宇宙の真理と地上の天国

言葉はものごとを抽象化することで生まれます。
抽象化は人の脳の情報処理の特質の一つです。

人が使う言葉は、人の社会生活を円滑にする必須の道具です。
カラスの社会でも、数百種類の鳴き声があるといいます。
言葉は記号です。ある意味を伝える道具です。

ある意味とは、社会生活に必要なことがらです。

言葉は、ある事柄を抽象化して概念化されたものです。
言葉は、指し示す対象やものごとを抽象化・概念化して、意味を伝えます。
抽象化とは、具体的な事象が含む無数の要素を削ぎ落して、重要な要素だけに限定する操作です。
簡単に言えば、枝葉を切り落とし幹だけにする作用です。

例えば、リンゴは無数にあるが、
共通の要素を集めてリンゴなる言葉・概念をつくります。
共通の要素を集めたものだから、実際に特定の対象を指し示す訳ではありません。
リンゴなら、どれもリンゴです。

例えば、人の名前も言葉です。
その人を特定する記号です。
もし、整形し顔を変え、性格も変え、生きる場も変えて、
別人になることは充分に可能なので、
名前が、特定の人を限定するには限界があります。
偽名でも生きることが可能です。
名前は便宜的な呼び名にしかすぎません。
昔の人は、年齢と共に沢山の名を重ねていきました。成長魚のように。

特定の対象の属性や要素をすべて数え上げて、
対象像の全体を記述し指し示すことは人には不可能です。
人ができるのは、一部の要素を指し示すだけです。

言葉・概念に限界があるのは、このためです。

例えば、どんな事象も、内部に無数の要素をかかえています。
さらに、無数の要素の間にも無数の関連があります。
そして、外部の無数の要素ともつながっています。

故に、言葉や概念という稚拙な道具に使っていたのでは、
人はどんな事象も全体像をつかまえることができません。

人がつくる科学では宇宙の真理を極めるのは不可能でしょう。

人ができるのは、ある要素や性質を浮かび出すだけです。
それによって、自然の一部なら説明可能になります。

例えば、太陽の周りを回る惑星の軌道などは小さな誤差で、予測可能です。

言葉や概念をつくる過程で、人は多くの要素を削ぎ落しています。
抽象化とはそういうことです。

無数・無限な全ての要素を集め、
宇宙全体の部分部分の相互関連する全ての繋がりの全体像を再構成するなどは、
人の能力を超えています。

言語や概念(数学を含む)のような幼稚な道具しかない人には、
宇宙の真理や地上の真理を手に入れることはもともと不可能なのです。

人の一生は短い。宇宙の真理を知ることはできないが、地上に天国をつくることはできます。


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