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定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—

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『定本版 李箱全集』を日本で出版すべく、その重要過程である定本作業を記録するマガジン。
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2024年3月の記事一覧

定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第四十二回〉

定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第四十二回〉

 ここ二週間毎週、金先生とzoomで連絡を取っている。新学期が始まるのでお忙しいだろうに有難い。

 私は最近何をしているだろう。
 基本的には資料収集、資料整理、文献学や書誌学に関する勉強、フォント作成作業をしているだろうか。一日が終わるのが驚くほど早い。

〈資料収集〉

 資料収集の方針を大きく変えた。

 原本にこだわっていたが、原本を所蔵している大学は一般の入館すら厳しく、学生に賄賂を渡

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定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第四十一回〉

定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第四十一回〉

 今日は前からやってみようと思っていたことを実行する。
 それは、日本で流通している二つの李箱全集の情報整理をすることだ。

 現在日本でアクセスしやすい李箱のテキスト全集はいくつあるだろう。
 最も代表的な「李箱作品集成」(崔真碩訳、作品社、2006年)は絶版になり、値段高騰が著しい。
 最近出版された「翼 李箱作品集」(斎藤真理子訳、光文社古典新訳文庫、2023年)は記憶に新しい。訳者である斉

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定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第四十回〉

定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第四十回〉

 私は、計画内容をマインドマップにまとめたデジタル資料、完成させたテキストデータ、自分の考えを整理する用のノートを持っていき、その闘いに挑んだ。
 しかし、結局どれも使うことがなかった。

 先生と二人で着席。窓からソウル大に走る車がみえる。この国は学校構内でもそれなりのスピードを出して走行している。全員教習所からやり直した方がいい。先生とわたし、どちらから話し始めたか、何から話し始めたかよく覚え

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定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第三十九回〉

定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第三十九回〉

 そして私が韓国に来た理由の中に、最上級で重要なものがもう一つある。    それは「定本 李箱文学全集」を註解した教授に会うことだ。

 先生にメールを送信したのは2024年1月31日午前9時半ごろのことだった。一月中にはメールを送信しようと心に決めていた。本当は30日に送ろうと思っていたが、勇気が出ないことを言い訳したくなくて、他の作業をわざと遅くして、メールが送れないようにした。

 31日は

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