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【ネタバレあり】『十三機兵防衛圏』をクリアして言いたいことは「おい東雲!」

Nintendo Switch版『十三機兵防衛圏』を遊んだらなかなか楽しめたので、軽く感想でも書き留めておこうかと思います。

『十三機兵防衛圏』は、「機兵」と呼ばれる巨大ロボットに乗り、世界の命運を賭けて戦う13人の少年少女の群像劇。ヴァニラウェアが手掛けただけあってグラフィックも綺麗なのですが、やはりストーリーが一番の見どころでしょう。

なお、この記事ではネタバレありで書いていくのでご注意ください。

◆プレイヤーが選択できる群像劇

画像はNintendo Switch版『十三機兵防衛圏』より

本作は13人の主人公による群像劇によってストーリーが描かれます。誰から読むかはプレイヤーが選択できるため、このストーリーこそビデオゲームならではと評価する人もいるほど。

僕もこの群像劇が楽しめたクチです。ストーリーには極端なネタバレ防止のためのアンロック要素もあるのですが、どういう順番で読んでいくかちゃんと選べる作りになっています。13人もいるので選び方はかなり多岐に渡るわけですが、それでもきちんと話が成立するように作ってあるのはさすがといえるでしょう。

ストーリー上では時間が変わったり急に新たな用語が出てきて混乱することもあるのですが、各種情報をアーカイブとして整理してくれる「究明編」もあるので安心。このアーカイブもストーリーの進行に合わせて更新してくれる仕様で、本当にストーリー周りはすごいですね。

◆ジュブナイルものだけど大人の立場もちゃんとしてる

画像はNintendo Switch版『十三機兵防衛圏』より

『十三機兵防衛圏』はジュブナイルものです。当然ながら未成年の子供たちが主役なわけですが、そういう作品とはいえ大人が雑に描かれていると、子供騙しに見えてしまって僕は笑ってしまうんですよね。

しかし本作でそういうことはなく、子供を主役にしつつも大人の存在意義もきちんとあるところが嬉しかったです。もちろん、主役は子供たちなのであくまで脇を固める存在なのですが、非常にうまくまとまっています。

◆(きっちりしすぎているくらい)物語がちゃんと終わる

画像はNintendo Switch版『十三機兵防衛圏』より

前述のように本作は綺麗にまとまっている作品で、最後にはきっちりと話が終わります。ここまでしっかり終わらせるかというくらい、プレイヤーの入る余地の少ない物語です。

これは最後まできちんと描いたという長所であり、同時に強引にまとめたようにも感じられる短所でもあったりします。とってつけたようなカップルがいるように見えたり、ハッピーエンドにしたいにしてもみんなヤケクソに幸福になりすぎだろと思うところもあり、ほかにもいくつか気になる点がありますが、それについては次以降の項目に譲りましょう。

◆おい東雲!

画像はNintendo Switch版『十三機兵防衛圏』より

本作は13人の少年少女が主人公なのですが、そのなかでひとり問題を抱えているのが「東雲諒子」です。

彼女は機兵に乗った後遺症で記憶が混濁・消失している存在なのですが、この設定のせいか物語上の便利屋になっています。

・なぜ東雲はいろいろな場所に登場するのか?
・東雲が語る謎の存在はなんなのか?
・彼女が復讐に燃える理由は?

など、ミステリーにおいて謎や伏線を撒く存在になっているのですが、理由はだいたい「東雲の記憶が混濁しているから」になっている印象で、僕は「なんてズルいキャラなんだ!」と声が出てしまいました。とにかく謎をばらまいて周囲を混乱させるばかりなんですよね。

まあ、13人も主人公がいるのでこういうキャラクターが出てくるのは仕方ないかもしれません。しかし問題は彼女の行動。というのも東雲は嫉妬に狂って余計なことをするキャラクターで、本作における問題の7割くらいは彼女が原因なんですよね。

画像はNintendo Switch版『十三機兵防衛圏』より

「問題は過去の東雲が起こした」と擁護できなくもない(実際、作中でもここが強調される)のですが、しかし嫉妬でおかしな行動をするのはどうも彼女の性質らしく、正直なところ僕は問題児にしか見えなかったわけです。

にも関わらず、最終的に東雲はしれっと仲間ヅラをしているわけです。過去の清算をするわけでもなく、反省をするわけでもなく、記憶をなくして仲間入り! 「おい東雲!」と叫びたくなりましたよ。

もし東雲が包帯美少女でなかったら、あるいは関ケ原と幼馴染みでなかったら、速攻で殺されてたんじゃないですかね(むしろこれらの設定も彼女を主人公にするためのものに見えてくる)。ある意味、本作で一番印象に残ったキャラクターになりました。

◆つらかった崩壊編

画像はNintendo Switch版『十三機兵防衛圏』より

本作はストーリー部分だけでなく、「崩壊編」という機兵によるバトルパートも用意されています。しかしこれがしんどかった。

崩壊編はシミュレーションと説明されていますが、これは実質的にRPGだと思います。あまり戦略は必要なく、仲間を鍛えればそれだけで余裕で勝てるようになります。育成要素を重視しているのは間違いなく、好きなキャラクターを鍛えるRPGだと僕は解釈しました。

それゆえに、テキトーに無双しているだけの内容になります。ミサイルレインをぶっぱなしてガンガン敵が溶けていくところに気持ちよさを感じなくはないですし、成長して強くなる部分にはそれなりのおもしろさがあるのですが、結局のところ物語のアンロック要素になっているので、「話を読み進めたいのにやらなきゃいけない要素」にしか思えませんでした。

ソシャゲで「話の続きは敵を倒してからだ!」と強引にバトルに行く流れ、あるじゃないですか? あれの高級版に見えるわけです。

崩壊編は物語においても重要で、きちんとストーリーに繋げようとしている部分もあります。しかしこれも強引な印象が拭えません。ダイモスとの戦闘がゲーム由来なのであれば、仕様の穴とかを突くほうが早いんじゃないかとか、敵AIのバグを利用して攻撃対象を見失わせるとか、そういう話のほうが納得しやすいですよね。でも「少年少女がロボで怪獣と戦う」シーンを描きたいために、正面からバトルしなければならない。崩壊編はいろいろな都合のほうが透けて見えてしまいました。

◆アニメでも楽しそう、というある種残酷な感想

地味に進行方向がわかりづらかった買い食いパート
画像はNintendo Switch版『十三機兵防衛圏』より

というわけで、『十三機兵防衛圏』は気になるところもいろいろあるけど、立派な作品でした。

約21時間でクリアできたわけですが、崩壊編を進めるのが面倒で積みかけたのと、一部のアドベンチャーパートで進行方法がわからなかった以外はスムーズに遊べたのも嬉しいところ。

個人的にはゲームじゃなくても十分におもしろいように思いました。ゲームならではの部分が台無しになりはしますが、話もわかりやすくなるでしょうし崩壊編もやらなくて済むし、アニメならロボものとしての描写が増えるのでおもしろそうです。


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