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365中国の地政学的評価

昨日に続き、ピーター・ゼイハン著『地政学で読む世界覇権2030』を再読。その第14章で中国を論じている。著者の意見は、「中国が世界を制覇することはない」。20世紀の半ばには「ソ連型共産主義によるドミノ理論」、後半には「日本型資本主義の経済支配」が予測されたが、実現しなかった。今回も同様として、その理由を地政学で説明している。
中国は「華北地域の支配権を握った者が他の中華地域を力で押さえつける構造」が基本で、開闢(かいびゃく)以来変わっていない。華北を流れる黄河は治水が難しく、大堤防の構築、維持管理が欠かせない。それには人民の動員が必要であり、専制的な政治体制が採択される。かつての皇帝、今の共産党主席への権力集中は必然なのだ。そしてそれが強大な軍事力を産む。
これに対し中部(その海岸部が上海)の人は商売を志向し、国家概念に乏しい。南部は平原に乏しく、地域的一体感がまるでない。華北の軍事力が圧倒的だから支配占領は容易。だが民心を長期に渡って掌握することはできない。反抗者が声を挙げ始める。易姓革命が起きる。
こうしたことで中国は、統一と国家の分解を繰り返してきた。中国という統一国家が連綿として続いてきたというのは幻想であり、このことに気づくことが重要なのだと著者は説く。
今はこれに、モンゴル、ウイグル、チベットなど経済的、政治的一体性がない領域まで統制支配しようとしている。無理の上に無理を重ねている状況だ。経済性を無視した財政、金融制度で成長を続けることで矛盾を隠してきたが、不良債務が空前の規模に積みあがっており、早晩終焉を迎える。よって共産党支配の中華帝国は瓦解が必然。統一中国がない世界を想定した経済の仕組みへの改編に遅れた国は大やけどをすることになると著者。
これに対し、共産党の見解では、政治や統治のシステムは高度化させることができる。反乱分子を芽になる前につぶすための監視、投獄、再訓練施設や不穏分子候補を断種で滅亡させるなどのテクノロジー活用で革命や暴動を起こさせない次元に発達している。天安門で成功し、中東などでの民主化の動きが伝播することも防いだ。厄介なウイグル族のジェノサイドも順調に進んでいる。いずれ中国共産党が世界を制覇すれば、人権や民主義といった前世紀の理念を唱える者はいなくなるとの主張だ。

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