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vol.001 KOZAで捻りたい。

タイトルでもじったKOZAは、街の名前である。
「コザ」と発音する。
県内では2番目の人口を誇る
沖縄市の中心市街地をそう呼ぶのだけど、
コザの名称は、実は1974年に廃止されている。

それでも多くの人々が未だに街を、この名で語る。

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ここは、ネオン瞬く繁華街。
米兵たちの乱痴気が、宵の更けるに任せ高まり、
呼応する様に、路上にグラスの爆ぜる音が響き、女たちの嬌声が上がる。

タトゥーショップ。ライブハウスにポールダンス。
およそ地元民よりも、基地関係者が喜ぶサービスだ。
街は、もう何十年とその様に営んで来た。

週末、その熱気たるや。
陽の暮れ出す頃から徐々に活気付いて、
いよいよ夜が訪れると
文字通り、人が埋め尽くすような賑わいとなる。

沖縄県の中部に位置するこの街の、
メインストリートである「ゲート通り」。
通りの呼び名は、
県内、最大規模を誇る嘉手納基地、
その玄関である「第2ゲート」と接する事に由来する。

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この通りの中頃で、
ボクはTESIO(テシオ)と云う加工肉店を営んでいる。
ソーセージショップ、と言えば分かり良いだろうか。
ドイツを中心に育まれた伝統製法でつくる自家製屋。
早いもので、今年の6月に丸3年を迎えた。

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「ソーセージ店をやるんです。場所はコザです。」

開業資金の融通を頼み、
融資機関の担当に、そう打ち明けた2017年。

「考え直しましょう。」

開口一番、この様に説得されたのをハッキリ覚えている。
正気を疑われている印象すら受け、しどろもどろとした。
「無理もない」と胸の何処かで気後れした事は否めない。
セミも鳴き始めようかと云う夏の初旬、だったと記憶している。

親類縁者、当時近しい間柄の悉くが、
心配とも、忠告とも取れる言葉を全力でぶつけて
新天地にこの街を選んだボクを案じた。

憚りながら言わせて頂くと、
何もやけっぱちで此処に決めた訳ではない。
「此処でなければいけない訳」、と云うのがちゃんとあるんです。

何処でもない、コザこそが打って付け。
その理由を聞けば皆さん一様に、
「ナルホド」と感心の溜息をついて
きっと頷くに違いない。
不夜城、さながらのこの土地で、
「街のソーセージ屋さん」を営む動機について
ボクには大いに語る処がある。

但し、口が多いボクの事であるから
到底一言二言では我慢出来ない。
つまり、ここから割と長いお話になるので、
SQUA読者の皆々様には、
文筆家でもない、一介のソーセージ職人であるボクの、
取り留めのない述懐に根気強く付き合って頂く事になる。

今からお話するのは、
居場所を求めて彷徨う、頼りない一人の男と、
如何にも得体の知れないミステリアスな街、
その3年の歩み、についてである。

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しかしながら。
先ほどからコザだ、街だ、と、
随分な志と野心を以て臨んでいる様に思われては些かきまりが悪い。
歯切れの悪いプロローグほど興覚めするものはないが、
正直な処、ボクはのっけからこの街を当てにしていた訳ではない。

試練に打ちのめされ、
いよいよ如何ともし難いと頭を抱えた処に訪れた神の声。
「渡りに船」、とでも言うべきか。
何かの思し召しだ、と錯覚して、反射神経で機会にすがる、
ボクはそんな風にコザと出逢いました。

とは言えこの「弾み」こそが、
語るべきボクの現在。
退屈とは無縁の、刺激に満ち満ちた日々の入り口、である訳です。

その顛末を、これから大いに語って参ります。
欠伸を堪えてどうか、心行くまでお付き合い下さい。

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【嶺井大地 プロフィール】
1984年那覇生まれ。2017年沖縄市にて、ドイツ製法による自家製ハムソーセージ専門店TESIO(テシオ)をオープン。2019年にはドイツで開催される国際コンテストIFFA(イーファ)にて、沖縄県内初となるゴールドメダルを獲得。2020年、24の専門店によるコザの街歩き企画「KOZA SUPER MARKET」を主催し4,000人を動員。現在も街の盛り上げに夢中で取り組む。


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