時差ぼけとレスキュー花束
パリから帰国し、はじめての時差ぼけを経験した。日付が変わる頃に寝付けるまではいいが、二、三時間で起きてしまい、朝方まで眠れないのが辛い。睡眠リズムが治らないまま、四日ほど経ってしまった。
睡眠の質が悪い日々にストレスを感じていた、とある日のこと。スーパーへ行く途中の狭い路地の片隅に、花束が二つ並んでいた。
ポップにはRESCUE(レスキュー)と書いてあった。傷んでしまってロスになりそうな花束。以前からその狭い路地の先にお洒落な花屋があるのは知っていたし気になってはいたが、買ったことはなかった。
落ち着いた色味の赤い花と、枯れかけてダークオレンジがダークブラウンになりかけている花。一目見て気に入った秋っぽい色味の花束は、110円だった。迷わず購入した。
家に帰って、手頃な器に水を張ってその中で茎を切った。なんとなくでやっているので、正しいかはわからない。お気に入りの花びんに飾った。
時差ぼけで落ち込んでいた私を、さりげなく元気づけてくれる優しい花束。花束に癒されたのが原因かはわからないが、その夜は久しぶりに途中で一回も起きずに、とてもよく眠れた。
翌日の友達の結婚式では、式場に飾られていたお花をいただいた。帰宅して飾ると、リビングのテーブルが一気にお花だらけになった。
もちろん(と言ったら自分で購入した花束に失礼かもしれないが)、結婚式でいただいたお花の方がボリューム満点で、華やかさがあった。
でも、時差ぼけで苦しんでいた前日の自分には、ちょっとしょぼくれた花束がお似合いだったように思う。
そして、レスキュー花束を購入してから四日、結婚式から三日が経った。しゃっきりしていた結婚式の花束も少しずつしおれてきて、儚さを感じる今日この頃だ。
それぞれの花束の、傷んだお花を切ったり落ちた枯葉を拾ったりしながら、まだゆったりと楽しんでいる。レスキューされたのは、私のほうだった。
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