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虫の知らせ「別離」

あれは大学2年生。

夏休みに友達二人と3泊4日のタイ旅行を計画した。
この旅行は女子だけで行こうと話していたため、当時付き合っていた彼には「留守番ね」と伝えた。
同棲していたわけではないが、住んでいたアパートが同じで部屋をよく行き来していたので、もう同棲しているような感覚だった。

出発の日、アパートから最寄り駅まで彼と一緒に行き、彼は駅で見送ってくれた。
タイに着いてからは、タイの文化や食べ物やタイ独特の空気が面白くて、正直、日本にいる彼のことをほとんど思い出さず、メールで連絡も入れなかった。

4日目、帰りの飛行機の中、突然胸騒ぎがした。

「なんだろうこの強烈な不安。
以前自転車がなくなった時の胸騒ぎに似ているような…」

少し呼吸が荒くなったので、胸元を強くさすり、深呼吸を繰り返した。
呼吸は幾分か落ち着いたものの、不安はなかなか消えなかった。
その時、ようやく彼の存在を思い出した。

「そういえば旅行中彼に連絡してなかったな。
あ、そういえば帰りの飛行機の時間言ってなかったっけ…
成田に着いたら連絡しよう。」

成田に着いた時、彼に電話して日本に着いた事とアパート近くの駅に着く時間を伝え、迎えに来て欲しいとお願いした。
彼は前日に足をくじいたらしく、あまり外に出たくないと言っていたが、お願いだから駅まで来てほしいと懇願した。
少しでも早く彼の顔を見て不安を取り除きたかったからだ。
彼はしぶしぶ承知してくれた。

アパート近くの駅に着いて改札を出た所で彼と会った。
アパートに着くまで彼とどんな話をしたか、もう覚えていないが、彼と会ったことでさらに不安になったのを覚えている。

その数日後、彼から別れを告げられた。
別れの理由は覚えていないが、飛行機の中での胸騒ぎと彼と会って強くなった不安で、もう私達は終わりなんだろうと心構えができていた。

当時、彼には迷惑をたくさんかけていたように思う。
竹内涼真のような、背が高く優しい目をした聡明な彼で、なんで私と付き合っているのか自分でも不思議に思うほど、私にはもったいない彼氏だった。
彼の優しさに甘えすぎていたんだろうと後悔した。

自転車盗難の時の胸騒ぎは、何かをしなければならないという強い衝動だったけど、この時の胸騒ぎは胸が締め付けられるような強い不安だった。

「虫の知らせは、いちいち正確だなぁ」

布団の中で泣きながら、つぶやいたのを覚えている。

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会社で働くウェブクリエイターのエンディングノート的創作活動の跡です。過去に書いたものも含め公開していきます。 日常をとりまく様々な事についていろいろと書いてます。
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