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定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第三十七回〉

 2月になった。韓国に来てから4ヶ月が経とうとしている。覚えていないことの方が多くて、早かったのか長かったのかなどと感傷に浸ることもできない。それにいまだに韓国になれず、毎分毎秒帰りたいと思っている。


一昨日は図書館にて作業した。今日と昨日はアルバイトなので自宅作業。働きすぎているかもしれない。


一昨日やったことは、

・原本テキストデータの印刷
・李箱全集書籍印刷作業
・資料調査
・読んだ論文の要点をノートにまとめる
・資料整理作業


 印刷はぼーっと突っ立っててもできるが、資料調査は大変だった。10時から7時間くらいぶっ通しで資料調査を行い、その結果李箱のテキストが掲載された雑誌や新聞の所在が、三分の二ほど明らかになり、また不明であることが明らかになった。進歩と言っていい。かもしれない。

 「かもしれない」と歯切れが悪いのは、しかし実際に資料を確認してみないと「原本」か「影印版」か「縮刷版か」何もわからないからだ。検索データベースにおいても「影印版」と表示されていないものがある(しかし原本とも書かれていない)うえ、図書資料を管理している人によって「原文」という言葉の意味の捉え方が異なるため、「明らかになる」の感触が薄いのだ。司書さんの中でも文字通り「初出の印刷物=原文」とする人もいれば、「デジタルではない資料=原文」と呼称する人もおり、人の言葉やデジタル情報では資料の形態がわからない。図書館でもよく「調べていただいたらわかる通り…」と言われるが、いつもこれには納得できない。人の言葉も情報も真実ではなく、参考に値する足掛かりにすぎないと感じる。


 しかし李箱が金起林に宛てて書いた書簡のうち5作が見つけられない。あると聞いたはずの雑誌にまったく掲載されていない上、「정본 이상문학 전집 1」(김주현주해,소명출판,2009)も底本は初出テキストではなく初出以降に出版された全集だという。これはローラー作戦で探していくしかなさそうだ。そしてただただ、見つけられないテキストがいくつか。どうすればいいんだろうか。


 結局全ての資料の所在を調べきれぬまま。図書館からの帰り道でも、探し方の反省をして帰る。もちろん今までもコツコツと資料調査はしてきたが、複写郵送サービスという技を習得したの調査できることが増えたのだ。


 帰宅。風呂。ご飯。その後は今日印刷した資料の整理作業。


 資料整理が行われていないと、重複して印刷してしまったり、作業進捗が正確に把握できない。資料整理をするということは、作業スピードを上げることに直結する。帰宅して、論文の要点まとめワークを続行しようと思ったが、資料整理に思いの外時間がかかり、疲れてしまったので倒れるように眠った。


 大学図書館に入れなくても、資料複写の申請をインターネットから行い、複写郵送サービスという手段がある。資料収集は大体①国立中央図書館での調査、②ソウル大学での調査、③大学図書館への複写郵送依頼、④日本国内図書館での資料調査、⑤資料調査を第三者に依頼する

 この5パターンに絞られてきた。絞られてきただけで、⑥⑦⑧と考える必要はまだまだあるだろう。


 今は自分の卒業論文の韓国語翻訳を行なっている。かつて日本語で書いたという自分の論文を読んでいるうちに、間違いを2箇所発見。耳引きちぎって死んでやろうかと思った。明日もバイト。ちなみにまたバイト辞める。求職への焦りより研究への焦りが強い。早く図書館に行って作業しなくてはいけない。しなくてはいけない理由なんてないけど、そうしなくてはいけないといつも切迫した気持ちでいる。

 次は李箱テキストの日本での出版状況について書きたいけど、かなり面倒くさそう。書けたら書きたい。そう思い始めてもう2ヶ月くらい経ったのだけれど。


二〇二四、二月、八日、執筆、更新。





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