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きみはかわいい


そう、誰が言おうとも絶対に。


かわいいの定義をよく考える。誰にでも言っていいけれど、言われて嬉しくないと思う人もいる。「かわいい」より「かっこいい」の方がいい、そういう気持ちを少しだけ滲ませて、ありがとうと彼らは言う。

おおよそ「かっこいい」を前提に所属している人達が多い。それがわたしの好きな人達がいるジャニーズ事務所だ。昨今色々な問題に満ち溢れて、揺れていたりもするけれど、今日はその話をするつもりはない。そこにいる彼らに罪はないからだ。

自分より4つ年上のアイドルを好きになった。
もう朧気な記憶になりつつあるが、入口は「かっこいい」より「かわいい」だった。正確に言うと「かっこいい」のに「かわいい」だけれど。

今でこそ「かわいい」も武器にもしている彼だけど、まだまだ若い頃は「かわいい」よりも「かっこいい」が先行していたのかな、と今更ながら思う。かわいい顔の下に、恐ろしいほどバッキバキの筋肉質な体がついていたのだ。今もその面影はあるけれど、昔ほどのキレた体ではない。(でも好き)

直接的に強くしなやかでかっこいい、を目指すなら、たしかに筋トレをするのは効果的だし、それが結果に結び付けば結び付くほど、目に見えて「かわいい」は減るのかもしれない。でも、わたしはずっと「かわいい」を感じていた。
仕草、笑顔、話し方…どれをとってもかわいかったのだ、優しさとか誠実さとか、アイドルとしての在り方そういうのも全て含めて「かわいい」のだ。
そして、その「かわいい」の影から時折覗く「かっこいい」や「色気」に当てられてぺしゃんこになるのだった。だから、基本的には「かわいい」ままでいてほしい。たまにでいいのだ、かっこいいのは知っているから。

増田貴久さん、わたしの生涯を賭して、応援をすることになる原点のアイドルであり、わたしの心の中にある番地を、最初にほとんど渡してしまった人である。

2人目の彼は、2つ年下で、いつも笑っていた。
いつもくしゃくしゃに笑って、走って、叫んで、それでいて実はシャイだった。メンバーのことが大好きで、ふざけてじゃれて駆け回っているのを見たとき、わたしの中の「かわいい」メーターが振り切れて時速160kmくらいを叩き出した。焦った。爆裂な「かわいい」はスピード違反で切符を切られるのだ。

その頃にはジャニオタとしてある程度、というかまあまあの年月が過ぎていた。応援している1人目の「かわいい」彼がいるのに、まだわたしは「かわいい」を増やすのかとひどく葛藤した。自意識拗らせヲタクはこういう時に非常に、爆裂に面倒くさいなと思う。

結果的に、悩んだ末に(行動力だけはバカみたいにあるので)彼を現場で見た。
茶の間で見ているのとはすこし違うけれど、明るくて誰よりも先頭を切って走り出す、まさに「赤」を背負った彼に、残り少ない心の番地をすこしだけあげようとしたとき、彼が大きく手を振った。別に私にむけて手を振った訳ではないのだけれど、その時ぐらりと揺れてしまった。何もなかった場所に新しい番地ができていく。

2人目の自担、重岡大毅さんはその番地をそのまま、くしゃっと笑って颯爽と持ち去った。
あっという間の出来事である。もしかしたら、こういうのを初恋泥棒と言えばいいのかもしれない。


もう心に番地はない、誰にあげられる「かわいい」も残っていないと、思った。
これ以上を渡したらきっと先の2人に向けられる感情が緩く、細くなってしまうかもしれない。それは怖い。
勝手に愛でることはいくらでもできるけれど、実際に応援するなら話は別だ。バカみたいな行動力があるゆえに、遠征も多ステも大好きだ。それに応援するなら、その人に1分1秒でも長くアイドルでいたいと思ってもらえるようにヲタクをしたい。
でも、それには限界がある。1人のか細い、しがないOLが実現するには難しいこともたくさんある。
まあ…色々犠牲にしてなんとかしてたけど。主に将来とか、日々の生活とか。

10も年下の男の子は、直感的にかわいい子だな、と思った。でも本格的に「かわいい」になっても、わたしにはあげられるものがもうない。自分の中でどうにかまだ「かわいい」ではないに振り分けた。

これまでの彼らと違う点は「かわいい」を既に己の武器にして勝負を掛けているところにあると思っていた。
メンバーを好いていて、そして好かれていて、その空気感の中で成長して、自分の中の「かわいい」も何もかもを総動員させて自分の魅せ方を掴み取ろうとしているのを感じた時、やっぱり、特大の「かわいい」はやってきてしまった。

この子がどうなるのか見てみたいと思った。この子の「かわいい」はどこまで行くのか知りたくなったのだ。あわよくば、それをこっそり眺めてみたいと思った。

気付いた時には足をとられ、ぷかぷかと浅瀬で浮いていた。浅瀬でふよふよと浮かびながら、本当にこの子でいいのか、自分はこの子を応援できる人間なのかに悩んだ。
面倒くさいヲタクはずっと悩んでいる。

悩みに悩んで、自分の限界と、自分が抱いてしまった「かわいい」をそっと天秤にかけてみたとき、「かわいい」が凄まじい勢いで傾いた。
「かわいい」の積載量オーバーである。
積載量オーバーだって罪である。重さにやられ、気付いた時には浅瀬から沖に流されていった。

もう余地はない、ヲタクをするのに限界があると思っていたわたしの前で、井上瑞稀さんが静かに「かわいい」を広げた。若いのに凄まじい職人技をお持ちであった。積載量はオーバーしてるけど。

番地がないなら、広げればいいや。
「かわいい」も、あげられるならたくさん渡した方がいい。君たち3人は、本当は「かっこいい」方が欲しいかもしれないけれど、わたしの中で「かわいい」は最上位だから許してほしい。


ただ「かわいい」と思ったから、わたしはきみのことを応援したい。見返りも、ファンサも全然いらない。
ただ、アイドルをしてくれる時間が長ければいいなと思う。

きみたちは、とてもかわいい。
人を幸せにするかわいさを、間違いなく持っている。

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