ブラッディオレンジジュース

夏だ。自転車に乗って通勤が気持ちいい。私の愛車は、2500発と交換した緑の折り畳み自転車だ。

週末にセレクトショップ(甘美な響き)で買ったばかりのタイトのデニムにレースのトップス
お気に入りの時計をつけてふんふんと
鼻歌まじりで自転車を漕いでたその時、

ガンッ

衝撃が走る。

ビターン

私の体は側道から車道の真ん中に吹っ飛ばされた。痛い。痛いよ。

じわりと涙が浮かび、
うう、、、と辺りを見回す。

そこは笹塚のはずれ。小さい商店街だ。
井戸端会議会議をしていたお店のおばちゃん達が「あらあらあらー」と群がって来る。

「あなた、血まみれじゃない」
「救急車呼ぶ?」
「ここじゃ引かれちゃうわよ。こっちこれる?」
「大丈夫?痛い?動ける?」
「佐藤さん、この子見てて私とってくるわ。」
「任せて!私とりあえず見てるわ。」

矢継ぎ早に質問が来る。そして何故か皆服の端を引っ張り、立たせようとする。ああ、車ね。確かに。

光景を見て焦ったおばちゃん達が、さっと自宅兼お店から、

「と、とりあえず絆創膏かしら。1枚じゃ、、、無いわね。2枚。持って行こうかしら。余ったらね、予備になるから」

と考えたんだろうなぁと思う程、見事に全員2枚持ち。何人かはマキロンも。

状況を理解したのは目の前に倒れているマウンテンバイク。物凄いスピードで横道から突進。
それが直撃。

私吹っ飛ぶ。自転車ボロボロ。顔も擦り傷。膝や肘も破け、サンダルは壊れ、時計も吹っ飛び、服も破ける。

そうか。コレが俗に言う満身創痍か。
じゃなくて。

ぶつかった相手。無傷の女の子(学生っぽい)が
「痛っ!」
と起き上がり、私を睨み付ける。

そして彼女も理解する。私の状況を。
「あ、、、、。」

彼女が気まづそうにモジモジする。
遅刻するんで行っていいですか的な。

相手は子供じゃないか。(18ぐらい?)
ちょっとお姉さんぶりたいお年頃な27歳の私。

「いいですよ。学校遅刻しちゃうなら行って」

びっくりするほどドライな彼女。
「じゃあ、すみませーん。」
マウンテンバイクで軽快に去っていく。

血まみれで泣きべそかきながら、おばちゃん達にお礼を言い、救急病院を探す。

膝から、ぽたんぽたんと血を垂らし、
半クラッシュ状態でギイギイ言うようになった
愛車で初台にある救急病院にたどり着く。

入り口で、
「自転車にはねられたんです」
言うも病院。
事務的に「番号でお呼びしまーす。」

待つ。そこには量産型のおばあちゃんやおじいちゃん。椅子が一個しかあいていないぐらい。

1時間程ロビーの椅子に座り、待っていたら
神の助け。婦長さんが通りかかる。

「あら〜。血まみれじゃない!!」

両手両足が包帯だらけになり、顔に絆創膏を貼り、出勤。

同僚の目が丸だ。そして言われる。
「すぐ帰れ」と。

ここで我にかえる。
そのとおりだ。と。

#自転車 #コラム #マキロン #絆創膏

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?