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『ジャンピングジョーカーフラッシュ』/乃木坂46の歌詞について考える

30thシングル収録曲の、いや、乃木坂46楽曲の中でも屈指のハイテンションポップロックチューンであり、そして珠玉のナキウタである今回の4期生楽曲『ジャンピングジョーカーフラッシュ』。曲を聴いてもMVを観てもとにかく楽しくなって、その矢先に涙が止まらなくなる。

その理由わけは、この曲の歌詞のそこかしこに散りばめられているが、とにかく楽しくて眩しくて美しくて尊くて切なくて泣きそうになる(そして堪えるのはムリ)。

そんな想いを、ともあれ書くと言うのが今回の趣旨です。

そもそも『ジャンピングジョーカーフラッシュ』というタイトルが、The Rolling Stonesの楽曲『Jumpin' Jack Flash』からの引用であることは、語るまでもない。

イントロの「ダッダー!ダダダーダダダー!ダダダ」というリフは一度は聴いたことがあるだろう。

原曲の歌詞内でもタイトル通りの〈Jumpin' Jack Flash〉というフレーズが現れるが、言葉そのものの意味(訳)に重きが置かれていない、"合言葉"として用いられているというのがよく支持されている説だ。

例えば検索したら以下のようなページが出てくる。あくまで個人の方が読み解きしたものではあるが、要するに〈Jumpin' Jack Flash〉とは「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」くらいのもんだっつーことが書かれている。

そして乃木坂46は『ジャンピングジョーカーフラッシュ』もまた同様らしい。

というかその前に、Stonesのそれを意識的に踏襲ないし引用する形で用いていることを歌詞内で匂わせている。気付かれることを前提にした目配せ、といったところだろう。

誰かが昔歌ったんだってね

流行った歌にもあったんだろう
語呂がよけりゃいいんだ

ジャンジャンジャンピングジョーカーフラッシュ

『ジャンピングジョーカーフラッシュ』における〈ジャンピングジョーカーフラッシュ〉という言葉が明確な意味を持つものでないということを、『Jumpin' Jack Flash』の存在を通して随時示しているのである。

といったように、このワード自体がさしたる意味合いを持つワケではないが、じゃあこの言葉が〈俺たち〉にとって一体どんな意味を持つのか。

その答えは、結局のところ最後の最後の歌詞に記されているが、ゆえに泣けるのである。

それをまんべんなく語っているからこそ、『ジャンピングジョーカーフラッシュ』という楽曲はエモい。MVがエモい。これらの中で、そのことを余さず体現している4期生達の姿がまたエモい。エモみが深みざわなのだ。

『ジャンピングジョーカーフラッシュ』における〈ジャンピングジョーカーフラッシュ〉という言葉は、歌詞内でどのように用いられているか。以下に例を載せよう。

ジャンピングジョーカーフラッシュでGoGo×2
ジャンピングジョーカーフラッシュで最高×2

ジャンピングジョーカーフラッシュでカモン×2
ジャンピングジョーカーフラッシュで最強×2

ジャンジャンジャンピングジョーカーフラッシュ

一見意味が解らないが、いやしかし泣きそうになる歌詞である。

この楽曲が描いているもの、先に書いてしまえば、それは〈青春〉だ。2番サビでもこの言葉そのものが現れる。

もっと言えば、〈大人にはなるな〉〈反抗し続けろよ〉など『大人たちには指示されない』『サイレントマジョリティー』などを彷彿とさせるフレーズがまま見られるが、これらがそのまま「反抗」を歌っていたのに対し、『ジャンピングジョーカーフラッシュ』が答えとして提示したのが〈青春〉なのである。

偉くなった?
何したいの?
そんなシケたツラ見せないでくれ

俺たちの世界で意味あるものって何だろう?

何が一番大切なのかって

ああ青春の日々よ

どこをとっても感じ取れてしまう「青春感」だが、それを支える要素として、どこまでいっても「今の間だけ」であるという刹那性がまた示されている。

馬鹿になれ
今だけで良い

輝けるのはいつまでか
今日までって言われたって後悔しないように

〈後悔しないように〉が良い…! MVで見られたあの眩しい笑顔は、他でもない彼女たちが"後悔しない"ためのものだ。

そんな彼女たち4期生を繋ぐのが、〈ジャンピングジョーカーフラッシュ〉という合言葉なのである。

言葉としての意味は、さして重要ではない。「彼女たちを繋ぐ合言葉」としてこの言葉が存在している、そのことが何より重要なのだ。

俺たちの合言葉だよ
目と目合えば叫びたくなるんだ

理屈だけ並べたって愛を感じやしない
腕を振り上げるだけで熱く伝わるものがある

一緒に騒ぐだけで掛け替えのない時になる

何が一番大切なのかって

何が一番思い出なのかって

ジャンジャンジャンピングジョーカーフラッシュ

〈ジャンピングジョーカーフラッシュ〉という言葉が歌詞で言う〈俺たち〉にとって大切なものであることは、ひいては『ジャンピングジョーカーフラッシュ』という楽曲が4期生たちにとっても同じように大切なものであることをも示す。

それがそれがビシバシと伝わってくるから良い。上にも書いた通り、あの笑顔や楽しそうな雰囲気は、単なる映像上の演技や表現ではないのだ。

思えば4期生楽曲は、『4番目の光』を除き、「君と僕」的な恋愛ソングばかりだった。『キスの手裏剣』から『Out of the blue』まではピュアな恋と出会いを、『猫舌カモミールティー』はどこか切ない心模様を描いている。

という流れがありながら、初期11人が加入してから間もなく4年、後輩である5期生も新たに加入したところでの、新たに生まれた楽曲で描かれているのが〈俺たち〉なのだ! このことがもう、何よりエモいじゃないか!

ある意味これこそが『ジャンピングジョーカーフラッシュ』の真価とも言える。

ライブでも体感した曲の良さや楽しさもあるが、その何よりの前提に4期生たちの存在があるのだ。

4期生たちが大人になりつつあり、グループの過渡期であるこのタイミングで、彼女たちに贈られたものとして、このような楽曲が生まれたことが何より素敵だ。

さて、ここからは『ジャンピングジョーカーフラッシュ』が泣き歌であるゆえんを紐解こう。

それはコード進行(及びメロディ)にある。という話だ。

特にサビが該当する。変な話、聴けばあの絶妙な切なさは感じ取れるところだろうが、それは様々な楽曲で繰り返し用いられていた「そういうやつ」なのである。

俺たちの世界で意味あるものって何だろう?
理屈だけ並べたって愛を感じやしない

まず取り上げたいのが「C-E-Am」の進行。特に太字にした箇所で用いられている。2つ目のEがとても効いていて、思わず涙を誘うようなグッとくるメロディを導くコードである。

ちなみに『ジャンピングジョーカーフラッシュ』の実際のそれとはキーが違うが、Cから始まった方が(自分が)わかりやすいのでそのように書いた。

以下で例として、同じ進行を組み込まれている曲を、該当部を太字にしつついくつか挙げよう。これらも多分キーが違ったりする。

まずはThe Beatles『All you need is love』のサビ。

All you need is love
All you need is love
All you need is love, love
Love is all you need

続いてSuperfly『輝く月のように』。こちらは歌い出し。

どれくらい感謝したって足りないから
あなたを全心で見つめ返す
太陽の光を浴びて輝く
夜空の月がそうしてるように

そして『ジャンピングジョーカーフラッシュ』サビの後半は、メロディは基本同じながらコード進行が異なる。

こちらもまた聴き手をグッとさせるタイプの、より広く使われている王道の進行「F-G-Em-Am」だ。

腕を振り上げるだけで熱く伝わるものがある
何が一番大切なのかって
ジャンジャンジャンピングジョーカーフラッシュ

ちなみにこちらも上と同じく、キーが云々Fから云々。

引き続き例を挙げよう。Every Little Thing『fragile』のサビ。

出逢えたことから全ては始まった
傷つけあう日もあるけれども
いっしょにいたいとそう思えることが
まだ知らない明日へとつながっていくよ

続いて槇原敬之『もう恋なんてしない』。こちらもサビ。

さよならと言った君の気持ちはわからないけど
いつもよりながめがいい左に少しとまどってるよ
もし君に1つだけ強がりを言えるのなら
もう恋なんてしないなんて
言わないよ絶対

今回例として挙げた曲の情報など、どちらも以下のサイトから参考にした。自分の耳で拾う自信がなかったためである。

これまでの乃木坂楽曲でもよく使われている(はず)なので、探してみるのもまた一興。

ってなところで。

冒頭からの元気良いテンションからの、思わず泣けてしまうメロディのサビでグッと掴んでくる、ニクい構成が巧みに用意されているということだ。

逆に言えば、そのような切なさ成分を発するコード進行≒メロディが、このような楽しくハイテンションな楽曲のサビに意識的に配置されている。

すっかり多彩なJ-POPにおいては、ある意味王道の展開ともいえるが、4期生たちの楽しそうな踊る姿、歌声を、そして歌詞を鑑みれば、いやはやバチっとハマっている。

うっとりしてしまうくらいの彼女たちの「青春感」とその刹那性。(この楽曲が示すべき)煌びやかさと脆さを両立させる要素として、サビで訪れるこのコード進行≒メロディがあるという訳だ。

同時に発表された3期生楽曲『僕が手を叩く方へ』が『Sing Out!』を彷彿とさせるものであったことと並べて、どちらも「現在の乃木坂46で、4期生/3期生がどうあるべきか」とを楽曲を通して示しているようにも思える。

今後、『I see…』に勝るとも劣らないライブアンセムになることが約束されているようなこの楽曲。

色んなライブでたくさん観たいもんですなあ!と声を上げて〆とします。

以上。

明日飲むコーヒーを少し良いやつにしたい。良かったら↓。