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588映画『めぐみへの誓い』 子どもの日に思う

昨日は子どもの日。子どもの幸せを祝う日。
13歳で拉致誘拐された横田めぐみさんはなぜ帰ってこないのか。言い間違い、日本政府はなぜ横田めぐみさんを本気で奪還しなのか。
映画『めぐみへの誓い』制作委員会によると、日本の警察が「北朝鮮に拉致された可能性がある」と公表している数は約882(2019年6月18日現在。警察庁HPで公表)で、政府認定の拉致被害者17名(政府拉致対策本部HP)の50倍以上。警察が過大報告をしているのか(そうする必然はない)、それとも政府が特定の政治勢力に気を遣って矮小化しようとしているのか。マスメディアの報道も、どこのだれに遠慮しているのか、至って低調。
以下は制作委員会のHPの抜粋要約。
「家族や関係者は署名や街頭活動を続けていますが、それで被害者を取り返せるのか。でも何もせずこのまま拉致被害者たちを見殺しにする訳には行かない。そういう思いで、舞台劇「めぐみへの誓いー奪還―」(脚本・演出野伏翔)が全国各地で上演されました。この舞台劇は2010年から二度に亘る劇団夜想会の自主公演として発足。2014年から内閣府拉致対策本部の主催公演となり入場無料で、全国各地で公演を行っています。/演劇は、横田めぐみさんや田口八重子さんの北朝鮮での生活を中心に描き、過酷な独裁体制の中で常に権力の監視下に置かれ、恐怖とギリギリの背中合わせに生きながら、日本からの救出を今か今かと待ちわびる拉致被害者たちの現実と、そのご家族の愛の闘いを描いています。でも演劇という手段では見て頂ける人の数に限りがあり、36カ所での上演での観客の総数は4万に達していません。/「北朝鮮から拉致被害者全員を取り返す!」為にはもっともっと多くの方々の心を動かす必要があり、それが映画でした。」
 
再び自問。なぜ日本政府は奪還しようとしないのか。総理が代わるたび「全員の帰国に政治生命をかけます」に近い約束をするが、総理が何人代わっても帰国は進まない(5人を除いて)。
なぜか。憲法の条項を眺めていて、ひょっとして、と思いついた。国家は、「国民」と「領土」と「主権」を構成要素とする。ならばそれらをどのように守るのかについての記述があってしかるべきではないか。「主権」については前文にしつこく書いてある。まとめると「国民主権=民主主義が人類普遍の原理であり、この憲法はこの原理に基づき、それ以外の政体を認めない。これを国家の名誉にかけて誓う」。「領土」については、主権ほど明瞭ではないが、「われらの安全と生存を保持しようと決意」などと前文にある。
だが個々の「国民」の身の安全を、政府がどのように守るのかについては明文がない。(政府司法機関による誤った侵害除去の手続きを除き)。明文ではっきりと「国民が拉致された場合は国家の総力を挙げて奪還する」との規定はない。その規定がないことを奪還の努力(当然内閣の命運をかけての国家行動になる)をしない言い訳にしているのでないか。
ならば外国憲法ではどうなっているのだろう。分かったのは多くの国では、わが国と同様であったことだ。(参考にしたのは、『世界の憲法集』(有信堂))。
 ただし規定がある憲法もあった。例えば韓国憲法10条「すべて国民は、人間としての尊厳および価値を有し、幸福を追求する権利を有する。国家は、個人の有する不可侵の基本的人権を確認し、これを保障する義務を負う。」 またドイツ基本法(憲法)1条1項「人間の尊厳は不可侵である。それゆえに、これを尊重し、および保障することは、すべての国家権力の義務である。
 では韓国とドイツ以外の国は、自国民が拉致されても何もしないのか。そんなことはないだろう。
 
そこで考えてみた。日本国憲法はほんとうに自国民の実力奪還を求めていないと断定できるのか。そもそも憲法条項の記述は抽象的であることに価値がある。憲法の根本精神を踏み外さず、現実に対応すべく柔軟解釈する。そして現行憲法の改正不可事項は、①代議制国民主権(前文)、②民主主義国との連帯による安全保障(前文)、③基本的人権不可侵(97条)であろう。
 
憲法条項を読み直してみた。13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」めぐみちゃんは異国で自由を侵害されている。その権利を回復させるのが国政ではないとの議論は成り立たないだろう。また11条「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」ここで政府が与えるとあるからには、何者による侵害も政府が許さないということである。
わが国には実力奪還の実力がまだ伴っていないから、まず外交交渉でというのであれば理解できる。そうではなく「日本政府による実力奪を憲法が禁じている」との言説については、「日本語を読めないのか」とその人の常識を含めて疑いたくなる。

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