)の慰安婦談話をめぐる名誉挽回の意味でも、日中漁業協定の廃止を仕切ってほしいものだ。あなたには国会議員としての権能が与えられている。

 国民周知のことだと思っていたのだが、先日、某省で国際関係部門のトップを勤めた経験者と会った際に確認したら、まったく知らなかった。「領土係争地だから出張ってくるのだろう」との認識。いかに縦割り構造とはいえ、外務省との情報交換もされていないのだろうか。
 領有権を主張していれば領域を公船(巡視船)が遊弋したり、漁船で操業したりしていいのであれば、竹島(韓国が不当占拠)、北方領土(国後・択捉島)で日本漁船が操業していいことになる。事実は全く違う。竹島では銃撃され、殺害された。北海道沖では拿捕されている。

 外交面での金字塔の一つが日英同盟。日清戦争で得た遼東半島の領有権は、ロシアの南下を防ぎ、日本の独立を維持するための文字どおりの生命線だった。ところが国際法上では外部者であるはずのロシアが、満洲からさらに南部へと清国への侵略をしようとして、同じく清国の湾岸部への侵略を目指すフランスとドイツを誘って、遼東半島を清国に戻せと日本に要求した。拒否すれば開戦になる。泣く泣く返還したが、三国は清国に恩を着せてただちに租借権を得た。
 ロシアの駐留が固定化しては日本の独立が危うい。そこで国民の合言葉になったのが「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」。要するに復習の合言葉。苦い肝をなめ、薪(たきぎ)をベッド代わりに寝る。その辛苦を目的完遂まで続ける誓いである。
 ただ日本だけで軍事大国の露・仏・独相手に戦えない。考えた結果、イギリスと同盟することにした。それが日英同盟で1902年に締結された。その効果は早速現われ、日露戦争(1904‐5年)でロシアを北方に押し戻すことに成功している。

「領土に無関心な国家は衰退し、滅びる」のが世界史の通底事項。その領土問題を日本は三つも抱えている。それが北方領土(相手はロシア)、尖閣(相手は中国)、竹島(相手は韓国)。どういう外交をやっているのか、解決の展望は開けず、悪化の一途。北方領土ではロシアは軍事基地化し、返す刀で中国や韓国に開発への参加を促している。韓国も竹島の要塞化に余念がなく、尖閣へはオリンピック期間中にも中国海警船が来襲している。中・露・韓が同一歩調で、弱腰日本から領土の恒久侵奪をしている。
 一国対三国。三国干渉と同じ構図である。先例に習えば、日本も同盟で対抗することだ。幸いというか、中国とロシアを専制主義の悪の帝国として括ることが、民主主義国側の共通認識となってきた。イギリス、フランス、ドイツなどのヨーロッパ諸国も艦隊を派遣するまでになった。三国干渉の際の日英同盟で、日本はロシアの魔の手から逃れ、独立を維持できた。今回も同様だ。日本が民主主義国として存立するために必要な同盟関係を築くことだ。
 中国共産党政権は「中国包囲網」として批判しているが、日本は「アジアでの民主主義日本を守る同盟」と正々堂々主張すればよい。日本国憲法は民主主義以外の政体を認めず、自由権を徹底擁護する(専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去する)と規定しているのだから。そして行動面では、中・露・韓における民主主義破壊や人権侵害に対して、どの国よりも強く非難することだ。そして国内企業にも同じ行動倫理を求めることである。

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