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ノスタルジックにときめく

花鳥風月という言葉がある。

歳を重ねるにつれ、花鳥風月の順で趣が分かるようになると話す人もいるけれど、どうだろう?


ちなみに私は、"花鳥"をすっとばして"風月"が大好きだ。

晴れて綺麗に月が見える夜は、ベランダに出て月を眺めたりもする。

イヤホンから流れるお気に入りの音楽を聴きながら、頭の中を空っぽにしていく作業が心地良い。

ただ、私は目がすこぶる悪いので、月が"白くて丸っぽいもの"にしか見えないのが少し残念なところ。

"汚いものが見えなくて丁度いいぞ!"

"視力がなんだ!"

と思っていた私だが、この時ばかりは己の目の悪さにうんざりする。


月を眺めようとメガネをかけてベランダへ出る私を見て、

「ガチやな」

と揶揄うように声をかけてきた姉に

「ガチやよ」

とドヤ顔で返したのは、確か5月辺りのことだったと思う。

メガネをかけると、月の模様や輪郭、光の広がり具合から雲の流れのスピードまで鮮明に見える。

裸眼で見る時と比べれば、美しさが段違いだ。


綺麗な月を見ていると、なんだか懐かしいような、それでいて心が弾むような気持ちになる。

なんて綺麗な世界なんだ!

と、叫び出したい衝動に駆られるその瞬間は、なかなか良いものだ。

夏目漱石が

" I LOVE YOU "

「月が綺麗ですね」

と訳したのは有名な話だが、なんとも素敵な訳だと思う。

ずいぶん遠回しな言葉なので、訳する前の言葉を知っているからこそ輝くフレーズには違いないけれど。


もし本当に

「月が綺麗ですね」

と言われたとして、愛の告白だと気付ける人は、なかなかいないと思う。

ただ、綺麗なものを共有しようという言葉をかけることで、その時の言葉に出来ない感情まで共有したいと告白しているように聞こえるから、私は結構好きだ。


空に浮かぶ月と、その時の雰囲気を心の底から一緒に楽しめるような人が、わたしにも居ればなぁ、とたまに思う。

スマホと二人っきりには慣れたもんだけど。


#中秋の名月

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