まあやのモノマネに見るセンスと技術
前おき
以前に書いたみなみちゃんのやつが結構読まれたので、また個人を取り上げた内容で書いてみることにした。
(しかし、アレが多く読まれた理由は果たして、書いた内容が良かったからなのか、みなみちゃんが可愛かったからなのかは、どうにもわかりえないところである。)
今回選んだのは、天才・まあや。
まあやのモノマネはスゴイ。というのは、今さら言うまでもない話だとは思うけども、じゃあ一体何がどうすごいんだ、ということで考えたものをつらつらと書いていく。
まず言いたいのは、おバカキャラだから、無軌道で、ぶっ飛んでて、予想のつかないことをする、とかそういうことでは全くない!ということである。
むしろ彼女の芸は、先人達によって確立されてきたセオリーに則り、その上で彼女自身のセンスと技術を発揮し、得るべくした笑いを得ているのだ。
※全てのネタを本人のみのアイディアで作られていない可能性もあるが、今回それは考慮しない。
モノマネのセオリー
まず、モノマネのセオリーとして必要と思われる要素は、大きく分けて次の3つ。
●再現
●誇張
●着眼点
ひとつずつ、ざっくり解説していく。
●再現
これは言わずもがな「似ているかどうか」ということ。モノマネの基本である。声、動き、顔、その他もろもろが、モノマネ元に似ていれば似ているほど、本物に近ければ近いほど、モノマネとしての完成度が高いものとなる。
またちょっと例外的に「ある場面・シーン(の動きやセリフ)を完璧に再現する」というパターンもある。
●誇張
続いて誇張。忠実に再現するだけに留まらず、(度を超して)表現することで、取り上げたその部分に注目させ「ここが特徴的だよね」と提示する機能を持つ。あるいは、単に再現することと別個に”笑い”の要素を取り入れる手法でもある。
誇張することが元ネタである本人へのイジりになることもあり、よりバラエティ要素の高いポイントと言える。
●着眼点
これはネタ自体ではなく、題材選びの段階で効いてくるポイント。単にマニアックなことをすべき、ということではなく、ありきたりではないモノマネをしたほうが高い評価が得られる、ということである。
定番でない題材をモノマネすることで、「誰もやっていなかったことをやった」と見ることができ、それが芸の独自性に繋がる。また「意外なところに注目した」ということが、「その人のセンスの現れ」と判断することができ、芸自体よりも題材をもって実力を表現することができる。
この”着眼点”にひたすらフォーカスを絞ると、本家(?)の『細かすぎて伝わらないモノマネ選手権』になり、そこまで行くと選んだ題材そのものがニッチ過ぎて面白くなってしまう。
以上の3つがモノマネの三大要素と言っておそらく問題ないと思われる。
もちろん、一つ一つ独立しているわけではなく、むしろ常に相関しているものである。その上でどうバランスを取ってくかによって、そのモノマネの性質や完成度が変わってくる。
さて、そんな三大要素、既に随分長いこと書いてしまったが、ここからまあやのモノマネについて取り上げていくために必要不可欠だった。つまり、彼女のモノマネは、これらのそれぞれの要素のバランスを見ていくことで、その完成度がわかるのだ。
中田花奈のダンス
これは『乃木坂工事中』の第23回、「白石麻衣のおねえさんといっしょ」が放送された回にて行われた、(確認できた限りでは)初めてテレビで披露された まあやのメンバーモノマネ。
この時点でかなりモノマネの完成度は高く、裏では随分とやっていたんだろうなあ、と見て取れる。
「中田のダンスはこうです」というプレゼンに近い内容でもあるので、上記の三大要素で言うと「再現」の比重が高いが、わかりやすくするため、腰のうねり、うーっていう表情、マイクのニギニギをやや誇張して大袈裟に表現している。
また、ダンスのモノマネは、再現するにあたり本人にもダンスの能力が要される。それを難なくこなしているあたり、彼女は地味にスゴイことをしている。
若月佑美の「ボールを打った金属音」
こちらも同じ回にて披露された若月のモノマネ。モノマネというより、「若月はこういう事をします」というトークで実際に演じているような感じだが、まあやの細かいところに注目しがちな部分が現れた「着眼点」の比重が高いモノマネと言える。
加えてスゴイところは、後日の違う回にて「打ったボールを見ている」から「打った金属音を聞いてる」という変化について発言していたこと。
元ネタの変化を取り込んで、最新の状態に更新する形で再現性を維持し、相対的にモノマネの完成度を高めているのだ。まさしくモノマネというものは生き物である。
あまり知られていない川後陽菜のギャルっぽさ
これは第39・40回『乃木坂46 内輪ウケものまね大賞』にて披露された川後のモノマネ。口調や言動のギャルっぽさから、会話の途中でいきなり自撮りし始めるワンシーンを再現していた。たぶん実際にやっていたのを見て取り入れたかったんだろう。
このモノマネで、川後の「バイピチ」が(おそらく)初出し、浸透していった。メンバーのモノマネをすることは、「メンバーの意外な一面」をプレゼン(あるいは暴露)する役割も果たし、このモノマネはその好例である。
鼻で歌っているように見える西野七瀬
同じく『内輪ウケものまね大賞』で披露されたモノマネ。このネタは、これまでに比べて大分誇張に寄ってはいるが、まだ原型は留めている。
これは、楽曲を歌唱している姿のモノマネということで、見る側にもモノマネ元のイメージが存在していることで、「確かにこうやってる」と納得させつつ、ジワジワと誇張して壊している。
「鼻で歌っているように見える」と”まるで”的なニュアンスで一度言っておきながらガッツリ鼻で歌う、「(タイトルで)振ってからの裏切り」という古き良きお笑いのセオリーも組み込まれていてグッド。
和田アキ子『あの鐘を鳴らすのはあなた』
これは46時間TV内『チーム対抗!乃木坂46ガチ歌合戦!』で披露されたアッコさんのモノマネ(?)。モノマネと言うべきか微妙なところではあるが、わかりやすい誇張芸なのでピックアップする。
「声量のある歌手の方がマイクを口元から離す」という一点をひたすらに誇張し、最終的には床に立てちゃうもんだから笑うほかない。もはやリップシンク対決とは名ばかりである。
格好も含め、あそこまで振り切った芸を”ちゃんと”やれるのは まあやしかいない、と改めて思わされたネタ。
和田に話しかけてくる相楽伊織
これはAbemaTVで放送された特番『もう1つの乃木坂アンダースーパーベスト』で披露された伊織のモノマネ。
これはもう激似。
誇張もなければ、意外な一面を取り上げているわけでもない、シンプルな完全再現を行っているモノマネである。
実は、声(声色)そのものは似てはいない。でも、あの鼻から抜ける声の出し方、たまに裏返る喋り方、手元の動き、そういった声色以外のポイントを忠実に再現していることで、そっくりなモノマネに仕上げている。
声帯模写だけがモノマネではない、ということを示したお手本のような芸である。また同時に、まあやのモノマネが単なる誇張芸ではないことをも示している。
脚の長さを強調したいがために腰の位置がおかしくなってしまった新内眞衣
これは記憶に新しい『第2回 乃木坂46 内輪ウケものまね大賞』で披露された新内さんのモノマネ。この回で披露されたモノマネは、どれもかなり誇張の割合が高まっており、もはやモノマネの域を超えつつある気がしないでもない。なんせタイトルが長い。
このネタは、誇張したモノマネはもちろん、ネタとしてのパッケージングが丁寧で素晴らしい。
新内さんの足を強調する感じを再現するのであれば、丈の短いTシャツやハイウェストのズボンなどの服装のみで完結している。要はその状態で現れれば出オチとして完成する。
そこで、あらかじめ みり愛を用意しておき、自身は袖からフラミンゴみたいな動きで現れて出オチに味付けしつつ一笑い、ひと通り足を強調したのち、みり愛に声を掛けさせ一言喋って終わりのポイント(オチ)を明確にした。
こういう企画における「出てきて披露」という形態に、前回以上に合わせてきたと言える。こういった対応力も、ネタの完成度に一役買っているのだ。
画面の端っこでも全力でアイドルを全うする伊藤理々杏
こちらのネタも大胆な誇張がなされており、ある意味再現をした上でぶっ壊している。
実際の理々杏は「他のメンバーを抜いているカメラに見切れた時も全力=カメラに映った時だけ”アイドル”を出しているわけじゃない」という素晴らしい姿勢である。
それを面白がった まあやにより、「見切れる」が「ぐいぐいフレームインしてくる」に発展され、いなかったのにヌッと現れるという元ネタに無かったオモシロ要素が付与された。
そうして現れた 理々杏(まあや)が、前列役のメンバーを凌駕するバキバキの笑顔や重厚なウインクを飛ばしてくるものだから、どうしようもなく面白く映ってしまうわけである。
(前半割愛)煙が出てしまうほど人差し指を擦ってしまう白石麻衣
このネタは、誇張をするがための用意が周到過ぎるという一ネタ。
まずネタのチョイス自体が良い。指先という見逃しがちな末端を取り上げつつ、まいやんの指がモジモジしていることは確かに何となく見たことがあり納得できる、という「細かさ」の塩梅が絶妙である。
で、その指先をモノマネするにあたり、「煙が出てしまうほど」という”してしまいそう”みたいな言い方のタイトルで振っておきながら、「煙を本当に出す」裏切りをする、というシンプルながら無駄のないフリオチにまとまっている。
そのフリオチを完成させるべく、『ようかいけむり』(懐かしい!)をあらかじめ仕込んでおき、かつ分かりやすくするためにわざわざ黒背景まで用意するなど、「指から煙を出す」ことを丹念に作り上げている。
シャドーメイクが強すぎてシリーズ
●鼻のシャドーメイクが強すぎてもはや歌舞伎にしか見えない高山一実
●頬のシャドーメイクが強すぎてもはや鉄拳にしか見えない新内眞衣
これは振り切ってて素晴らしい。「たまにメイクが濃い」という、モノマネのネタとして注目するにはやや弱いところを、「濃い」という一点だけ残して別物に発展させているという誇張芸である。
メイク無しの状態からどんどん塗っていって濃くなる、という内容ではなく、後ろ向きから振り返って完成されているものを見せるという「めくってドン」のインパクトに全てが投じられている。そのインパクトのせいで、初見の時に鏡に貼ってあるカンペに気が付かなかったくらい。
1回目のメイクは、鼻のシャドーをガッツリ縫っているのはもちろん、目の下も塗ったり目尻を上げたりと、完全に歌舞伎の隈取に寄せており、原型を留める気はさらさらないことがわかる。
2回目に至っては、誇張+天丼のW王道技術。さらに、同じパターンを踏襲するだけでなく、振り返った時に、「前のがそのまま残ってる」というちょっとした裏切りも添えている。
また誇張メイクだけでなく、呼ばれた時の「なにぃ~?」「ん~?」という、かずみん、新内さんそれぞれのとぼけた感じの返事も地味に再現している、痒い所にも手が届いた作品。
まとめ
以上、淡々と説明しただけになってしまったような気がしないでもないが、とりあえずここまでとする。
この内容を書き終えて思ったことは、「ここ数年で、まあやがとても大人っぽくなったなあ」ということだったり。モノマネ関係ねえ。
明日飲むコーヒーを少し良いやつにしたい。良かったら↓。