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SQUA的連載コラム

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沖縄で暮らすひとびとの、日々のものがたりと、思うこと。
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2020年8月の記事一覧

vol.007  天の川

今年は、台風到来が通常より遅かった。7月の台風発生数は観測史上初の0だったそうだ。私の暮らす八重山では、8月に入ってすぐに台風4号がその強い風で島々とそれを囲む海をかき混ぜていった。  台風が八重山に接近すれば、石垣島と離島を結ぶ高速船や大型フェリーの運航は止まってしまう。離島の人々は台風が通り過ぎるまで家にこもって待つ。待つと言ってもそれぞれで、ひたすら眠る人もいれば、家仕事をする人、子供とゲームをする人、大人同士で集まり飲む人、我が家はWi-Fiが使える内はネットで映画

vol.003 『古道具のススメ』

18歳で車の免許を取って、最初に手に入れたのは先輩から譲ってもらった昭和51年式のジムニーだった。 550ccの2ストのマニュアル車で、エンジン音もクラクションも甲高い音がするので、音だけ聞くと原付が走っているかのようだった。 家の近所の路地で右折した時に、錆び付いてたボンネットが見事に開いて視界を失い、電柱に激突して白煙を出すというマンガのようなシュールな最期だった。 そんなクセのある車を最初に乗ってしまったので、現行のオートマ車では何か物足りず、未だに昭和のマニュア

tram po line , 006

Itoman , Okinawa 2014 【大城 亘 プロフィール】 写真家。沖縄県糸満市出身。東京代官山スタジオ勤務後、写真家大森克己氏に師事。2006年独立。2011年より故郷沖縄に拠点を移し、様々な媒体で活動中。

vol.2 虹をかける手

那覇を出て30分ほど経ったろうか。車窓を流れる景色は、オフィスビルからさとうきび畑に変わった。窓を開けると、時折牧場のような匂いが混じる。 目的地に到着すると見えるのが、一面のさとうきびを見守る様にそびえる八重瀬岳。ここ「八重瀬町」の名付け元なんだそうだ。 そんな八重瀬岳のふもとを歩きながら「あっちには沖縄最古のシーサーが立っているんですよ」「この山の中腹には白梅学徒隊の壕があって...」と案内してくれるのは、ここにやちむん(焼き物)工房「アカマシバル製陶所」を構え、作陶

vol.006 波照間ブルー

波照間島と聞くと、ちょっと切なくなるような、胸の中で何かがキュとするような感覚を覚える。それは、ずっとこのまま夏が終わらないで欲しいと願った、おさないころの夏休みを思い出すときに似ている。娘が小学二年生の夏休みから、波照間島へ毎年訪れるようになった。 石垣島から高速船で約一時間、日帰りをしようと思えばできるけれど、私たちは必ず波照間島に宿泊する。日本最南端の島、南十字星が見える島、星空観測タワーのある島、人口約480人の小さな島、黒糖が素晴らしく美味しい島、学校の校庭にヤギ

tram po line , 005

Nanjo , Okinawa 2017 【大城 亘 プロフィール】 写真家。沖縄県糸満市出身。東京代官山スタジオ勤務後、写真家大森克己氏に師事。2006年独立。2011年より故郷沖縄に拠点を移し、様々な媒体で活動中。

vol.002 コザだからこその訳

壁から生えたじゃばらの煙突が逆光を受けて、黒く視界に居座った。 眼を引き絞って、手のひら越しにその先端を見やる。ボクの他に作業服の大人が3人、同じく額に手をかざし、眩しそうに、狭い路地にひとまとまりになって宙を仰いでいた。汗を滴らせ、じぃっと凝らす。 その内誰かが、「おっ」と声を上げた。 筒の先からほやほやと、もやが、辺りを伺う様に覗いたかと思うと途端、真っ白な煙に変わりどうどうと吐き出され大きく、高く高く空へ立ち昇ってゆく。 ソーセージショップTESIO(テシオ)に