心身の安定

目の前に詩集がある。
死後に出版された。享年68歳。
私よりの17歳年上の人。
親しく交友したことはない。
しかし、一度、会合のため自宅を訪問したことがある。
詩を読むと、本人がどんな人か少し分かる。

本を読み終わったあとで、
この人と話してみたいなと、感想が起こるのは
私の場合は稀。
ほとんどない。

74歳になれば、だいたいの人が分かる。
話したい人がいなくなる。
困ったものだ。
引きこもりでも満足するようになる。

昨日読んだ、元検事総長の闘病記。
東大卒、終戦時は海軍主計小尉、
戦後22年、第一期司法修習生、
24年に東京地検検事に任官後、この道一筋。

検事時代は、超多忙の経験。
常に500件くらいの事案を抱えて、
毎日、20件以上の起訴・不起訴を決めてきたようだ。
寝る暇があったのだろうか。
本当に、国の治安維持に捧げた一生と云える。
まさに、勲章にあたいする人だ。

退職時には、妻に残せるお金がないという心配も。
清廉で金銭的な報いはない人生であったようだ。
それだけ、こころは強固だったようだ。

たぶん、この方に出会う人はすべて、
強い人格を感じ取ったのだろうと、思う。
強烈な印象を与える人だったのだろう。
私も生前、一度くらいは遠くから眺めてみたかった。
90点で生きる偉人のひとりだろう。

私の人生は、多忙という時期がほぼなかった。
いつも60点で適当にやっていた。
それでやっと、心身の安定が得られたのだが。


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