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『味』について考える。決め手は何か?素材か、見た目か、表象か? 雑記#2

最近、料亭「賛否両論」オーナー兼料理人の笠原将弘さんのYouTube動画「笠原将弘の料理のほそ道」をよく見ていて、美味しそうだなと思ったときには作って、食べています。もちろん、私が作っているわけではありません。先日、「プロの味をおうちで再現!アレンジ無限大の【白和え】」(https://youtu.be/OcKNz6TGDrY)を見ました。冷蔵庫にちょうど豆腐がありましたので、その日の夕食には白和えが登場しました。

味の決め手は「素材」

料理の細道で紹介している料理を再現すると、大抵は美味しいなと思いますが、その日食べた白和えは「イマイチ」でした。「ツナときゅうりと長ねぎの白和え」がイマイチで、「にんじんと小松菜とちくわの白和え」も笠原さんが自画自賛するほど美味く思えませんでした。

初見のレシピで調理する際は計量して再現度を高めますから、調味料由来の「味」に大きな違いはなかったと思います。それでも、あまり美味しくなかったのです。「にんじんと・・・」も「ツナと・・・」もどちらも美味しいとは思いませんでしたから、和えたものではなく、基本となる「白和えの衣」の味がイマイチなようでした。善く善く考えると、冷蔵庫にあった豆腐は「安い」豆腐でした。豆腐らしい「味」や「香り」が弱い豆腐だったのです。

やっぱり料理の味の決め手は「素材」だよ、ということでやや高級な豆腐を購入してリベンジしました。美味しくいただけました。「味の決め手は素材だ」といってしまえば、当然ですよと言われそうです。では、美味しい料理のレシピを手に入れ、良い素材を揃え、正しい調理工程で、レシピ通りの調味をすれば美味しいでしょうか。

味の決め手は「見た目」

和歌山・由良に新名物「由良ブルーカレー」ルウで青い海表現、和歌山経済新聞、2022.06.14
https://wakayama.keizai.biz/headline/2102/


[B-R サーティワンアイスクリーム]のチョコレートミント・アイスクリーム
https://www.31ice.co.jp/contents/flavor/image/noCorn_br00004.png

写真は「由良ブルーカレー」と「チョコレートミント・アイスクリーム」の画像です。チョコミントアイスは食べたことがあります。好き好きはあるでしょうが、美味しいアイスクリームだと思います。由良ブルーカレーは残念ながら食べたことがありません。商品化して販売しているのですから、やはり好き好きはあるでしょうが、きっと美味しいのでしょう。でも、美味しそうには見えません。

青色が食欲を減退させるという研究がありますが(例えば、小島みなみ「青色の食欲減退効果に関する研究」https://lab.kuas.ac.jp/~jinbungakkai/pdf/2013/p2013_03.pdf)、適切な割合の青色は食欲を増進させるという研究(例えば、川嶋比野「染付皿の青色が食欲や心理的おいしさに影響を与える要因についての研究」https://lab.kuas.ac.jp/~jinbungakkai/pdf/2013/p2013_03.pdf)もあります。
単純に、色が美味しさを決めているわけではないでしょう。でも、食べ物やその周りの色は味わいに何らかの影響を与えていると思います。

少し話は変わりますが、以前、長距離ドライブに出かける際に運転しながら朝食や昼食を済ませることを良くしていました。ツバメの雛さながらに運転しながら口を開けるとそこにおかずが放り込まれました。このとき、しばらく味はわかりません。味蕾を通した刺激で味を判別するには少し時間がかかるのでしょう。それでも、その時口に入るものを視認していると、口に入ると同時に味わうことができます。視覚情報が美味しさに大きな影響を与えていることは間違いないでしょう。

味の決め手は「言葉」

この記事のバナー写真(?)はお雑煮です。美味しそうに見えるでしょうか。美味しそうに見えることを意識しないで作ってありますので、見た目はあまり美味しそうではないと思います。この雑煮は「プリンセス雑煮・庶民バージョン」という名前が付けられた雑煮で、正月テレビで紹介されてた小和田家(現皇后様のご実家)のお雑煮をアレンジしたものです(https://cookpad.com/recipe/345507)。さて、この説明を読んでからバナー写真にしてあるお雑煮の写真を見ると、なんとなく美味しそうに感じませんか?

先程述べた、車を運転中の食事ですが、口に入れられるものを視認していなくても、例えば「ソーセージだよ」のように声かけが先行するとやはり口に入れると同時に味わうことができます。上手な食レポを聞いた後にその食品を食べると、その食レポと同じように味わうことができます。「由良ブルーカレー」という名前では、由良という地名の場所に思い入れがなければ青いカレーを見て、美味しそうとは思いがたいでしょう。しかし、同じように青いカレーでも、「青い富士山カレー」という名前であると美味しいかもしれないと感じます。味についての言葉による表現(表象)を聞くことで味わいが決まるようにも思えます。表象の示す先入観が味蕾で味わうよりも先に「味」を形づくっているのかもしれません。

青い富士山カレー
https://www.mission-int.jp/product/117/

「味」は複雑です

実際の味は色彩に紛らわされることなく食べて判定すべきかもしれませんが、私たちは料理の名前や由来、他の人が食べたときに感じた味の表現、見た目に影響されながら味わっています。今回取り上げなかった、香りや音も味に影響するでしょう。空腹こそ最高の調味料とも言います。何か一つを味の決め手にすることはできそうにありません。たかが味されど味、「味」というものの奥深さを感じます。「味」について考えただけでこんなに色々な話題が出てきます。事程左様に、味に限らず人の認知処理というものはかくも複雑なものだと思い知らされます。

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