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サミュエル・ハンチントン『文明の衝突』

地政学の本を読み返した。サミュエル・ハンチントンの『文明の衝突』で日本版は1997年に出されている。25年、四半世紀前の本だ。日本関係部分を抜粋してみる。

「おおかたの予想では、中国の経済は21世紀の早い時期に世界最大規模になるとされている。1990年代のアジアは、経済規模において世界で2番目と3番目に大きな国をかかえているが、2020年には世界の経済大国上位5国のうち4カ国、10位までのうち7カ国をアジアの国が占めるようになるだろう。」
この予測は現時点(2023年)では実現していない。

「中国は、西欧化に向かうべきか自国の伝統に回帰すべきかという選択の岐路に立たされたのである。…西欧志向は、北京で国を仕切る数百人ほどの実力者や、都会から遠く離れた田舎で暮らす8億農民の支持を得ることはできなかった。」
この分析は正しかった。経済発展した中国は民主主義化するだろうとのおおかたの予想は大はずれだった。

「天安門以降の政権は、統治権の根拠として中国の民族主義を熱心に奉じるようになった」。「政権の力や行動を正当化するために意識的に反米主義が煽られている」。「伝統回帰の動きのなかでは、民主主義はレーニン主義と同様に信頼を失い、外国から押し付けられたものの一つにすぎなくなっている」。「20世紀初頭に、ウェーバーとは無関係ながらほぼ時期を同じくして、中国の知識人たちは儒教が中国の後進制の元凶であると考えた。20世紀末、中国の政治指導者たちは西欧の社会学者たちと軌を一にして、儒教こそが中国発展の源泉であると見なしている。」
さすがの慧眼だ。

「中国政府にとって、中国系の人びとはたとえ他の国の国民であっても中国人社会の一員であり、したがってある程度まで中国政府の権限にしたがうべきなのだ」
これがやっかいなのだ。

「日本と韓国をのぞいて、東アジアの経済は基本的に中国人の経済なのである。」
日本だってかなりその傾向が出ている。

「中国では信頼や約束は故人のつきあいにかかっており、契約や法律その他の法的文書には頼らない。」
これが分かっていないから何度も痛い目に遭う。

「21世紀の初めには、強制か和解によって、または最も可能性が高いのはその両方によって、台湾は大陸中国により緊密に統合されるだろう。
幸いなことにハンチントン氏は神ではなければ預言者でもない。彼は学者といして所説を述べた。自分たちの運命をどう開くか、閉じるかは当事者が考えて行動することだ。台湾人だけでなく、日本人にも当然あてはまる。

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