見出し画像

生きてる言語

昔読んだ本で「舟を編む」という作品がある。昔からずっと使われている言葉や新しく人が生み出した言葉、たくさんの時間をかけてそれらの言葉を吟味してまとめて、その時代の辞書を完成させていくというような話。自分が普段何気なく選択している言葉ひとつひとつに重みが感じられて、新しい視点をもつことができた作品だった。

さて、私は今、第二言語の習得に勤しんでいるわけだが、よく考えてみると英語の勉強を始めてからかれこれ20年以上は経っている。その間に実際英語環境に身を置いたことは旅行を除いてはほぼなくて、教科書や参考書、映画が主な教材だった。これが”きれいな英語”だということを私は当時考えたことすらなかった。

”きれいな英語”というのは教科書通りの英語。NZに来てから半年間語学学校に通ったが、当然先生たちが話す言葉は”きれいな英語”。私のような留学生たちが話す英語も当然”きれいな英語”。知らない単語があっても調べれば辞書に載っているし、使い方も辞書の説明通りである。

そして現在、私の日常で使われているのは”きれいな英語”ではない。汚い(時もたまにあるけど)というわけではなくて、教科書でみたことのない表現がでてくるのだ。そう、これはいわゆるスラング。

同僚と仲良くなる前は、たとえ言っている意味がよくわからなくても聞くことができず、文脈から何となくの雰囲気をつかむので精一杯だった。しかし、最近では何それ!どういう意味?とがっつり聞くようにしている。

ちなみにこれまで教えてもらったのは、【Muck around=ふざけて動き回る様や目的のない行動、ぶらぶらして時間をつぶす】【Mucked up=ミスする、台無しにする】【Smoko=仕事の合間の休憩(タバコ休憩Smokingからきてる?)】などなど。ちなみに”Muck"を辞書で調べると”牛馬ふん、ごみ、汚物、くだらないもの、混乱状態” なかなかパンチのきいた単語である・・笑

面白いことに、このような質問を投げかけると彼らは自分で言った言葉にもかかわらず(。´・ω・)ん?となり、少し考えてから意味を教えてくれる。よく使うにもかかわらず、いざ他の言葉で表現するとなると難しいそうだ。

最近みんなで話していて確かにな、と感じたのは英語は他の言語に比べて日常的に使う言葉のバリエーションが少なく、割と少ない語彙でも日常は成り立ってしまう。細かなニュアンスをそれぞれ表現する言葉があまりなく、同じ単語に広域の意味合いが込められていて便利なのだが風情は出にくい(あくまで個人的な意見だが)。

なにかの記事で”木漏れ日”という言葉を直訳する単語は英語には存在しないということを知った。葉っぱの隙間からキラキラと日の光が見える美しい景色に名前を付けた昔の日本人、繊細で素敵。

世界中の言語それぞれに、その国の言葉でしか表現できない言葉があって、それはその国の歴史や文化によって育まれてきたものなのだろうな。言語って奥深くて面白い。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?