ゴキ中対超速 銀対抗の研究
2月27日土曜日の研究会は、第47期女流名人戦第三局(2月7日)の30手目、△同飛の局面(下図)で指定局面戦をしました。超速対ゴキ中の銀対抗です。一見すると後手の飛車が狭く不安がありますが、研究してみると面白い手、勉強になる筋がたくさんありました。
(指定局面)
指定局面から、▲4五桂△4二角と引いた次の手が分岐でした。(実戦は、▲2四歩△同角▲9六歩△5二金左と進行)
①▲5五歩(図1)
(図1▲5五歩まで)
この▲5五歩は後手の飛車を取る狙いで、一番積極的な手です。後手としては、技をかけるタイミングです。
△3三桂▲同桂成△同角▲5七金△同飛成▲同銀左△8四桂▲6八桂(図2)
(図2▲6八桂まで)
こうなると先手有利(+700~800くらい)です。後手からの攻めは厳しくなく、先手からは▲2一飛の狙いがあります。
後手としては、手順中△3三桂がまずく、代えて、△3五歩(図3)といくべきでした。先手の飛車のコビンを狙うのがこの将棋の急所です。
(図3△3五歩まで)
上図から、▲5七金なら、△同飛成▲同銀左△3六歩と進みます。(図4)
(図4は△3六歩まで)
こうなると、先手は飛車を手持ちにしたものの、後手陣には打ち込む場所が2二にしかありませんし、打ったとしても△3一金のような手で桂香を拾えません。一方の後手には3七の地点を狙った攻めができ、また、上手く行けば4五の桂馬も取れそうな展開で不満はないでしょう。
また、図3から、▲5四歩△同飛▲3五歩(図5)と進めば互角の将棋です。実を言うと、▲5四歩はソフトが発見した手です。一度打った歩を突き出す上に飛車の捕獲を諦める手なので、なかなか見えづらい手です。
(図5▲3五歩まで)
②▲2四歩
指定局面から▲2四歩は自然な指し手です。①の展開では居飛車がなかなか飛車先の歩を突くタイミングがなかったので、早めに切っておくのは理にかなっています。
(指定局面以下の指し手)▲2四歩△同歩(図6)▲5五歩△3五歩(図7)
(図6△同歩まで)
女流名人戦第三局では、▲2四歩に△同角でしたが、後手の方はうっかりして△同歩と指したとのこと。角が質駒にならないものの働きが悪くなってしまいました。
(図7△3五歩まで)
ここから、実戦は▲5七金△同飛成▲同銀左△3六歩▲2三飛△4五銀▲4三飛成△5六歩(図8)と進んで後手優勢となりました。
(図8は△5六歩まで)
▲5七金が良くない手だったようで、代えて図7から▲同歩△3六歩▲2七飛(図9)と進むと互角の将棋でした。
(図9は▲2七飛まで)
②の展開でも△3五歩が有力でした。
③▲9六歩△9四歩▲1六歩
最後に紹介するのは先手にとっては消極的な指し方です。
(指定局面より)▲9六歩△9四歩▲1六歩△3三桂▲同桂成△同角▲5五歩(図10)
(図10は▲5五歩まで)
これは、▲1六歩は△1五角を消す意味。桂馬を手持ちにしたので▲5五歩と打って飛車の捕獲を狙っています。
(図10より)△7四桂(図11)
以下は▲7七銀△5五銀▲4五銀△5八飛成が一例で、以下△6五歩〜6六歩を狙うのが面白い手です。攻めの狙いがこの6筋攻めだけなので、受け止められると飛車金交換の駒損が響きそうです。
実戦は、図11より▲6八桂と打ってしまったため後手の攻めが止まらなくなりました。
④まとめ
▲5五歩として飛車を捕獲する狙いに対しては、△3五歩の筋で十分に対応できます。そのため、後手は飛車が狭くても慌てずに指せばいいでしょう。また、先手陣は薄いため、飛車と金の交換程度の駒得では勝ちにくいです。丁寧な指し回しが求められます。
▲5五歩と指さない展開が研究会で出なかったのは意外で、▲5五歩としないでゆっくり指す展開も有力だと思います。しかし、先手後手ともに局面の急所がわかりづらい将棋となります。
研究会で出た手以外にも、有力な手が多く面白い指定局面でした。