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「名前のない鳥」誕生背景 ロシア留学前夜の記憶

6月23日、ミュージックビデオを公開した。

「名前のない鳥」 
ありふれたような小さな町
岬に白い灯台が
一人すまして立っています
あたしはそこに歩み寄るのです

かもめたちが飛んでいます
百か千かもわかりません
たくさんいるなら同じでしょう
彼らの名前を知らないから

空の色が黄金を映し出した
鳥の目にはもうすぐ映し出せない
夜の世界がくる
背中の翼を伸ばしていく

あたしの姿を誰か覚えてくれない?
名前のない鳥 図鑑にも載らない
あなたの名前はきれいでいいわね
その音をたよりに あたしは帰り着けます

夕影染まる空と海
あたしと灯台を燃やしていく
赤い光に焼かれながら
海の向こうをただ見据えた

日が落ちれば空へと飛び立っていく
遠くで誰かの声がする
聞こえてるよ でも 応えはしない
何もかもが飛ぶには重い

あたしの翼は風を受けて飛ぶだけ
名前のない鳥 誰にも名付けさせない
どこにだって行けるの どこにいても生きるの
愛するあなたには便りくらい出しましょう

あたしの姿を誰か覚えてくれない?
名前のない鳥 図鑑にも載らない
あなたの名前はきれいでいいわね
その音をたよりに あたしは帰り着けます

動画制作は今年に入ってから話を進めていたが、この曲自体はもっと前の、2017年頃に完成していた。

当時の私は、1年間のロシア留学を控えていて、渡航前の最後に作った曲だったと記憶している。

私は大学3年生の2月から留学したので、1年後の帰国と同時に、サークルや学部の友人のほとんどが卒業してしまうと分かっていた。

留学先には知り合いはいなかったし、日本人も指で数えられるほどしかいないような街だった。

そんな状況だったので、「一人で行く、一人で生きる」という感覚が強かった。

送別会を開いてもらったりして、それはすごくありがたく、温かい気持ちになったけれど、段々と、それまで仲間と認識していた人々の輪郭が、ぼうっとしてくるようだった。

歌い始めてから時間が経ち、環境や考え方も変わっていって、解釈が異なる部分もあるけれども、この歌を歌うたびに当時の思い出や、フライトの感覚が蘇るような気がする。

企画から制作まで担ってくれたやまざき氏には、色々と制約のある中で、無理を言ってしまったが、元々曲が持っていた世界観で包み込みながら、私の頭の中にはなかった新たな表現も加えて、見事に映像化してくださった。私一人にここまでの熱意と時間と労力と割いてもらえたことに、じんわりと感謝している。

曲自体の完成と、動画の完成で、二度の完成を迎えた「名前のない鳥」だが、まだまだ育てられるように思う。歌い続けていくことで。


留学先では大変な経験もしたが、良い友人に出会えたことも書き添えておく。


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