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【読書】交響曲第6番「炭素物語」ロバート・M・ヘイゼン著

「脱炭素社会」というワードがニュースで流れる時代。そもそも炭素って何なのか、人類が炭素についてどこまでわかっているのかの問いに答えてくれるのが本著「炭素物語」である。

著者はアメリカの鉱物学者で宇宙生物学者のロバート・ヘイゼン。前作『地球進化46憶年の物語』では地球の誕生から今現在の地球史を丁寧に追っていき、「生物と無生物である鉱物が共進化」してきたというパラダイムシフトを提示した。

『炭素物語』では「生物と鉱物の共進化」をさらに深堀し「炭素」に焦点をあてている。2009年に始まったアルフレッド・P・スローン財団とカーネギー地球物理学研究所による深部炭素観測計画(DCO)の10年に渡るプログラムの成果をまとめていて、最新の研究の成果や未だ大きな謎が残る地球深部の炭素循環に迫っている。

まず、炭素の誕生からだ。地球が生まれる46憶年前よりずっと前の138憶年前のビッグバンの爆発の中で炭素は生まれた。水素原子4500兆個あたり1個の炭素原子の割合だったそうな。それがやがて太陽風や隕石や彗星によって地球にもたらされた。今わたしたちの体の炭素の一部はビッグバンの時のものだったのだという。(なんという壮大な!)

そして、地球での炭素の循環モデルについて。一般的に描かかれているモデルよりもさらに踏み込んで地殻の活動とマントル内を視野に収めているのが特徴だ。それに加えてマントルよりも最深部の中心核には、地殻とマントル内を合わせた量より多い炭素が存在しているかもしれないというから驚きだ。もっとも、この最深部の炭素の貯蔵庫同士がどのように炭素を移動させているかは解明されておらず謎を残している。

・wikipediaの炭素循環モデル

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読書は終えたものの、この本の知識量はとてつもなくて読書中は滝行をするかの如く。滝行中は頭良くなった気分ではいるのだが読了したあとはサッパリ忘れてしまって身についてないというのが正直なところ。何度か読み直さなきゃいけないな、と。

目次 (amazoneより)

第1楽章「土」――深部の炭素
[序 奏] 地球誕生の前(ビッグバンでも生まれた炭素/星の元素を知る一歩)
[提示部]地球の誕生と進化(原初のダイヤモンド/地球の多彩な炭素鉱物/ビッグデータ鉱物学)
[展開部]地球深部の炭素(深部炭素の鉱物学/深部のダイヤモンド/中心核にある炭素/地球最深部の謎)
[再現部]炭素の存在する世界(地球に固有な鉱物相/地球型の系外惑星)[終結部]なお残る謎
第2楽章「空気」――旅する炭素
[序 奏]大気ができる前[短い独唱]大気の起源(炭素のシャワー/大気の消滅と再生/再生後の地球大気)
[間 奏]地球深部の炭素循環(深みへと下りるもの/深みに下りた炭素の運命/深みから地表に戻るもの/炭素のバランス)
[短い独唱(ダ・カーポ)]大気の変化(心配なこと/温暖化の悪影響?/温暖化対策?)
[終結部]既知・未知・不可知
第3楽章「火」――暮らしの炭素
[序 奏]素晴らしき材料の世界(数のルールとマジックナンバー/燃える炭素とエネルギー/ものづくりの原料)
[スケルツォ]身のまわりで役に立つもの(熱い材料/冷やす材料/くっつく材料/滑る材料)
[三重奏] ナノテクノロジーの主役(可能性の広がる新素材/軽くて強い未来材料/ナノマシンの部品)
[スケルツォ再奏]炭素材料と暮らしの物語(身のまわりの高分子製品/分解する高分子の明暗)
[終結部]炭素なしで音楽は奏でられない
第4楽章「水」――生命の炭素
[序 奏]原始の地球[提示部]生命起源の謎をさぐる(生命誕生の「5W」/生命の誕生:カギを握る炭素の化学/見えてきた生命への道/もうひとつの創世記:地球外生命は存在するか/豊かなる地球型惑星)
[展開部]生命の進化(主題と変奏)(主題:進化する生命/変奏①:鉱物を食べる微生物/変奏②:光合成生物とその産物/変奏③:多細胞生物の登場/変奏④:鉱物で武装する生物の出現/変奏⑤:生物の陸上進出/変奏⑥:ヒトの誕生)
[再現部]人間活動と炭素循環(生物の死と炭素)
[フィナーレ]「土」「空気」「火」「水」の協奏

メモ

・LNRE(多数希少事象)分布 テロ対策にも使われている語彙統計の手法を未知の鉱物発見の手法にしている

・オフォオライト 地殻を突き出たマントル オマーンのオフィオライトは二酸化炭素を吸い炭酸塩鉱物を作る。地震活動がないのに年1mm単位で隆起し続けている。

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