No.007 空の中 有川浩 著

基本的に最近読んだ本の感想を書いているのですが、No.が7の倍数の時は以前読んだ本の話をしようかなと思います。

というわけで今回は有川浩先生の自衛隊三部作より『空の中』の感想です!!有川浩先生といえば、『図書館戦争』や『三匹のおっさん』などが有名ですよね。私もその2つの作品も大好きなのですが、今回は私が有川浩先生にのめり込むきっかけになった『空の中』の感想です。

200X年、謎の航空機事故が相次ぎ、メーカーの担当者と生き残った自衛隊パイロットは調査のために高空に飛んだ。高度2万、事故に共通するその空域で彼らが見つけた秘密とは?
一方地上では、子供たちが海辺で不思議な生物を拾う。大人と子供が見つけた2つの秘密が出会うとき、日本に、人類に降りかかる前代未聞の奇妙な危機とは────すべての本読みが胸踊らされる、未曽有のスペクタクルエンタテインメント!!
(出典 角川文庫 あらすじ より)

〇“白鯨”

『空の中』は冒頭でふたつの航空機事故を描いたあと、海辺で得体の知れない生物を拾った高知県に住む高校生、斉木瞬、そして、航空自衛隊岐阜基地に原因不明の事故の調査員としてやってきた春名高巳のふたつの視点から語られます。

高巳が事情を聴きにやってきた相手は、自衛隊機事故の当事者であり、目撃者でもあった戦闘機パイロットの武田光稀三尉といいます。

この光稀、という名前や戦闘機パイロットというところから、男だと思うじゃないですかー。

ところがなんと!女性なんです!!

この字面で、みき、と読みます。めちゃくちゃ可愛い名前ですよね!しかもツンツンしてて、春名高巳との会話はにやにやが止まりません!

話が進み、航空機事故の原因は高度二万メートルに浮遊する超巨大生物であることが判明します。次第に名前を持たないその生物を“白鯨”と呼ぶようになります。

驚くべきことにこの“白鯨”は高度な知能を持っており、無線などで空を流れていた言葉を繋ぎ合わせて学習し、人間と話せるまでになっていたのです。

この“白鯨”という生物の設定がすごく好きなんですよ!!まず、とにかくスケールがでかい。それに、長い時を一世代で生きているその生態系。

ちょっとこう、血が騒ぐ感じがします。

中盤ではこの“白鯨”が突如、空に現れたことで日本全体がパニックに陥ります。人間は”白鯨”を攻撃し、それに対して“白鯨”は人間にはもう為す術のない圧倒的反撃をします。

高巳は人間が”白鯨”と戦う意志がないことを伝えたり、取り決めや方針を了承させるために言葉遊びのような会話をするのですが、これもすごく面白いです。

一方で、瞬が海辺で拾った生物こそ、ただひとつの状態であった“白鯨”から分離してしまった“白鯨”の仲間なのでした。

ここで高巳のいる大人サイドと瞬のいる子供サイド、それぞれの話が繋がるんです。初めて読んだのは小六の時でしたが、思わず歓声を上げたことを覚えています。

瞬はこの“白鯨”にフェイクと名前を付け可愛がりますが、直後に航空自衛隊の戦闘機パイロットであった父が事故で亡くなります。

この事故の際、ともにフライトをしていたのが武田光稀三尉でした。

瞬は父が亡くなったことへの喪失感を埋めるようにフェイクに傾倒し、それを瞬の幼馴染の天野佳江は不安に思います。瞬が“白鯨”の攻撃から佳江を守るためにフェイクは“白鯨”の仲間でありながら“白鯨”を攻撃し人間を守る唯一の存在となりました。

佳江の不安は的中し、“白鯨”のせいで瞬と同じく父を亡くした少女、白川真帆の運営する、”白鯨”の排除を望む団体に遺族として参加することになるのです。

ここまで一気に流れを書いてきましたが、複雑に絡み合うストーリー展開、たまんないですね~!未知なる生物といったスケールの大きい物語を支える登場人物たちも素敵でした。

でもあまりにスケールが大きすぎて、私が語るのはここまでで限界のようです。続きが気になる方はぜひ読んでみてくださいね!

あっちもこっちも繋がってて、しかもラブ要素もありつつ、っていうのが本当に最高です!!特にエピローグの高巳と光稀の会話はキュンキュンしちゃいました!

このふたりのお話は『クジラの彼』という連作短編集にもあります。感想書いてたら読みたくなったので、ちょっと読んできますね~!

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