年齢制限の例外規定の改正案

 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則(昭和四十一年労働省令第二十三号)の第一条の三において、募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保のため、一部の例外を除いて労働者の求人に関して年齢制限を設けることを禁止している。

 ここで、例外事由を紹介する。
例外事由 1号:定年年齢を上限として、その上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
例外事由 2号:労働基準法その他の法令の規定により年齢制限が設けられている場合
例外事由 3号 イ:長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
例外事由 3号 ロ:技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、 期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
例外事由 3号 ハ:芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合
例外事由 3号 ニ: 高年齢者の雇用の促進を目的として、特定の年齢以上の高年齢者(60歳以上の者に限る。)である労働者の募集及び採用を行うとき、又は特定の年齢の範囲に属する労働者の雇用を促進するため、当該特定の年齢の範囲の労働者の募集及び採用を行うとき(当該特定の年齢の範囲の労働者の雇用の促進に係る国の施策を活用しようとする場合に限る。)

 それぞれ簡単に解説すると、1号は65歳定年の企業で64歳以下の人と条件を付ける場合である。2号は深夜業を含むために18歳以上の者を募集する場合である。
 3号のハは、子役タレントだ。3号イ、ロ、ニについては、私の政策提言の肝であるので、提言とつなげながら解説したい。

 まず、3号のイというのは、新規学卒時に就職できなかった若年層を新卒同等基準で採用するというのである。この省令は昭和41年に出たものであり、その後いくつか条文が追加されている。例えば、「第十条 令和五年三月三十一日までの間、第一条の三第一項第三号ニ中「行うとき、」とあるのは、「行うとき、三十五歳以上五十五歳未満である労働者の安定した雇用を促進するため、当該三十五歳以上五十五歳未満である労働者の募集及び採用を行うとき(公共職業安定所に求人を申し込んでいる場合であって、安定した職業に就いていない者との間で期間の定めのない労働契約を締結することを目的とし、当該三十五歳以上五十五歳未満である労働者が職業に従事した経験があることを求人の条件としない場合に限る。)、」とする。」というのもその一つである。この追加された第十条もその一つである。

 昭和41年からバブル崩壊、そして失われた10年と言われたころまでは3号のイで対応できた。しかしながら、就職氷河期世代の人口ボリュームが大きく、また相変わらず企業に若い人を望む意識が根強く残る。そして、就職氷河期世代に対して対策が必要と政府がやっと重い腰を上げて第十条(3号の二の対象を就職氷河期も含める)が令和2年2月14日にになって追加されたが、この条文が年齢で設定されたのが問題と考える。就職氷河期世代も年齢を重ねて対象外となるからというので55歳までとなったが、じゃあ今(令和3年)54歳と言ったら1967年生まれであり、省令が公布された令和2年当時は1966年生まれとバブル入社組も含まれてしまう。また、この省令は令和5年3月31日までと現在は規定されているが、このとき35歳となるのは1988年生まれとなり、リーマンショックの影響はまだ残るが法改正で延長されると新規学卒時の就職環境が良い世代も含まれてくる。3号のニにつながる第十条は、生年月日を原則とし、浪人や留年で大学卒業時には就職氷河期に突入してしまったという人には例外的に卒業証明書で認定を受け、公共職業安定所長から認定証(番号)を発行されるというのが良いだろう。1970(昭和45)年4月2日~1980年(昭和55年)4月1日生まれというのがいい線だろうか。若い方はもう少し伸ばしてもいいが、上限はここまでだ。
 さらに、いわゆる正社員の職歴の年数に上限を設けることも必要ではないか。職務経験や実績のあるものが何らかの理由で離職した時に応募してくるのを排除できるならしておきたい。これは初任給を抑えることでできるかもしれない。もう一つは、生年月日条件の緩和も含め年金の記録(厚生年金保険の加入状況と月額標準報酬である程度あたりを付けられる)を紹介して審査を受けて就職氷河期世代求職者証を発行するのもありかもしれない。

 3号のイを使って若い人に絞ることが簡単にできてしまうが、ここを厳しくするのも一つだ。具体的には、この求人で採用した者のキャリア形成プランの予定を求職者に公開することが必要だろう。キャリアプランの別紙添付ない場合は、3号のイによる年齢制限は使えなくするといった形か。
 これは最低限で、記載内容を要求してもいいだろう。理想は公共職業安定所長の許可がないと3号のイができないくらいでいいかもしれない。なお、民間の職業紹介事業者に対しても当然適用させ、件数が多い場合には職業紹介の許可の更新拒否や許可取り消し、業務停止命令なども必要だろう。もちろん、両罰規定で求人者に対しても行政指導や過料(行政罰)も必要だろう。

 3号のロについては、実は30歳~49歳のうち特定の5~10歳の幅の年齢層が半分以下である場合でないと使えない。これをもっと拡大・積極的に使えるようにするため、対象年齢層を16歳以上に拡大するのである。そうすると、例えば不人気職種・業界や中小企業で新卒採用が思うようにいかなかったり、何らかの理由で新卒採用をしなかった企業が新卒採用を再開するときに3号のロを使えるようにするのである。3号のイはキャリア形成という方便を簡単に使えなくするために利用できる条件を厳しくし(キャリアプランの公開義務があるというのはかなり抑止力になると思う)、その代わりに3号のロを適用拡大するのである。ただし、採用できなかったからといって3号のロを使い続けるのは仕方ないとして、採用したがすぐに離職されてまた年齢バランスがおかしくなったと言って適用してくれとなったら、求人部門では普通に受理するとして、裏で監督署に要調査事業所リストとして回るという位したほうがいいだろう。

 まとめると、
例外事由 3号 イ:長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象とし、キャリア形成プランを求職者に公開して募集・採用する場合
例外事由 3号 ロ:技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、 期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
例外事由 3号 ハ:(略)
例外事由 3号 ニ: 高年齢者の雇用の促進を目的として、特定の年齢以上の高年齢者(60歳以上の者に限る。)である労働者の募集及び採用を行うとき、又は特定の年齢の範囲に属する労働者の雇用を促進するため、当該特定の年齢の範囲の労働者の募集及び採用を行うとき(当該特定の年齢の範囲の労働者の雇用の促進に係る国の施策を活用しようとする場合に限る。)
第十条 令和五年三月三十一日までの間、第一条の三第一項第三号ニ中「行うとき、」とあるのは、「行うとき、1970(昭和45)年4月2日~1980年(昭和55年)4月1日生まれである労働者の安定した雇用を促進するため、当該三1970(昭和45)年4月2日~1980年(昭和55年)4月1日生まれである労働者の募集及び採用を行うとき(公共職業安定所に求人を申し込んでいる場合であって、安定した職業に就いていない者との間で期間の定めのない労働契約を締結することを目的とし、当該1970(昭和45)年4月2日~1980年(昭和55年)4月1日生まれである労働者が職業に従事した経験があることを求人の条件としない場合に限る。)、」とする。

 もちろん、これだけではなく例えば行政機関が率先して就職氷河期世代の採用を行うこと(今も行ってはいるものの、焼け石に水である。新卒の任用辞退者の補てん採用や、大胆に新卒の採用数を減らして就職氷河期世代採用に割り振ってもいいくらいだ)も必要だろうし、多少の報奨金があってもいいだろう。また、マネジメントに関する職業訓練(職業訓練給付金でもいい)も用意したいところだ。

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