823特定技能対象範囲の拡大促す 新制度では人材確保を重視すると有識者会議

目に入った新聞記事。
≪外国人の「技能実習制度」の見直しを検討する政府の有識者会議は(2023年4月)19日、東京都内で会合を開き、「人材確保」に主眼を置く新制度の創設を求める中間報告書の修正案をまとめた。新制度下でも維持する「特定技能制度」は、いずれも対象となる職種や分野の追加を検討する促したことが柱だ。少子高齢化による労働力不足に対応する狙いがある。≫

 技能実習制度とは、わが国の高い技術を開発途国威に伝播するという国際貢献が制度目的。キャベツの育て方や魚網の扱いなど、日本から講師を派遣して教えるのもいいが、それよりももっと有効な方法がある。それはその国の意欲ある若者がわが国の現場に泊まり込んで技術を習得して持ち帰り、母国で講師役になって自国民に指導し手広げよう。そういうものだったのではないか。
 だとすれば実習生は、技能習得目的の母国政府からの派遣留学生だ。労働基準がどうとか、脱走者が相次ぐとかなどは起こりにくい。しかるに国連の機関などからは「奴隷労働」と批判され、入管は行方不明・不法滞在化している者の探索にきりきり舞いしている。どうしてかの理由ははっきりしている。技能実習の実態が目的と真逆になっているからだ。一言で言えば、実習生ではなく、安価で使い捨ての労働者として扱われていることであり、当人たちもそれを承知で出稼ぎ労働者と自認しているからだ。そうでなければ実習生になるために仲介業者に百万円近い金額を各自で払い込むはずがなかろう。
 技能実習制度は元来の機能を果たせなくなっている。ならば廃止しよう。そのための有識者会議だったはず。だが報告書では「わが国の労働力不足解消」に焦点を当てるという。ちょっと待ってほしい。わが国の労働力不足とは何か。どの分野で著しく不足しているというのか。農水産業、建設業、介護分野…と挙がるだろうが、その分野での労働力不足は基本的に労働条件が悪いからだ。
 介護を例に取れば、賃金安い、労働時間が不規則で長い、職場が暗いなどなど。日本人が応募してこないから、不満を言わない出稼ぎ外国人で産める。その結果、労働条件は改善されないから、日本人はいっそう集まらない。実習生の存在が労働条件改善を阻害するから、他産業との労働条件格差は広がる一方。そのうち外国人ばかりの職場になる。

 ところが足元で進んでいるのは、日本とそれら派遣国との経済格差の縮小。これが続けば円安も加わって、日本への介護出稼ぎの魅力がなくなる。その国からの出稼ぎは来なくなり。そうした国ばかりになったとき、国内の介護施設は要員不足で休業状態になる。
高い入居金を払ってのホームなのに世話してくれるケアワーカーはいない。遠い未来のことではない。20年先だとすれば、ホーム入居を考えている人はまだ存命の公算だ。
 諸般の情勢を見れば高い確率でそうなる。にもかかわらず出稼ぎ外国人を受け入れようとするのはなぜか。どの評論家の言葉だったか、「今だけ、カネだけ、自分だけ」に毒された者が専門家会議を牛耳っているからだろう。そんなことでこの国はよくなっていくのか。市井の日本国民は不安に思っている。


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