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SQUA的連載コラム

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沖縄で暮らすひとびとの、日々のものがたりと、思うこと。
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2021年1月の記事一覧

vol.017 ガールズファイトクラブ

物心ついた頃から、強い女の子が好きだった。絵本や漫画、映画の中に描かれる可憐で美しい女の子にも憧れはあったものの、自分の中でカッコイイ!と思えた女の子は決まって賢く強かった。 国の王様を相手にトンチで勝つとか、姫さまと呼ばれながらも植物や生物の学者で巨大な虫を手なずけたりとか、痩せっぽちでチグハグの長靴下をはく少女は、ちっとも強そうじゃないのに怪力でギャング一味を丸ごと退治してしまったりとか、彼女たちは、私の永遠の憧れであり色あせないカッコイイ存在だ。  大人になった今で

vol.005 街の営みは恋に似て

或る、深夜。 ギッ、と恐る恐る、スモークハウスのドアを開く。覗き込んだ顔をドッと強い熱気が叩いた。思わぬカウンターパンチに身を強張らせるが早いか、真っ白な湯気が、視界いっぱいに立ち込める。 霧が掻き消えて見通しが露わになったその先、およそ6段のスタック所狭しと、張り詰めた褐色の腸詰が、ズラーッと整列している。 総重量20kg。 大小400本余りの、大量のソーセージがボクの目の前にぶら下がり、揺れている。 何て光景だろう。これが日常になるのか。 滑らかな曲線に脂が照

vol.007 気がつけばそこにあるもの

クリスマスを目前に街が賑わう頃、中城村の小さなアトリエでは苺のショートケーキが仕込まれていた。 ケーキをつくるのは、やましろあけみさん。「mon chouchou」の屋号で活動されている菓子職人だ。 沖縄で暮らすお菓子好きの方なら、既にご存じかもしれない。「モンシュシュあけさんがつくるお菓子」の評判は、僕の耳にもこれまで幾度と入ってきていた。 11月、屋我地島で開催されたSQUA主催のイベントに僕もProotsとして出店した。本島北部に位置する離れ島のローカルな催しには

vol.016 振り袖姿でモーヤー

私が竹富島に移り住んだ頃、「オムツでハイハイ」していた子たちが、今年のお正月には、「振り袖でモーヤー」を舞っていた。モーヤーとは、竹富島の言葉で「自由舞い。乱舞。歓喜の舞い」のこと。祝いの場や、会の終わりにみんなで楽しく舞う踊りだ。 今年は、新型コロナウイルスの影響により、竹富島での成人式は中止となった。 それでも成人者へお祝いの気持ちを伝えたい島人たちが、公民館前の西塘御嶽を参拝した3名の成人者を囲み、ささやかながら心に染み入るような温かい集いが開かれた。  島生まれ、

tram po line 012

Nakijin , Okinawa 2020 【大城 亘 プロフィール】 写真家。沖縄県糸満市出身。東京代官山スタジオ勤務後、写真家大森克己氏に師事。2006年独立。2011年より故郷沖縄に拠点を移し、様々な媒体で活動中。