見出し画像

ルパン三世アニメ化50周年~「核心と革新」 NOT CHANGE, BUT NEW.

『ルパン三世 TVアニメ化50周年記念展』

画像6

三越伊勢丹で開催された、『ルパン三世アニメ化50周年記念展』。正式名称は『ルパン三世 核心と革新』。小学校2年生のときからのルパン三世ファンである私ですが、山田康雄さんが亡くなってから「自分の中でルパンは終わってしまった…」などと勝手に冷めていました。そう言いながらも、新作をやっているとつい見てしまってきたわけですが…。

というわけで、ルパンファン歴〇十年、50周年記念祭には行かねば! と、この機会に足を運んだ次第です。

展示ブース内では、ルパンがアニメ化されてからの50年を、時代背景がどのようであったのかといった社会情勢や文化を解説するとともに、「その時代のルパン」の特徴が書き連ねてありました。

アニメ化されたのが1971年。まだ海外との行き来も盛んでなく、「ルパンを捕まえてヨーロッパへ行こう」の回に象徴されるように、外国が遠い時代でした。国内外の出来事、ヒッピー文化の流行や安保闘争などから始まり、それらが作中にも反映されている様子が展示されています。

それが集めも集めたり、50年分! 10~20年くらい前だと結構忘れてる時代もあったりして、「あーそういえばそうだった」と思い出したりして。

一番の驚き

備忘録的に、印象深かったことをメモします。

「作画~顔の非対称」

いわゆる「ファーストシリーズ」「TV第1シリーズ」「Part1」などと呼ばれる、緑ジャケのルパン。その作画監督の大塚康生氏の原画や設定資料集も展示されていました。その中で、「日本人は庭園や着物の柄付けなど、シンメトリー(対称)ではないものに美しさを感じる」精神があると言って、ルパンたちキャラクターの顔も、左右をあえて非対称にしていたというのに驚き。

ルパンと不二子、それぞれほぼ正面を向いていると見える顔の中心に線を引き、左右対象の目の位置に、楕円形の円を置きます。すると、絵の方では、目の位置も形も左右対称にはならず若干のズレがあるのです。

ルパンの顔、特に目の形は左右で同じではないというのはよく知っていましたが(モンキー・パンチ先生の原作でも結構そうだし)、不二子の顔までそのようにしていたとは新しい驚きでした。

古今東西一般的に、顔はシンメトリーであるほど美人だということになっていますが、女性の顔をあえて崩して描くというのは結構画期的ではないでしょうか。しかも、そうしてなおかつ美人を保つという、すごい技です。

ものすごくレベルが高いです。正直、ここに一番驚嘆しました。

また、作画設定では、洋服のシワや袖口の形などの細かい点まで指定されています。特にジャケットの肩は窮屈に見えないような形とシワの描き方を指定し、「こういうのはNG」という比較絵付き。

そしてもう一つ感心したのは、これです。

「設定資料の熱量の大きさ」

特に最初のファーストシリーズを始めるにあたっての、「これまでの漫画とは違う、全く新しいものを創り出したい!!!」というとてつもない熱量を感じる企画書が非常に心を打ちました。

今、あれだけ熱く新企画を語れる人(またはチーム)がどれだけあるだろうか? と自問自答してしまいました。まだ何の形にもなっていない段階です。にもかかわらず、「全く新しいものを自分たちが作り出す!!!」という、爆発的な気合に圧倒される企画書でした。

赤ジャケのセカンドシリーズ(Part2)では、ファーストシリーズのような「国内某所」みたいな日本国内だけではすでに飽き足らず、日本限定では活動範囲が狭すぎるということから、世界へ幅を広げる点が企画の目玉でした。

実際、毎回色々な国を股にかけるところがグローバルで、子供心に憧れでもありました。「ベネチア超特急」の回なんか好きです。

サードシリーズになると、泥棒稼業からは一旦距離を取っている面々、との設定からまた新たに物語が始まります。次元が戦場カメラマン、というのはなんとなく納得できる気がします。

そういった企画書が残されているのは貴重な資料ですね。

今回の展示企画のタイトル、「核心と革新 NOT CHANGE, BUT NEW.」に表れているように、ルパン三世という作品は、従来あるものを改造するのではなく、「新しいものに挑戦」という気概が熱く感じられました。

この企画展に感じたことは色々ありますが、特にこれら2つの点が強く印象に残りました。

画像2

ファッション

そして、時代背景を写す鏡として顕著なのが、不二子のファッション。

ファースト時代のサイケな70年代的なところから、Part2ではエレガント路線、Part3ではフレンチカジュアルに。そこまで気にしていませんでしたが、「そういわれてみれば、フレンチカジュアルだわ」と、改めて認識しましたよ。ファーストシリーズ(Part1)では時代の先端をいき、一番認知度の高いセカンドシリーズ(Part2)ではミニスカートが象徴的でしたが、Part3ではスカートはふわっとした感じが多く、ファッションの変遷を感じます。

歴史(時代)を反映

その後、黒電話から移動式電話(出現当初は、約3Kgもある肩掛け式)が最新の通信機器である時代や大型コンピューター時代を経て、パソコン・インターネット・デジタルデータ、スマホが当たり前の時代へと。

絵コンテも、最初は全部手書きで絵とセリフ、ト書きが書かれていたのが徐々にデジタル化されています。少しは楽になるのかな。コンテの手描きって、見るからにたいへんそうですよ…。

台本もありました。登場人物一覧には、主要キャラは活字印刷で声優さんのお名前が印刷されていて、サブキャラは台本作成時にはまだ決まっていないので、あとから書き込まれるという形です。活字ひとつとっても、昭和っぽさを感じて、よく保存されていたなあと思います。

キャラクター人気投票

画像1

ブース外には、登場人物の人気投票がありました。

事前にそれは知っていたので、誰に入れようかとあらかじめ考えていました。選挙のように氏名を書く形式だったらプーンに入れようと思ってましたが、実際にその場へ行ってみると、すでに候補者が10人選ばれていて、自分の投票したい人物に赤いシールを貼るといった形でした。

これを見て、俄然心が動いてしまったのは…!

ミスターXです。Part1の初回から始まり、その後もPart2シリーズでたびたびルパンを亡き者にしようと、気力と財力を超絶フル稼働する人です。

スピードウェイを作ってモーターレースを開催したり、惜しげもなく豪華客船を丸ごと使ってみたりなど、スケールが半端無いです。この執念と、お金に執着しない潔さは私も欲しいです。

私が行った日はちょうど展示期間の中間くらいのときで、ミスターXへの投票も魔毛狂介へ迫る勢いで割と伸びていたようですが、Zenitterによると最終結果では1位はパイカルだそうで、ちょっとがっかり。まあ、ルパンがどう思っているかは別として、みんな自分がルパンの最強ライバルだと思っているでしょうね。

音楽

大野雄二さんの手書きの楽譜なんかも置いてありました。いくつものパートをささっと一気に書き上げた、といった感じで、楽譜にも非常に勢いを感じました。全部のパートが頭の中で構成されるんでしょうね。

また、「最初の3年間で良い曲ができてしまった」との大野氏ご本人の言葉に、「ほんと、そうですよね~」と納得。

大野氏ご自身も、「ルパン三世のテーマ」は気に入っていて、とてもいい曲だと自分でも思う、とのことです。仰る通りです。

ちなみに私は、最初のオリジナルと言ってもいい「ルパン三世のテーマ '78」が一番好きです。あのイントロと、2番に入る前の間奏、そしてキレの良い終わり方。個人的にはこれがベストだと思ってます。

その場に掲載されていた大野氏のコメントを読むと、Part3のオープニングテーマが「セクシー・アドベンチャー」だったのは意外だったようです。しかもこれは男性が歌っている、割と特殊な曲だとの認識をお持ちのようでした。

ちょっと残念だった点

音楽は、ファーストシリーズの 山下毅雄氏にも触れてほしかったなあ。あと、チャーリー・コーセイ氏の歌。

そもそも、不二子がジャンプスーツ着てハーレーに乗ってるイメージが定着したのって、ファーストシリーズのエンディングが元になってません?

テレビシリーズ「Part6」へ向けて

最後の出口前で、今週末から始まるPart6シリーズのティザー映像が流れていました。ナレーションは、小林清氏じゃなくて大塚明夫氏でしたね。違和感はなかったです。でも小林さんがルパン一家を引退なさることで、全メンバー入れ替わってしまったことになり、寂しさひとしおです。

今回、シャーロック・ホームズが出てくるですと??? ホームズファンである私は、必見でしょうか。ストーリーは推理ものっぽいですよ。

脚本を担当される方々のコメントも掲載されていました。皆さん、意欲にあふれていて、良いものを作ろうという気持ちが感じられました。

その他の展示品

モンキー・パンチ先生の、ルパン以外の作品一覧が網羅されていました。こんなに多くの作品を描かれたんだなとビックリ。全部まとめて出してほしい…。

おまけ~ガチャ

今回のチケットは、普通の券と「特典付き」の2種類ありました。特典付きだと、ガチャが一回引けるのと、クリアポスターがおまけとしてもらえました。

画像3

画像4

画像5

そんなわけで、これだけの資料を集めたり、展示物として作ったりするのにどれだけの時間と労力がかかったのか計り知れない展示企画でした。緊急事態宣言下であまり大々的に行えなかったのかもしれず、残念。2017年の、新宿伊勢丹での「公開捜査」という名のルパン展のときは、ものすごい人の賑わいでしたから。

また、新しいルパンに会えるのを楽しみにしています。

この記事が参加している募集

アニメ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?