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547泉佐野市が勝訴 ふるさと納税で地方交付税減額は違法

大阪府の泉佐野市と国(総務省)が、ふるさと納税をめぐって法定闘争をしている。3月10日に泉佐野市軍配を挙げる判決が出た。ところでこの裁判では、何を争ってもめているのか。毎日新聞の記事が割りやすい。
泉佐野ふるさと納税訴訟、交付金減額取り消しを国に命令 大阪地裁(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

所得にかかる住民税の納付先はなぜ住民票の所在地でなければならないのか。
●仕事で国内を飛びまわっており、東京にも大阪にも福岡にも家がある。住民票は便宜上東京に置いてあるが、子どもの学校の学期中の家族は福岡でもっぱら暮らしている。であるから住民税の半分程度を福岡市に納付したい。
●東京に出てきて50年の夫婦。子どもを育て上げての二人だけの暮らしで、地元自治体の行政サービスはゴミの取集くらい。人口減に悩む出身地自治体の教育環境整備に寄付したいところだが、東京に納付すべき住民税をそれに回すことができるならばぜひそうしたい。
こうした気持ちに応える制度としてできたのがふるさと納税。税の納付先を選べるようにすれば、出入りの総合結果で、東京の税収が減り、その分が地方の自治体に回るはず。そんなことはネコだって予想できた。

問題はふるさと納税制度を“悪用”して、自分の自治体に税収を集めようとする自治体が出現したこと。その典型が泉佐野市というわけだ。手段は豪華な返礼品。アマゾンの商品券などの提供で、2018年度には497億円のふるさと納税を集めた。ただし返礼品が豪華すぎて、実際の実入りは半分くらいに縮減していた可能性もある。
その結果、返礼品の総額分だけ、全国自治体の住民税総収入が減ったことになる。ふるさと納税が隆盛になればなるほど、自治体総体の財政は貧困化する。これでは自治体振興に反する。そう考えた総務省は、返礼品の豪華さに規制をかけ、それに従わない自治体をふるさと納税制度の仕組みから除外するとした。その是非が争われ、裁判所は、国にはそうした権限は与えられていないと判断したわけだ。
片山善博元総務相(元鳥取県知事)は「極めて常識的な判決だ。なぜ泉佐野の寄付金だけを特別交付税の減額要因にするのか。違法なことをした国が、前回も今回も否定された」と、判決を支持するコメントしている。

自治体の財政面に着目すれば、総務省に加担したくなる。だって泉佐野市のやり方は自分本位。他の自治体の迷惑など歯牙にもかけていない。ふるさと納税をするのは裕福な者であり、そうした者への税の還付になっている。返礼品を出すのがよくない。寄付はもともと見返りを期待しないで行うもののはずだ。この際、返礼品を禁止すべきだ。想像するに国民の声はこういうところだろう。
でも寄付金の習慣が根付いていない現時点では、返礼品を一挙に禁止すると、せっかくの寄付意識の高まりや、自治体行政への関心が損なわれることが心配されるとの声もあるだろう。
いたって現実主義者であるボクはこう考える。裁判所が下した判決を前提に考えよう。つまり泉佐野市の「豪華返礼品で寄付金を吊り上げる手法」も、自治体の自主判断として認められる。ただしそのことに伴う「住民税総額の減少への対応」が必要だというのが、ボクの意見。総務省の失敗は、泉佐野市を狙い撃ちにしてペナルティをかけたこと。それが「国の権限逸脱」と判断された。
一自治体への狙い撃ちではなく、全国の自治体相手に対策をとるべきなのだ。国から全国の自治体総体への財政支出がされている。これが地方交付税。ふるさと納税への返礼品分だけ、地方交付税総額を減額すればいいのだ。だって「返礼品なしであれば住民税総額は変わらなかったはずでしょう」と言えばよい。
すると自治体は口々に言うだろう。泉佐野市の抜け駆けを国が罰してくれと。しかし個々の自治体財政運営はまさに自治の根幹。国が介入してはならない。そこでこう言えばよい。
「返礼品で住民税という固有財源を減らしたのは個別自治体。国としては地方交付税の総額カットで対応するしかありません。交付税の配分を自治体にお任せしますから、知事会なり市長会、町村会なりで、返礼品評価を含めて交付税を適正に配分する協議をしてください」と。要するにこの際、地方交付税の配分権を自治体の協議に移譲するのだ。
 知事も市長も良識のある選良である。協議して適正妥当な配分をするだろう。そう信じるのが民主主義政体である。

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同時にもう一つ、この際解決すべき事項がある。ふるさと納税は法的には「寄付金」である。寄付先が自治体であるから、受け取った自治体に贈与税はかからない。では返礼品はどうか。これは名前がおかしいのであり、正確には自治体から個人への寄付=贈与である。ならばこれに贈与税を課さなければおかじいはずだ。ふるさと納税をしたい人は、返礼品を受け取り、それに見合った贈与税を国に納付するか、それとも自分は返礼品目当てではないとしてそれを受け取らないかの選択に任せればよい。
 ボクの想像では、贈与税がかからない返礼品が増えることになると思う。すでに一部自治体で実施されているが、「わが町を来訪して山林の下枝伐採ボランティア活動に参加することを認める」といったものだ。これならばふるさと納税を受け取った自治体は、それに加えてボランティア労力も得ることができる。他の自治体に迷惑をかけることにもならない。ふるさと納税を実施する自治体には、国民の心を動かす知恵が求められているということだ。

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