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現在・未来の従業員のトレーニングに人工知能を活用する方法 〜AIを活用した製造業における知識の収集・移転〜

SRIは先日、日本の製造業向けにウェビナーを開催しました。SRIの情報およびコンピューティングサイエンス部門のプレジデント、Bill Markによるビデオプレゼンテーション全編(日本語)をご覧ください。AIによる知識収集技術の、実際のデモンストレーションやQ&Aなどを収録しています。

製造業における知識移転の重要性

新たな労働力が産み出されるにつれて、新たな働き方が生まれています。新入社員が製造会社へ入社をして他の従業員が退職すると、その二つの世代間に知識のギャップが生じます。生産が止まってしまうの潜在的な可能性を予測して準備することは非常に重要であり、不可欠な製造スキルと重要な専門知識を取得・周知する手段を見つけることは、多くの企業が最も優先したいと考えている目標です。新入社員への効果的な知識の移転や、既存の従業員のクロストレーニング(技術の共有とレベルアップ)は、生産性、効率、イノベーションを維持し、事業のスピードや適応性を高める上で不可欠となっています。

2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、多くの企業で労働力が減少し、スキルと知識の喪失が生じたことから、何らかの方法で知識を収集しておく必要性が高まりました。一方で今回の世界的流行は、デジタルを通じた人間対人間、人間対コンピューターのやり取りの有効性を浮き彫りにしました。「トレーニング、再トレーニングは日々の製造業務の一部ですが、新型コロナ流行後のビジネス活動の再開においては、労働時間管理と生産性維持のいずれにも負担がかかることが明確になりました」と、SRIの事業開発およびグローバルパートナーシップ部門エグゼクティブディレクターのCsaba Szaboは述べています。「物事の進め方だけでなく、その作業を選択した理由、そしてその背景にある原則や知識を明確に示してくれる、すぐにアクセス可能な研修資料のデータベースを準備することで、大幅に生産性を向上できる可能性があります。」

そこで重要になるのは、効果的に伝承できる知識の種類を把握することです。「形式知」は客観的に文書化され、マニュアル、文書、動画などの形で保存されます。一方、「暗黙知」はより曖昧です。経験から生じるものであり、直接伝えることには困難を伴います。この種類の知識は書面で記録されるというよりも、頭の中で半ば無意識に考えられたり、現場で感じられるものである場合があります。たとえば、熟練者は機械が発する音などのとても微妙なものから、問題や誤作動を特定することができるということなどです。

いずれの種類の知識にも、情報を収集・分析し、そして効率的かつ効果的に他の従業員に伝えていくメカニズムが必要です。

AIを活用した知識移転のメリット

知識移転の一般的な方法は、マニュアル、ビデオ、または対面式トレーニングを利用することですが、このような従来型の方法には多くのデメリットがあります。分厚いマニュアルは検索や更新が難しく、ビデオは角度や編集面の制限があり、対面トレーニングは労働集約的で費用がかさみます。そして最も重要な点として、これらの方法は「形式知」には最適ですが、「暗黙知」の捕捉にはあまり効果的ではありません。

SRIは、AI(人工知能)を使用して「形式知」と「暗黙知」の両方を捕捉するシステムを開発しました。システムは多数のセンサーからデータを収集し、AIでデータを分析します。その結果、さまざまな手法を使用して知識を移転することが可能になる、インデックス付けされた検索可能なナレッジベースが得られます。いわば、AIを用いたデータの収集は経験豊富なオペレーターの知識を抽出する包括的な方法であるというわけです。SRIはその実現のために、以下の3つの構成要素から成る知識移転のAI対応エコシステムを開発しました。

1. AI分析:AI分析により、経験豊富な従業員がタスクを実施する際の作業を一貫して記述するモデルを生成し、センサーデータをマッピングします。

2. 拡張入力:モデルとデータから得られた分析を、体系的なインタビューと実地検証で補います。

3. AIを使用したクロスリファレンスの知見:最後に、さらにAI機能を使用して知識を強化します。この機能はデータを分析して情報の主要な「かたまり」を見つけ出すことが可能であり、分析結果はナレッジベースと相互に紐付けされ、さらなる知見につながります。

SRIのAI技術が知識を取得する方法

多様な生産方法とスキルセットを備えた企業は、規模を問わず、AIを通じたSRIの知識収集手法を活用することができます。そのプロセスはまず、知識移転用のデータベースを構築することからプロセスは始まります。ビデオ、ボディカメラ、その他のセンサーが、オペレーターや機械の位置、動き、音を記録します。さまざまな時点の状態に関するデータを記録するために、追加のセンサーを機器に搭載することも可能です。

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データはその後、現場内の様々なオブジェクト(道具や機械など)を検出し、オペレーターのポーズ、手の動き、器具の動きを評価するディープラーニングベースの手法を使用して、人間が理解できる知識に統合されます。マニュアルの文章や(機械音、オペレーターの会話などを含む)環境内の音を理解する上でもディープラーニングは使用されます。さまざまな種類の分析を組み合わせることで、更に理解を深める事が可能です。たとえば、音声認識が未知の単語(おそらくはタスクや、ある工場フロア特有の言い回し)を検出した場合、視覚的に検出された進行中のアクティビティに関連付けて、単語の意味の候補を提案してくれます。

このような作業の結果、知識をインデックス付けしたナレッジベースが作成され、さまざまなトレーニング手法にすぐに利用することが可能になります。

適応可能なトレーニングを必要な場所で

トレーニングは、その会社が必要とする、あるいは希望するサイズと時間で実行可能です。また、オンラインとオフラインの両方で実施できます。構成されたナレッジベースは、従業員のスキルを評価しスキルトレーニングで有意義なフィードバックを提供するためにも利用可能です。

たとえば、ナレッジベースを通じて以下をサポートできます。

• 「マイクロメータが使用されている場所を表示」のようなきめ細かい検索により、タスク実行に必要な特定の情報を従業員が簡単に発見。

• ジャストインタイム(JIT)、オンラインおよびオフラインの指導カリキュラム用にカスタマイズされた研修資料を作る。

• バーチャルの回路図を実物の回路基板に投影して、回路のレイアウトの理解を促進するといった拡張現実(AR)への応用。あるいはARをアニメーション化し、一連の動作等を表示することも可能(機器のメンテナンス方法を表示するなど)。

実際の製造業の現場において、研修を受ける従業員は両手を使用していることが多いでしょう。SRIの自然言語処理(NLP)技術が提供する会話インテリジェント会話機能とARを組み合わせれば、ARを使いながら質問することができます。ARソリューションの導入は、遠隔地や、研修/情報技術のサポートが必要な中小企業にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

SRIのAI技術のさらなる活用

SRIは、製造業向けAI対応技術の世界的に著名な研究開発ベンダーです。知識の収集・移転だけでなく、以下のような人工知能の拡張技術を提供します。

● 工場環境向けのモバイル自律型ロボット
● 製造環境の適応可能な操作
● 機械の異常と故障の検出

SRIは自動車製造業の日本企業と協力して、業界の伝統的な職人技の知識の捕捉に取り組みました。 「次世代のAI機能を活用することで、それぞれの動きを観察し正確なアウトプットを測定して、その結果を用いて未熟練の従業員を繰り返し研修し、最も優秀な従業員のレベルで業務を行えるよう支援します」とSzabo氏は述べています。

現在の製造業は、AIによる知識取得に非常に適した環境になっています。新たな労働者と新型ウイルスの流行が世界中で長期的影響を及ぼす一方で、生産の中断を最小限に抑え、貴重なスキルセットを維持することが欠かせません。

「次の段階の大きな生産性向上は、AI機能で人間の作業を強化することで実現できるでしょう。たとえば、暗黙知と形式知の両方による専門知識を取得し、検索しやすい『YouTubeスタイル』のトレーニングプラットフォームですぐに利用できるようにすることが考えられます」とSzabo氏は語っています。「こうした技術により、あらゆる製造機能の総合的な柔軟性が向上するだけでなく、トレーニングによるダウンタイムも短縮することが可能です。」

SRIについて詳しくは、 https://www.sri.com/jaをご覧ください。

このブログの原文はこちらのサイトにてご覧いただけます: https://www.automationalley.com.

筆者:Csaba Szabo, Executive Director of Business Development and Global Partnerships, SRI International

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社

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