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6/n シン・ボアカット(突っ込み切り) チェンソー、ソーチェーン(チェンソー用チェーン)、目立ての正しい理解

ソーチェーンサービスジャパン(略: SSJ)です。

SSJは当事業体の宣伝も兼ねて、タイトルの記事をシリーズ化してnote上に公開することにしました。本記事の内容はXアカウントのhttps://twitter.com/SSJP2023 固定ツイートで先行公開していますが、noteで公開する内容は、Xアカウントで公開中の資料 「4D Sawchain Study」の「 V.1.25」以降の内容となります。

ボアカット(突っ込み切り)とは

 「それは何ですか?」という方の為に動画を載せておきます。バーの先端から木に切り込む使い方のことです。

クロスカットより難易度も危険度も高いので、伐倒講習やチェンソー講習を受けてから行うことをお勧めします(どちらの講習もSSJではやっていませんが、ソーチェーンに焦点を当てて発展版の講習は行なっています)。

ボアカット、より速く

 ボアカットもクロスカットも目立ての基本は一緒ですが、1本のソーチェーンを目立てで切れ味に特化させるのか、切れ味の持続性に特化させるのか選択できるのと同様に、ボアカットに特化させることもできます。加えて、ボアカットでは消耗度合いに応じて、目立て精度や角度設定が同じでも挙動が変わっていきます。前半ではクロスカットとは異なるボアカットのメカニズムを解説し、後半では「より速く」する為にはどのような選択肢があるのかを紹介します。

ボアカットの3段階のメカニズム

  今まで何度か説明しましたが、クロスカットではカッターはジャンプしますが、ボアカットではジャンプしません(バーのノーズ部分とそれ以外とで、それぞれカッターを上から指で押してみるとすぐ分かりますのでお試しを)。ジャンプしないことについては4/nをお読みください。

 アタック、ジャンプ、ランディングが無いのに加え、ボアカットではバーのノーズのどこにカッターが位置するか、また、カッターがどれほど消耗(=バーのRに対する回転半径の変化)しているかでデプス設定やクロスカットとは別の挙動が発生します。これを3段階のイン、トップ、アウトに分けて解説します。

イン

ノーズ上=ジャンプができないエリアで、バーのトップまで向かう間の段階です。デプスゲージはカッターの頂点に対して円周上を先行しているのと、使用者はバーを後方から押し込んでいるので、デプスゲージはカッターの頂点に対して相対的に下がろうとします。

新品時(デプス025)
青曲線(=ガイドバーと平行)が先行するカッターのカットライン
青矢印がバーを押し込む方向


消耗時イメージ(デプス025)
先行するカッターのカットラインのRにより、
デプス設定下に材が入り込む

カッターの頂点とデプスゲージの間の点間距離が開くほど、更に相対的にデプスが下がろうとするので、デプスとは異なる「噛み込み量」が増えて負荷がもう1段階高まります。

消耗時、インの噛み込み量の増加

消耗するにつれ新品時に比べて、サイドプレートの下側も意識して鋭くしておかないとなりません。この噛み込み量の増加はデプスゲージやドライブリンクのバンパーで新品時~消耗時に渡って抑え込むことができます。また、フックにするとボアカットが少し楽になるのは、頂点とワーキングコーナーの金属量が減って文字どおり「尖る」為、インの時点でバーを押し込む力に対する抵抗が少なくなり、トップまでの噛み込み量が増えるからです(切れ味の持続性は落ちます)。

トップ

バーを押し込む方向に対してカッターが頂点に達した時です。カッターパーツのサイズ=ピッチに対してバーのR(≒丁数≒ノーズの直径)がきつい程、加えてカッターが消耗する程、インからトップに掛けてカッターエンドとデプスが材の曲面に対してつっかえ棒の働きをするようになります。

つっかえ現象のイメージ図

このトップに掛けてのつっかえ現象をなるべく抑えるには、インでカッターが噛み込んだ材の量に対して、どれほど押し込み続けてカッターの反発を抑え込めるかがキーとなります。また、カッターエンドを落とす加工は、バーのRに対するつっかえ現象の発生を抑える役目があります(出口が開く=ビッグトンネルになるのでクロスカット含めてチップフローも上がります)。カービングで流行ったRMSも原理は一緒です。

カッターエンド加工、寿命は当然短くなります。
カッターエンド加工単体は1コマ10円、目立て込みの場合は1本あたり1500円でお受けします。
新品時(デプス025)
つっかえ現象が起こった際の刃先とのクリアランス
Rがきついほど発生+トップで切れる量が減る
消耗時(デプス025)
つっかえ現象が起こった際の刃先とのクリアランス
新品時に比べてトップで切れる量が更に減る

アウト

トップを超えてバーの進行方向とカッターの進行方向が徐々に逆向きになる段階です。カッターが進むにつれ、Rが材からデプスゲージを強制的に離れさせることで噛み込み量が減っていきます。これは、クロスカットの時のデプスゲージが、パワーが許す限り材から離れて行かないということの対比で「強制」と言っています。インから始まりトップ、アウトに掛けて、どれほど噛み込み量を維持したか=押し込み続けられたかがこの段階でも重要です。また、アウトに位置するカッターのエンドは、進むにつれバーの進行方向に対するつっかえの役割をするようになります。

アウト段階
エンドのつっかえ現象

トップで紹介したカッターエンドを落とす加工をしていると、後続のインのカッターが押し込める量を増やすことができます。この時、インで上がる負荷に対してパワーが余っていないとストールしますので注意してください。

パワー vs バランス

ここまでカッター1つの挙動に焦点を当てて解説しましたが、ボアカットでは焦点を当てた1つのカッターに対して、先行&後続のカッターがどこに位置するか、また、ノーズ上でカッターが何個あるかの総合でボアカットの切削効率が変わります。

Rによるノーズ上のカッター数の対比

ノーズ上のカッターの数が減る程、パワーに対する負荷が減って単純に切削効率が上がると考えてしまいがちですが、クロスカットでデプスを下げ過ぎた時と同様に、カッター数の減少と、カッターの消耗度がある時点を超えると、インからの噛み込み量が増え過ぎてストールする可能性もまた上昇します。ボアカットで切削効率を上げたいと思ったらバーとチェーンはそのままに、パワー=大排気量にするのが最も簡単な方法です。

シン・ボアカット、より速く

ここまでの解説を踏まえ、バーを押し込む力とは別で、ボアカットをより速くする為の対応策を整理します。あちらを立てればこちらが立たず、ですので、メカニズムを踏まえて何も変えずに妥協することも1つの解決策です。

1番簡単な方法

パワー=排気量を上げる(チェーン、バーはそのまま)

カッター新品時=全体の負荷が上がり始める前

  • フックにする=切削角を鋭くする=ヤスリの頭出しを抑える=押し込み量を増やす

  • デプスを下げる=噛み込み量を増やす

  • カッターエンドを落とす=トップ、アウトのつっかえ現象を減らす

  • スキップチェーンにしてカッターの数を減らす=アウトのつっかえ現象を減らす

カッター消耗時、全体の負荷が上がり始めた後

  • バックスロープにする=押し込み量を抑える

  • デプスを上げる=目立ての時にデプスゲージを落とさない=噛み込み量を抑える

  • バンパーレスの場合はバンパーチェーンと入れ替え=噛み込み量を抑える

  • カッターの数を増やす=つっかえ現象を起こす=インの噛み込み量を減らす

目立て上級者向け、デプスゲージに加工を加える

以下のカッター正面画像、デプスゲージにデプス設定とは別で水色点線のように削ることで材に対するデプスゲージの摩擦を減らすことができます(=スライディングデプスゲージ)。

逆向きに削ると横ブレ=切幅が増えるので注意してください

画像のとおりのスライディングデプスにすると、カッターが横ブレしやすくもなりますので、目立ての仕上がり精度、左右差の許容度が減ります。スライディングデプスの効果はボアカット全段階&消耗度&クロスカット共通ですので、腕に覚えのある方は試してみてください。

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