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「闘病生活をするとき(支えるとき)、知っておきたい相談先」

社会保険労務士の山地です。

人が生きていくうえで避けては通れないものがあります。
それは病気になる、ケガをする、ことです。

どんなに健康な人でも生まれてから亡くなるまでの間、ただの一度も医療機関を受診したことがないという人はおそらくいないでしょう。

風邪をひいたり、歯が痛んだり、頭痛や花粉症など、ちょっとした身体の不調で医療機関を受診するのは日常的な出来事です。

これがもし、
予期せず、急病になって救急車で搬送された
交通事故に遭い、緊急入院した

というようなことになると本人のみならず、家族も心配になります。

どのような治療をするのか?
元通り、元気になれるのか?(職場復帰できるのか?)
治療費はどのくらいかかるのか?
など


私は母を膵臓癌で亡くしました。
入院して治療を受ける前はごく普通に日常生活を送っていました。まさか63歳でこの世を去ることになるとは思ってもいません。まさに青天の霹靂でした。

身体に異変を感じ、近所の開業医さんを受診すると緊急入院するように言われました。本人も驚きましたが、私も生まれてこのかた家族が入院したことなんて1度もなかったので当初はドキドキしました。

いろいろ検査をしましたが、膵臓癌と診断されたのは入院してからひと月以上も経った頃でした。診断の数日後に受けた手術は14時間にも及び、術後しばらくの間は個室に入りました。

後日、病室に届けられた医療費の請求書を見た私は一瞬、絶句しました。

・・・

保険適用される基本診療費の合計金額は、1,395,000円でした。

母は当時63歳でしたから、30%負担で418,500円の自己負担金になります。

どうやって支払えばいいのか?


幸いなことに母は「被爆者健康手帳」を持っていました。

これは原爆が投下された時、広島市や長崎市等で被爆した人に交付されるもので健康保険証と一緒に提示すれば医療が全額公費で受けられるのです。

あ〜、よかった。(´▽`) ホッ
おかげで支払ったのは個室代ほか、37,000円余りで済みました。

しかし、被爆者健康手帳を持っている人はほんの一握りの人だけです。
ご存知のかたもいらっしゃると思いますが、こんなときに利用していただきたいのが「高額療養費」です。

個人が負担する医療費の自己負担金には上限額が設定されています。
自己負担金の上限額は所得の多寡により決まります。
高額療養費は1か月の医療費が自己負担金の上限額を超えた場合に保険者に申請することにより払い戻されます。

仮に母が高額療養費を利用した場合の自己負担金を計算してみます。
当時(2002年)の制度では、所得区分が上位所得者、一般、住民税非課税世帯の3区分でした。

一般区分で
63,600 + (1,395,000-318,000) × 1% = 74,370円
個室代等とあわせても、111,370円です。(418,500円より、かなり負担が軽減されます)

現在の制度では、
70歳未満の方の場合だと所得区分がア〜オの5段階に分かれています。

たとえば、
お給料が月額27万円未満の方(区分エ)ですと、57,600円
お給料が月額27万円以上〜51万5千円未満(区分ウ)の方の場合は、次の計算式で求めます。
80,100円+(総医療費※1-267,000円)×1%
※1総医療費とは保険適用される診察費用総額(10割)のことです。


入院治療を受けるなど医療費が高額になりそうであれば、事前にご自身が加入している保険者(協会けんぽ、健康保険組合、市町村国民健康保険など)に「限度額適用認定証」の申請をし、交付を受けて医療機関の窓口に提示すれば上限額を超えて支払う必要はなくなります。


医療費の問題はクリアしても、ほかにも悩みはいろいろありました。

最初の入院治療は3か月にも及び、亡くなるまでに全4回入退院を繰り返しました。手術を受けても進行癌であったため常に病状に一喜一憂していました。

予後(病気の経過とその先の見通し)についてある程度知らされていても、

それでも今後どうなるのか?
患者である母にどのように接してやるのがよいのか?
家族として何かしてやれることはないのか?
どんなことに注意して生活すればよいのか?
などなど、

家族としての悩みは尽きません。

入院中は回診があっても、診察や処置が終わるとまるで潮が引いてく行くように主治医も看護師もサーッと病室から出て行ってしまいます。聞きたいことがあっても、相談したくても、声をかける間もなく取り付く島もありません。

医師にも看護師にも相談できません。それでは誰に相談したらいいのか?

この病院の中に誰か話を聴いてくれる人はいないのか?

患者や家族が相談できる相談室のようなところはないんだろうか?

私は広い院内をくまなくあちこち探して歩きましたが、見つかりませんでした。
もしかしたらあったのかもしれませんが、見つけられなかったのは事実です。

今でこそ多くの診療科から成る総合病院であれば患者相談窓口を設け、外来など患者さんたちの比較的よく目につく場所で広く開放している病院はありますが、当時は今ほど一般的ではなかったと記憶しています。

現在は患者さんが高齢化しているため、治療が終わって退院していいと言われても自宅で看る人がいないと困るご家族が圧倒的に多いです。病院としては早く退院してベッドを空けていただく必要に迫られます。退院後自宅に戻って生活することが困難なら「相談室」に行くよう勧めます。患者のためではなく、病院のためです。

おそらく当時からこのような傾向はあったのだと思いますが、母の場合は私が仕事を辞めて自宅で看ることになっていたので、病院は困りません。困っている私たちに相談室が紹介されることはありませんでした。


この患者相談窓口ですが、名称は病院によりいろいろです。

医療福祉相談室
患者支援センター
地域連携室
など
(※がん相談支援センターを併設しているところもあります)

いずれにしても、
医療費が高額になりそうなとき、どうやって払えばいいのか?
(高額療養費以外にも障害者の方や難病患者さんのための助成など、医療費助成はいろいろあります)
治療が終わって退院していいと言われても自宅での生活は困難・・
後遺症や手術の結果、身体に障害が残ってしまった・・
介護が必要な状態になった・・
治療を続けながら仕事に復帰するためにはどうしたらいいか?
などなど


若い人や日ごろから健康で医療機関をあまり受診する機会がなく、日常生活に支障がない人ほど、

イザというとき
どうしたらいいのか?
どこに相談したらいいのか?

わからずにパニック状態になってしまいます。

今はスマホ、パソコンで検索すれば簡単に情報にアクセスできる時代です。

しかし、
今、入院している
今、診察を受けている

という方であれば、スマホに頼るよりも病院の医療福祉相談室等に駆け込んだほうが、早く正確に対処できます。

病気やケガがきっかけで起きてくる様々な生活課題を相談する窓口をぜひ知っておいてください。

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