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【詩】プリンスメロンとセキセイインコ

ズックを蹴散らして玄関から走る
部屋に台所にベランダに
おばちゃんを探して「ただいま~」とさけぶ
共働きの両親がさびしい思いをさせないようにと
小学一年のわたしを預かってもらっていた安藤のおばちゃんち
我が家から三秒 放課後の第二の家
「おかえり」も聞かず 言わせず ぺらぺらとおしゃべりスタート
国語の教科書、上手に読めたって褒められた
算数のテスト、全然わかんなかった
しばちゃんがツンってしたの なんかやだった なんかしたかなわたし
ワタナベ君は掃除当番さぼるんだよ スカートめくりもするし
縫い物しながら
茶碗洗いながら
植木鉢に水やりながら
おばちゃんはうんうんって聞いてくれた
皮がつるっとしているプリンスメロンを切ってもらってむしゃむしゃ
内緒だよって
近所の喫茶店 ふたりで食べたプリンアラモードは魔法の国の食べ物だと思った
おばちゃんは小鳥の世話が得意 部屋中に鳥かごがある
セキセイインコと十姉妹がわたしのセンパイ
新しい水にして 敷いた新聞紙交換して 餌あげて
指にのせて かごから出して 肩に移動させて
宿題するわたしを見守るセンパイ
ちょっぴりの重みが頼もしくて誇らしかった
おばちゃんは穏やかでのんびり屋
くるくると動くわたしに困っていただろうなぁ
転ばないように もし転んだら擦り傷に赤チンつけられるように
泣かないように それでも泣いたらすぐ抱っこして背中さすれるように
笑っていたら一緒に笑ってくれて
ママの顔みたら突風みたいにとなりの家に戻るわたしを
苦笑いして見送ってくれたんだよね
どんな大人になるのかママと同じくらい楽しみにしてくれて
どんな大人になったとしても父と同じくらい変わらない愛をくれる人
わたしがメロンとプリンを好きなのは
おばちゃんが食べさせてくれたから
わたしが小鳥を好きなのは
おばちゃんちでたくさん遊んだから
わたしが人を好きなのは
おばちゃんがいつもいてくれたから
それ以外にどうやっても説明がつかない


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