現金はどこに消えた

アメリカのドルは、世界中で通用する通貨。
FRBによると、米ドルの流通高は1兆5千億ドル(約200兆円)。
そのうち半分が国内に留まる。
日本の円は、米ドルほどの信用はない。ほぼ全額が国内だろう。

円の紙幣流通量は、約110兆円。
硬貨類が約5兆円。
アメリカに比べてGDP比では2.5倍になる。

日本も1995年までアメリカと同レベルだったが、それ以後急増した。
日本は、現金信仰がダントツで高いようだ。

110兆円のなかで、1万円札が約90%。
高額紙幣が圧倒的。

これらは、国内のどこにあるのだろう。

企業の場合、通常、現金管理効率化は基本。
目的なき保有などはありえない。
金庫に寝かすことはありえない。

次に、小売業の保有する現金(レジの中にあるもの)。
アメリカでの調査で、通貨流通高の2%未満という。

銀行の金庫に預けられたもの、銀行に運ぶ途中のものを加えても、
わずか増えるだけだろう。

銀行の場合も同様。
ATMに入っているもの、金庫内のものを加えても、大きな量にならない。

レジや金庫の中ではないとしたら、
紙幣流通量の大部分は、どこにある?

2008年、日銀は、タンス預金が30兆円を超えると推計した。
その後の紙幣放出の増加から、さらに増えていると考えられる。

日本で、大口取引は口座間の資金移動が普通。
現金が使われるのは、小口だけ。
つまり、庶民の買い物だけ。

故に、110兆円の紙幣の大部分は使われていない。

やや多めだが、5兆円分が企業や商店のレジや金庫の中と考え、
約半分の50兆円近くはタンス預金と推定し、さて、

残りの55兆円は、どうなっているのだろう。

アメリカの例だが、
個人消費者の現金保有に関する調査がある。

身に着けている現金、家や車に置いてある現金の合計は、
アメリカ国内にある現金の約13%という。

ユーロ圏の場合も調査がある。
個人と企業の現金保有高は、通貨流通量の約15%という。

日本だけは、ダントツ高い。タンス預金だけで約50%。
ゼロ金利と治安がいいことで現金が好まれるのか。

しかし、残りの55兆円は、どこに消えたのだろう。

現金は決済に時間がかからないと思う人がいるかもしれない。
つまり、便利だと。

今、モバイル決済の方が確実に早い。
デビットカード決済は現金とほぼ同じ。
クレジットカードは遅い。
小切手はさらに遅い。

現金は、毎日サイフの中身を確認しなくてはならない不便がある。
小売店主は、現金を数えたり銀行に運んだりと手間がかかる。
現金の取引は不便なのだ。

中国や韓国や北欧の国は、現金離れが急激に進んでいる。

日本も最近になって、やっと腰を上げ始めたが。

つづく


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