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「通勤経路上に、誘惑はありませんか?」

社会保険労務士の山地です。

前回は出張中に交通事故に遭ったら労災になるのか?というお話をしました。

言いそびれましたが、出張は会社の命令に基づいて出かけた用務先で仕事をするため、出かけてから帰ってくるまのすべてに業務遂行性が認められます。

このため途中で食事をするという行為も業務に付随する行為として、通常は「業務災害」と認められるのです。

さて、今回は通勤災害についてみていきましょう。

通勤災害とは通勤によって労働者が被った傷病等をいいます。この場合の「通勤」とは就業に関し、一般的には住居と就業の場所との間の往復であり、「含理的な経路および方法」で行うものとされています。

合理的な経路については、たとえば普段利用している通勤経路上で道路工事が行われており、迂回した場合はその迂回した経路も合理的な経路になります。

この通勤に関しては、出張中に合理的な経路から離れたお店に食事に行って交通事故に遭ってもそれが私的行為であれば、労災と認められるのは難しいのと同じことが言えます。

つまり、通勤途中で通勤とは関係ない目的で合理的な経路からそれたり、通勤経路上で通勤とは関係のない行為をすると、通勤と認められなくなります。

具体的には映画を見に行くとか、通勤経路上にある飲食店で同僚と一緒にお酒を飲むなどが挙げられます。しかし、通勤途中で近くの公衆トイレを利用するとか、経路上のお店でジュースやたばこを買うなどのささいな行為は認められています。

また、この通勤には例外があり日用品を買うためにスーパーに立ち寄るとか、診療所で受診するなどは含理的な経路に戻った後は通勤と認められます。

それでは次の場合は通勤と認められるでしょうか?

終業後、会社から駅へ向かう途中で通り道にある本屋さんに入りました。そこで50分ほど立ち読みなどしてからその後、電車に乗り自宅の最寄り駅で下車し自宅へ向かう途中でバイクと衝突し負傷しました。さて、この場合通勤災害になるのでしょうか?

立ち読みという行為自体は明らかに通勤とは無関係です。仮に本を買うためにごく短時間、本屋さんに立ち寄ったのであれば例外とみなされる可能性はあります。

しかし、50分の立ち読みをささいな行為とみるのは難しく、また日用品を買う行為のような例外と認めるにも無理があります。したがってこの場合は通勤災害と認められないと解するのが妥当です。

通勤経路上につい長居してしまうような誘惑がある方は気を付けてくださいね(^_-)-☆


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