私は屁こき太郎である。

 私は屁こき太郎である。
 よくおならがでる。

 おならをしたときはとてつもなく、気持ちの良いものである。
 体の奥のつっかえたものが取れ、健康になったかのような感覚に包まれる。
 できることならば、永遠に屁をこいていたいものだ、とさえ思う。

 しかしながら、そんな私の憩いのひとときを邪魔することがある。

 大衆である。

 大衆の中でおならをしようものならば、あなたのこれまでの人柄は音を立ててくずれていくであろう…おならだけに。

 しかし、大衆に囲まれている時に限って、もよおすのがおならである。愛おしい。

 そんなとき、役に立つことを皆さんはご存知であろうか?

 そう、すかしっぺである。
 わたしはこのすかしっぺが神がかってうまい。

 本当は私だって思いっきり、音の出すやつをして、おならを世の中に送ってやりたい。
 しかし、そんなことで市民権を失うことはできない。
 そこで私は、すかしっぺをする。これにはなかなかコツがいる。

 周りの人間にはバレないようにお尻に空間を作り上げる。
 座っているなら椅子とおしりに、立っているならおしりとおしりに、空間を作る。

 ここで気をつけねばならないことは、おしり以外は微動だにしてはならない。
 したのならば、一気にばれる可能性が高い。
 なぜなら、すかしっぺは臭いがするからである。

 お腹の辺りを少し曲げ、頭、肩は動かさず、すぅー、っと出してやるとおならは外の世界に解放され、無限の彼方へと出発するのである。
 

 さて、ここまで、おならの仕方を教授したわけであるが、私は人一倍おなかがゆるい。
 おならを出した回数であれば、日本代表になれるくらいだと自負している。
 これまで一番困ったのは、大学の大教室で前の方の席に座ったときである。
 途中で退席することも憚れる、教授の前である。

 ぐるるる…と音もなく私の体内で腸が戦いの狼煙をあげる。
 こうなるともう、おならは待ってくれない。
 早めに出すことが求められる。
 なぜならお腹はためると量が増え、音が鳴る可能性が高くなる。

 わたしは被害の小さいうちに、手榴弾レベルの気体を体外に排出しようと、前述のようにお腹の辺りを少し曲げる。

 深度5センチ、3センチ…1センチ、、、

 すると隣にいた友人が屈託のない笑顔で私の肩をポンとやる。


 さぁ、レクイエムのファンファーレが鳴り響く。
 新しい人生の幕開けだ。
 屁こき太郎、見参。

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