生きれていれば_上がったり下がったりするさ

昇給と降給について考える

こんにちは、ナザレです。

人事制度を語る上で非常に大事な点があります。
それは、「昇給」です。

日本の場合、定期昇給という形で毎年何らかの昇給、つまり給与が上がっていっています。
もちろん、上り幅は個人差がありますが、多かれ少なかれ給与が毎年上がることは確かです。
あまり成果のない社員でも少しは上がったりしています。

この定期昇給は、バブル経済以前から存在している制度です。
現在も取り入れている企業は多いでしょう。

昔の日本企業は、人口増加の恩恵にあずかり景気がとても良かった。
そのため、仕事はいくらでもあったようです。
男性の正社員が長時間働くことによって、その景気を支えたという面もあります。

男性正社員が自社で長く働いてもらうために、終身雇用制度もやり始めました。そして、定年まで働いてもらうためのインセンティブとして、定年までに給与がどのように上がっていくかを社員たちに提示する必要がありました。
毎年、その表に従って給与が上がっていく。
前述したように個人差はあるが、何らかの昇給は毎年必ずある。
それが定期昇給でした。

しかしながら、バブルも崩壊し、以前のような経済成長が見込めなくなってしまったので、日本企業もリストラやボーナスカットをするようになりました。
当然、給与を下げる企業もありました。
ここから失われた20年(30年?)が始まるわけです。

昇給はきちんと制度化されていましたが、降給、つまり給与を下げることは制度として周知されていたのかどうか、これが疑問なんですよね。
企業の就業規則を見ると、昇給は書いてあるのですが、降給できるとは明確書いていないケースが多くあります。

厚労省のモデル就業規則には、
企業の業績等の理由によっては昇給を行わないことがある、程度のことしか書いていません。
これだと企業業績が著しく悪いときだけ昇給をしなくても良い、という風になってしまいます。
しかも、昇給をしないというだけで、降給ができるわけではありません。
どんなに業績が悪くても社員給与は据え置きということです。

社員にとってはとても良い制度ですが、人件費が収益を圧迫し始めたら社員にも影響が及びます。
結局のところ、降給の制度がなくても給与を下げざるを得ない状況に陥ってしまいます。
そうなると、企業、社員の双方にとって悪い結果となります。
なので、昇給だけでなく降給についても適切にマネジメントする必要はあると考えます。

組織運営を考えると、良い人材には高い給与を払って、悪い人材には低い給与を払うという原則を貫くことが必要になってきます。
人手不足の中、良い人材にいてもらうためには、成果を上げる社員に報いる制度の構築が重要です。
成果の上がらないのに昇給したり、給与据え置きとなっていると、社員に対して「仕事してもしなくても給与は変わらない」という間違ったメッセージを発信することになってしまうでしょう。
それだけは避けなければなりません。

では、適切に降給させるためにどうすれば良いのでしょうか。
それは、きちんと就業規則に降給ができることを書いておく必要があります。
降給の規定がない状態で給与を下げることは、あまりお勧めしていません。
常識的に考えれば、成果が低いんだから降給も当たり前だろと思います。
でも、就業規則という企業のルールブックに書いていないことを、企業がやりたい放題やってしまっていたら、組織の秩序が損なわれてしまいます。
当然、社員だって言うことをきかなくなります。
就業規則に書いてあることを守らせるために、企業も社員も節度を保って行動することが大事なのです。

そうであるならば、きちんと降給の規定を置かなければならないでしょう。
IT企業やベンチャー企業の中には、きちんと評価制度を設けており、四半期ごとに給与が上がったり下がったりしています。
成果が上がれば給与も上がるし、成果が乏しければ給与も下がる。
そして、制度が形骸化しておらず、現実に上がったり下がったりしているため、社員にとって悪い制度という風には捉えられていません。
なにせ、下がり続けるわけでもなく、頑張れば上がるわけなので当然でしょう。
もちろん、頑張らなければ上がりません。
ですが、これは自分の問題です。
能力がなければ給与は下がる。仕方ないことです。

日本は給与が下がりにくい社会でした。
全員がフルパワーで長時間労働し、右肩上がりの成長をしていた時代はこれでも良かったわけです。
利益が上がり続けていれば、人件費も上がり続けることができます。
多少仕事しない人がいたとしても、大きな問題にはならなかったのかもしれません。

でも、今これをやると企業は潰れます。
利益が上がらないのに、人件費を上げ続けることができません。

降給制度がないと、仕事のできない社員が、仕事ができないまま定年までいることになります。
仕事ができなくても給与が下がらないわけですから。
頑張って仕事ができるようになろうという気持ちにはならないでしょう。
つまり、降給制度がないため生産性が上がらないのです。

給与が下がらないと安心しているから、定年が近づいた社員は安全運転に徹するのです。

降給制度ときくと、なんだか悪いイメージが漂います。
でも、実際は組織運営のスパイスになるのではないかと考えています。
常に緊張感をもって社員に働いてもらうために、昇給と降給を上手く組み合わせながらやっていく必要があるのです。

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