読書まとめノート1-1

Oxford Handbook of Perceptual OrganizationのChapter7 "The perception of hierarchical structure" のまとめノートです。
このハンドブックの一部はUnpaywallから合法的にタダで読むことができました。これもタダでいけます。
クッソ長くなるからいくつかに分割して投稿します

Introduction

視覚オブジェクト:階層的構造の主要例としてみなされる (「部分と全体の多階層構造」と定義することもできる (Palmer, 1977) )
たとえばヒトの体は手,足,頭というパーツから構成されているが,たとえば頭だと目,鼻,口などのさらに多くのパーツから構成されている

全体とその構成要素の間の知覚的関係:心理学者と哲学者の間でこれまで議論の種になってきた
心理学:構造主義ゲシュタルト心理学の間の論争にまで遡ることができる

構造主義 (イギリスの経験主義に根源がある)
「知覚は空間的・時間的連続性の結果生まれた連合によって統一された,基本的でそれぞれ無関係な局所感覚の原子から構築されている」と主張
(「心理学 (第4版)」では「単純な心的要素 (≒上でいう「原子」?) の存在を前提にし,要素と要素との連合によって意識的経験を構成していく立場」との説明あり。p311) 多分こっちの方がわかりやすい
⇔ゲシュタルト理論は原子説と連合説の両方を否定

ゲシュタルト心理学 (伝統的なゲシュタルト心理学におけるholismの教義による)
特定の感覚全体は,個々の部分のみを考慮して予測する複合体とは質的に異なり,部分の特性はそれが埋め込まれている全体に依存する
※holismは全体を部分や要素に還元することができない,とする立場をとる

この章で扱うこと
ローカル-グローバルの関係性の問題 (グローバル優先と全体論的特性の優位性) に取り組む現代的な試み

Global precedence

The global precedence hypothesis (Navon (1977) によって提唱。和訳すると「グローバル優先仮説」?) : 知覚処理は全体構造 (global structure) からより局所的な細部 (more local detail) の分析という順序で進んでいく
視覚オブジェクトを入れ子的な関係をもつ階層的ネットワークで表現されたものとしてみると,視覚的特性の全体性 (グローバル性) はそのオブジェクトが階層の中で占める位置に対応する
「オブジェクトの処理はグローバルからローカルへと進んでいく つまり 視覚オブジェクトの中でもよりグローバルな特性がまず最初に処理され,それに続いてよりローカルな特性が処理される」と主張

ヒトの顔で考えてみようぜ

顔を構成する要素 (目,鼻,口) どうしの空間的な関係はそれぞれの形よりもグローバル つまり ある要素を構成する小さい部品の間の関係はそれらの個々の特性よりもグローバルなもの
☆まず「鼻が顔の真ん中にあって,目は鼻よりも上で額よりも下,左右に二つ,口は鼻のすぐ下あたりにある」というように顔のパーツ全体の位置を処理してから個々のパーツの特性を処理する (たらこくちびる,糸目…),という感じ?
☆そういや絵を描くときも同じようなやり方だな。まずそれぞれのパーツのアタリとってから細部を描き込む

グローバル優先仮説の検証
大きな図形がより小さい図形の適切な配置によって構成される階層的パターンの知覚を研究することによって検証されてきた (Asch (1962) によって最初に導入された手法。後にKinchla (1974, 1977) によって改良?)
刺激の例: 小さい「S」を並べて作った大きい「S」と小さい「S」を並べて作った「H」。SとHを入れ替えてもいい。本文中のFigure 7.1を参照。
これらの階層的パターンが満たすべき条件
1. グローバル構造とローカル構造の親しみやすさ,複雑さ,符号化可能性,識別可能性の点で同等であり,グローバル性のレベルだけが異なること
2. 2つの構造が独立しており,一方の構造が他方から予測できないこと

実験例 (Navon (1977) のexperiment 3)
実験参加者はFig. 7.1. のような刺激を呈示され,グローバルかローカルかの要素を判断するよう求められる (グローバルとローカルの試行は別々)
グローバルな文字はローカルな文字よりもより速く認識されること,無意味な競合的グローバル情報に由来する,ローカル認識に対する破壊的影響があること (global-to-local interference) がわかった
この発見はグローバル優先仮説の証拠として受け止められている
Navon (1977) の後続研究: グローバル優位性効果の起こる境界の表現,グローバル優位性効果が起こる位置 (知覚レベルなのか,それ以降なのか) や脳における局所化の探索に焦点を当てている (Kimchi (1992), Navon (2003) により詳しい)

グローバル優位性: 境界条件
いくつかの研究で,グローバル優位性効果を緩和する,あるいは逆転する可能性のある特定の変数があることが指摘されてきた
階層型の刺激の全体の視野角が7°-10°を超えるときはグローバル優位が生じる可能性は低い しかし 両方のレベル (おそらくグローバル,ローカル?) の偏心が等しくなるときはグローバル優位性効果が変調されるだけ
グローバル優位性効果が発生しにくい条件
空間的確実性がある > 空間的不確実性がある
中心的呈示 > 周辺的呈示
疎な要素 > 密な要素
比較的大きく少ない要素 > 比較的小さく数多い要素
呈示時間が長い > 呈示時間が短い
ローカルの形状のよさや意味合いがグローバルよりも上回るとき
※本文中にはいくつか参考文献が挙げられていた
Han and Humphreys (2002): 注意がローカルとグローバルレベルの間で分割されているとき,おそらく注意を引きつけた顕著性のあるローカル要素の存在はグローバルターゲットへの応答を遅らせる一方でローカルターゲットへの応答を高速化
☆全体的にどういう形状かを判断するのは遅くなるが,どういう構成要素からなるかを判断するのは速くなるということ?

グローバル優位性の出所 (英: The source of global advantage)
グローバル優位性効果の出所 (位置) はいまだに論争が起こっている

いくつかの研究: グローバル優位性は知覚レベルで起こっている(おそらく初期の知覚組織化プロセスにおける処理の結果) と結論づけている
※グローバル優位性における組織化プロセスの関与はこの後の章で詳細に議論するという記述あり
グローバル優位性は感覚メカニズムから生じるということも示唆されている (低空間周波数の方が高空間周波数より処理が速い)
低空間周波数と高空間周波数の処理レートの違いはグローバル,ローカルの知覚に役割を果たしているが,これだといくつかの知見を説明することができない (グローバル/ローカル優位性における意味合いや形状のよさを取り扱うことはできない)
Behrmann and Kimchi (2003): 後天的な統合的視覚物体アグノシアを持つ2人の参加者は高域,低域の両方で正常な空間周波数閾値を示したが,多数の要素で構成される階層的刺激のグローバル形状を導出する際に困難があった
※アグノシア (agnosia): 失認。今回は統合視覚性失認 (対象をひとまとまりとして把握できないために呈示された物体が何かを言えない状態)

別の研究では,グローバル優位性は知覚後プロセスのどこかで起こっていることを示唆
この見解 (英: view) は注意が一般的にグローバル優位性効果を調節することを示す知見によって支持されている しかし 注意は注意が集中する前に発生したバイアスを拡大する可能性がある
同様に 知覚レベルで生じた効果は反応関連プロセスなどの知覚後のプロセスで拡大される可能性がある
(9/20 ここまで読んで力尽きた)

(9/21 とりあえずここで一区切り)
グローバル処理優先: 脳における局在化 (英: brain localization)
行動学的研究,機能的神経イメージング研究: グローバルな知覚とローカルな知覚の機能的な脳半球の非対称性を示唆 (グローバル処理に偏った右半球,ローカルな処理に偏った左半球) →空間周波数の処理とグローバル/ローカル知覚の関係に関連していることを示唆している,という見方もある
Ivry and Robertson: 空間周波数フィルタリングには2つの段階があること,2つの半球は絶対的空間周波数よりも相対的空間周波数に敏感な第二段階が異なることを提案
左半球: 最初に選択された範囲内にある高い空間周波数からの情報を強調
右半球: (右半球がグローバルな情報 (大域情報) と左半球のローカルな情報 (局所情報) を優先的に処理するために偏っていることの結果として)低空間周波数を強調

グローバル/ローカル処理における半球の非対称性に関する代替的な (英: alternative) 説明: 刺激の顕著性に対する感度が半球で違うことの提案が含まれる (半球は形状の識別に関しては同等であるが,形状とレベルの情報を統合する能力が異なり右半球は形状を大域レベルで統合することに,左半球は形状を局所レベルに統合することに関与することを示唆)

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