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ばんえい競馬が廃止になった場合

前回まで「虐待だ!」「廃止しろ!」に対するQ&Aを書いてきた。
未だ閲覧していない方は下記リンクを。

https://note.com/sqboy01/n/n949a9e29b536

今回は
ばんえい競馬が廃止になった場合、どの様な事が起こるのか?

これを考えたいと思う。

 

2023年6月19日現在
帯広競馬場内には牡馬441頭、牝馬202頭、騙馬17頭が入厩している。
(それとは別に81頭が競走馬として登録されている)
廃止となると最大で牝馬6割。牡馬・騙馬だと9割が処分されると予想され
その場合だと全体で約8割、600頭を越える馬の命が一斉に消える事になる。
ごく一部は人食用として肥育業者に引き取られるが、多くは肥育されていない為に殆ど獣用肉となる。
残された馬達は生産牧場や観光牧場に引き取られると思うが
その話は後ほど。

 

競馬場の横にある厩舎
そこに250世帯前後の家族が暮らしているが、
廃止となると一斉に廃業。
馬主や親族が関係する企業や牧場に就職出来る可能性もあるが
数は非常に少なく、全員が受け入れられるのは当然不可。

多くは馬と関係がない仕事をするかと。

それ以上に帯広市や十勝管内に留まる人より転居する人が
多くなる事も考えられる。

厩舎以外で競馬場で働いているスタッフもいる。
ごく一部は公務員として帯広市に留まるが、
それ以外は廃業となり再就職が必要。
全員とまでは無いが、
十勝管内から転居する可能性がある。

「廃止になった競馬場で、馬が幸せに暮らせる様な施設を作ればいい。
 そうすれば、厩舎の人も再雇用出来て良い。」

そう主張する人もいるが、完全な夢物語。

まず、馬の維持費や人件費は誰が出す?
帯広市?? 馬主??
その上で、馬の予防接種や病気になった場合の通院費。
施設の修繕費等、更に多額の費用が発生する。

「今まで競馬で潤ってきたのだから、それを還元する意味でも
金を出すのは当然ではないか?」

その主張は余りにも横暴で無責任。

過去に廃止になった競馬場で、そういう施設になった事は
一度もない。

廃止になれば、数日で競馬場内に馬が全ていなくなり、
人も数ヶ月で全ていなくなる。

それが現実。

 

生産牧場

一番ダメージが食らう所。

まず廃止と言われ馬を引き取るにも
馬房拡張等の設備を整える必要があり
新たな金と時間が必要となる。
そのどちらかが難しい場合、現存の施設で受け入れざる終えない。
例え競馬場から10頭引き受けた場合、
既に牧場内にいた10頭、若しくは更に多くの馬を
出荷させる事になる。
(競馬場から若馬を中心に牧場入り、
 実績が無い馬・年齢を重ねた馬は出荷される)

結果的に競走馬として登録している馬と同数か、
それ以上の馬の命が失われる事になる。

また仮に受け入れ、馬の生産を続けたとしても
馬の生産頭数減少から
インブリード(近親交配)の可能性が高くなり
出産しても虚弱体質で早期に亡くなる馬が発生しやすくなる。
そうなると更に生産頭数の減少が見込まれる。

生産牧場の中には
牛や他の家畜等の畜産、または野菜等の農家。
これらと兼業している牧場と
馬専業で行っている牧場がある。
専業の中でも重種のみという牧場もあれば
軽種、ボニー種、多種との兼業という牧場もあるが
馬のみの生産という事で専業の括りに。

重種の生産や競走馬(ばんえい競馬)に関して
国や各種団体から生産者及び牧場へ結構な額の補助金が出ている。
廃止となれば、その補助金の殆どがカットされる上に
馬を育てたとしても馬自体の価値が崩れ
馬市場で値が大きく下がってしまう可能性が高い。

そうなると馬の生産より牛や他の家畜を育てた方が
短期間で金になる為、重種馬の生産を止めたり
離農する牧場が発生。
結果的に上記に記載した600頭という数字以上の
馬の命が消えていく。

生産頭数で試算すると、毎年1000頭前後の産駒が
2,3年で半減。数年で年間100頭を割り込むのではと考えている。

 

経済

令和2年度の
「ばんえい競馬開催による地域への経済波及効果」
を参照すると経済波及効果が61億7039万と出ている。

その時と比べ、令和4年度の来場者が約1.7倍に増加しており
この数字も伸びている可能性が高い。

ばんえい競馬は単なる公営競技ではなく、観光産業の側面もあり
その事が経済波及効果が大きい事に繋がっている。

波及効果が大きいという事は、
それだけ帯広市や十勝管内にお金が落ちる事になるが
廃止となると当然それだけお金が落ちてこなくなる。
しかも単年では無く、複数年。

また重種馬の生産中止や離農による経済の落ち込みも
考慮する必要があり、
仮に廃止になった場合、帯広市や十勝管内だけではなく
北海道全体・東北・熊本を中心とした九州の
各地域経済に多大なる影響が出る事は安易に想像出来る。

 

その他

ばんえい競馬は競走馬を育成するだけではなく
人に慣れさせる、人間との信頼関係を築かせる
馴致
という作業を同時に行っている。

その作業が廃止と共に無くなると、色々な所で悪影響が出る。

各地で行われている祭典に重種馬が使用される事があるが、
ばんえい競馬の現役馬や引退馬が使われる事が多い。

その配給元となるばんえい競馬が廃止となると
馬の配給が滞るだけではなく、
馴致が進んでいない馬を使用することになり、
その結果、祭典中に馬が興奮・暴走し観客や御者に
重篤な怪我を及ぼす可能性が高くなる。

観光牧場等で馬車を引っ張る馬として
重種馬が使われる事もある。
これも引退馬が使用されている事が多い。

一から馬に教えるよりも、人に慣れ
ソリを引っ張っている馬の方が
短期間で効率よく馴致が可能。

仮に廃止になった場合、配給が滞るだけではなく
実は馬に取り付ける装具『馬具』の調達にも
多大なる影響が出る。

廃止と同時に馬具生産の需要が無くなるために
廃業する。

そうなると新馬車と馬を用意しても
それを取り付ける馬具が無ければ仕事が出来ない。
一部は輸入可能だが、全て揃えることは難しく
結果的に諦めるしか無い状況となる。

文化が消えるというのは
それに関連する道具の生産も無くなると言う事。

 

廃止して利益がある所

ばんえい競馬が廃止して悪影響が出る事を書いてきたが
逆に廃止したほうが良い所もある。
全てでは無いが、一部を記載。

・食肉処理業者

人食・獣食を含めて廃止になると馬を安く購入可能。
一部の業者は購入した馬を肉用馬として
自社で生産・肥育すると思われるが
設備に限りがあり、そんなに多く受け入れられない。

大多数が即処分され獣肉用として加工される。
獣肉用というのは動物園のエサだけではなく、
ドッグフード・キャットフードも含む。
但し、単年では良いが複数年になると厳しくなり
長い目で見ると、利益が発生しない物と思われる。

再発業者及び関連団体

帯広競馬場は厩舎を含めると結構広い。
しかも帯広市街地に程近く
立地条件としては本当に良い。
そうなると、この土地を求めて色々な企業が
手に入れようと考える。

但し、既に廃止になった他の競馬場を参照すると
廃止して跡地利用が決定されるまで10年以上の歳月が
掛かっている。
なので帯広競馬場も直ぐに再開発されないと思うが
決まったら利益が出る為に
色々な手を使ってくる可能性がある。

商業施設か工業施設、分割して住宅かマンション建設。
どれになるのか不明だが、
決定して再開発が始まれば建築業者や関連企業は利益が発生。
完成すれば多少の経済波及効果は発生する。

それでも決定されるまでの期間は
波及効果は全くゼロで有る上に
廃止により帯広市や十勝管内で
消失した経済波及効果を取り戻す事は
困難だと思う。
 

エセ活動家
「ばんえい競馬廃止」を訴えている愛護団体がいる。
実際に廃止になった場合、その団体に

実績

が生まれる。

その実績を元に新たな活動資金を得ようと人や企業に売り込み
多くの「寄付」や「スポンサー」を募る。

活動資金と言いながら、実質は「生活資金

つまりは実績を作るのが目的。

こういう者達は、馬の命や人の生命・財産なんて
全く考えていない。
自分達が生活し、お金が持てれば良いと考えている。

自分は、こういう団体や活動家を
エセ団体」「エセ活動家
こう呼んでいる。

本当に動物愛護を唱えるのなら、
人の命も動物の命も平等に考えるべきであり、
その事を欠如している者は自分は認めない。

また本当の愛護団体なら、『廃止』を求めるのではなく
手綱のべん打制限等の『改善』を求める。

その他、実績や支持を得る為に唱える政治家や
利権や利益が発生する分野が色々あるが今回は割愛。

 

さいごに

ばんえい競馬が廃止になった場合
競馬場だけではなく、様々な分野で悪影響が出るが
中には旨味が出る分野もある事を理解してほしい。

しかし廃止になれば、多くの馬の命が奪われるのは事実。

安直に競走中の見栄えが悪く「虐待」「廃止」と唱えている方々。
改めて自分が唱えている事がどういう事なのか認識した上で
主張してほしい。

その上で下記の質問に答えてほしい。

「馬を始めとした動物の命と人間の命は平等に考えるのが
 『動物愛護』の精神では無いですか?」

「馬が蹴って人が負傷する動画を見せて、自業自得だと主張するのが
  動物愛護ですか??」









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