364日本の地政学的優位性
東洋経済新報社から2016年に発行されたピーター・ゼイハン著『地政学で読む世界覇権2030』という本を読み返した。1990年から経済成長を忘れ、世界最速での人口高齢化と巨大規模の財政赤字。日本は忘れられた貧しい小国になってしまうのではないか。そういう悲観論が主流の中、この本では「他の多くの国よりもはるかに有利な戦略的地位に立っている」と説く。
著者の分析を箇書きで要約しよう。
(1)少子高齢化はどの先進国でも深刻。日本では1970年代のだ2次ベビーブーム世代が現役の重要年齢層という優位点がある。
(2)政府財政赤字は規模の大小はあるが、世界の共通事情。日本では債権者の国内比率が高く、外国からの政策への介入は小さい。
(3)産業基盤と労働力のレベルが他国に比べて、相対的にも絶対的にも高い。
(4)日本の海軍力は質的に高く、エネルギー供給と貿易の安全確保能力が高い。
(5)陸続きの国境がないし、中ロには上陸占領を試みる海上戦力がない。
(6)住民の98%が同一民族であり、単一の文化アイデンティーを持つことから、危機に際しての国家崩壊への抵抗力が強い。
(7)他民族への同化力が低いため。単純労働分野を移民に明け渡すのではなく、高齢者に担わせることになる。
ただ上記は日本語版のための書き加え部分。読んでもらおうとしてリップサービスになっている点がないか、気にならないでもない。またこれらが利点であるとすれば、それをわざわざなくしてしまう政策の採択される傾向をどう考えるか。みなさんの感想はどうだろう。
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